2026年3月13日
イベント報告: COI-NEXT Annual Symposium 2026
2026年3月9日、OIST COI-NEXT拠点は「COI-NEXT Annual Symposium 2026: Sustaining Innovation Beyond the Lab」を開催しました。本シンポジウムには、研究者、企業関係者、地域のステークホルダーが集い、科学研究をどのように社会的意義のある持続的なインパクトへとつなげていくかについて議論が行われました。
開会挨拶では、OIST COI-NEXTプログラムのプロジェクトリーダーである北野 宏明教授が、COI-NEXTを従来の学術研究の枠組みを超えたイノベーション・エコシステムとして紹介しました。COI-NEXTは固定的な研究プログラムではなく、新たなアイデアが生まれ、成長し、社会へと展開していく「アイデアのゆりかご」として機能しています。また、生物学やデータサイエンス、環境科学など多様な分野とステークホルダーが連携し、複雑な社会課題に取り組むことの重要性を強調するとともに、基礎研究と社会実装をつなぐためには、協働と共創、そして強固なプログラム運営が不可欠であると述べました。
基調講演では、広島大学COI-NEXTプログラムのプロジェクトリーダーである作野 裕司教授が、海洋リモートセンシングとデジタルツイン技術を活用した海洋観測ハブの構築に向けた取り組みを紹介しました。講演では、科学技術の可能性を実社会のニーズと結び付けるためには、産業界や地域コミュニティとの継続的な対話と共同設計が不可欠であることが強調されました。
続く講演では、社会課題の解決に向けた多様なアプローチが紹介されました。COI-NEXTの研究者らは、eDNA解析とイメージング技術を組み合わせた海洋生態系モニタリング、沖縄の漁業コミュニティとのステークホルダー・エンゲージメント、そして科学的知見を効果的な政策へとつなげるための取り組みについて発表しました。本拠点が支援するスタートアップ向けプログラムOIST Innovation Acceleratorに参加するTLALOC BLUEからは、バイオ廃棄物の活用や循環型経済(サーキュラーエコノミー)に関する取り組みも紹介され、技術開発とともに文化的価値観や社会的背景への理解が重要であることが強調されました。
また、気候変動に伴う台風リスクの変化や、科学と政策をつなぐ取り組み、さらには家族や地域コミュニティを巻き込みながら解決策を共に設計・実践する参加型研究についても紹介されました。
基調講演では、株式会社エンパブリック代表取締役の広石 拓司氏が、社会的インパクトの高い取り組みを持続可能にするための新たなモデルについて紹介しました。社会的に重要なプロジェクトの多くは、従来の市場原理に基づくビジネスモデルだけでは成り立たないことを指摘し、事業化だけでなく、価値の創出や参加の促進、既存手法の効率化によっても持続可能性を実現できると述べました。また、人・資源・機会をつなぐことで、初期の資金支援終了後も長期的なインパクトを生み出す仕組みを構築できることを示しました。
閉会挨拶では、OIST COI-NEXTプログラムの拠点設置責任者であるギル・グラノット マイヤー首席副学長(イノベーション及びアウトリーチ担当)が、持続的な社会的インパクトの実現には、科学的卓越性だけでなく、それを社会実装へとつなげる仕組みが必要であると強調しました。そのためには、研究者、地域社会、行政、企業との信頼関係を築くとともに、研究成果の実装と普及を支える体制を整えることが重要であると述べました。
シンポジウムを通じて、4つの重要なメッセージが共有されました。
- 社会的インパクトを生み出すためには、研究と社会のニーズを結びつけることが不可欠である
- 協働と共創が、イノベーションと研究の社会的意義を高める
- 持続可能な社会実装には、技術だけでなく社会・文化・経済的な視点が重要である
- 長期的なインパクトの実現には、強固なパートナーシップと支援体制が欠かせない
本シンポジウムは、COI-NEXTが協働、イノベーション、そして多様な主体との共創を通じて、科学的発見を社会的インパクトへとつなげる研究を推進していく姿勢を改めて示す機会となりました。