OISTにおけるダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)
はじめに
私たちは、さまざまな人生経験やアイデンティティ、多様な視点を大切に育てようとする姿勢を持った環境こそが、研究や創造的な探究、イノベーション、そして教育における卓越性の土台になると信じています。誰もが安心して自分らしくいられる雰囲気の中でこそ、人は本来の力を発揮することができ、立場や考え方の違いを超えて協力し合える土壌が育ちます。それが、新たな発見や前向きな変化を生み出す力になると私たちは考えます。〔注1〕
世界には、さまざまなかたちの構造的な不平等が存在します。OISTのコミュニティにおいても、全員にとって同じ現実があるわけではありません。だからこそ、私たちは、自分たちの手の届く範囲から、OISTに関わるすべての人にとってインクルーシブな体験が育まれるよう取り組んでいきたい考えています。国際的な環境にあるOISTだからこそ、インクルーシブな大学のあり方を模索しながら、日本における学術・科学コミュニティの一員としても、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの実践に貢献していきたいと願っています。
ビジョン
私たちが目指すOISTは:
· 構造的な障壁に向き合い、すべての人が専門性や知的な力をのびのびと発揮できる場所
· 一人ひとりが尊重され、受け入れられていると実感でき、自分自身も他の誰かのためにインクルージョンをつくり出せる場所
· 意思決定や日々の探究の中に、公平さと思いやり、そして心身の健やかさ(ウェルビーイング)が自然に根づいている場所
· 信頼、対話、透明性を大切にするコミュニティが、私たちの共有する価値を力強く支えている場所
ミッション
私たちのミッションは、OISTのコミュニティにいるすべての人が、それぞれの立場からリーダーシップを発揮し、OISTという場をより人間らしさがあり、あたたかく、学びに満ちた場所として育てていけるようにサポートすることです。そのために、継続的な学び、成長、そして互いに責任を持ち合う文化を育みながら、OISTの方針、日々の取り組み、資源の配分に公正であることを大切にする考え方(Equity)をしっかりと根づかせていきます。
私たちが大切にすること:
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· 好奇心をもって前に進むこと
· 謙虚な姿勢で学び続けること
· 間違いやすれ違いから学び合い、もう一度つながることを大切にするコミュニティを育てること〔注2〕
· 責任を引き受け、互いに支え合える文化を育てること
〔注1〕
Edmondson, A., & Roloff, K. "Overcoming Barriers to Collaboration: Psychological Safety and Learning in Diverse Teams." In Team Effectiveness in Complex Organizations: Cross-disciplinary Perspectives and Approaches, edited by E. Salas, G. G. Goodwin, and C. S. Burke. Organizational Frontiers Series. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates, 2008.*未訳
訳者注)この文献では、多様な背景を持つメンバーからなるチームにおいて、心理的安全性が学習と創造的な協働を促進する上で不可欠であると論じられています。個々の違いを尊重しながら安心して意見を交わせる環境が、新しい発見(discovery)を生み出すための土壌となることが強調されています。
〔注2〕
「癒しやつながり、帰属といった言葉を、ためらうことなく使えるようになったときに、修復的なコミュニティ(restorative community)は生まれます。現在の状況が生み出されていることに、自分も何らかの形で関わっているのだと認めること――それこそが、未来を方向づける軸となる、勇気ある関与の行為です。修復的なコミュニティづくりの本質は、経済的な豊かさや政治的な議論、あるいはリーダーシップの力にあるのではありません。それは、市民一人ひとりが、自らの関わりを認め、謙虚であることを選び、説明責任を引き受け、新しい未来を築くために、誠実な約束を交わすことのできる自分自身の力を信じる姿勢にあります。」 Block, P. (2018). Community: The Structure of Belonging (p. 48). Berrett-Koehler Publishers. *未訳