新規遺伝子制御因子を用いた線維芽細胞の 心筋細胞へのリプログラミング

取り組んでいる課題

心不全は、世界中で何百万人もの人々が罹患している、最も一般的かつ生命を 脅かす慢性疾患の一つです。幹細胞を用いた治療法は、心不全に対する新たな 治療手段として期待されており、ドナー心臓の不足や免疫抑制治療に伴う合併症 といった心臓移植の主要な課題を克服できる可能性があります。 しかし、幹細胞由来の心筋細胞を臨床応用するには、大きな課題が 2 つありま す。1 つ目は、得られる心筋細胞がしばしば十分な健康状態や成熟度を示さない こと、2 つ目は、分化過程が通常遅く、数週間を要することです。私たちの目標 は、ヒト幹細胞から成熟した心筋細胞を、世界で最も効率的かつ迅速に作製でき る方法を開発することです。

(左図OIST 同定因子を用いた新規細胞プログラミングによる心筋再 構築戦略)

POC project (86-Taoufiq): Cardiac remuscularization strategy

私たちの解決策

私たちは、核内の超高精度プロテオミクス(UD proteomics)を用いて、新規の 心筋特異的な転写調節因子(TR)の組み合わせを同定しました。これらをレン チウイルスを使ってヒト iPS 細胞(hiPSC)に導入すると、心筋への分化と誘導心 筋細胞(iCM)の成熟が著しく促進されました。この手法を「転写調節因子マッ チング(TRM)」と呼んでおり、これにより心筋細胞特異的なタンパク質の発現 を、20 日以内に500%以上増加させることが可能となりました。 2024 年(POC Seed Phase 期間)には、私たちはヒト多能性幹細胞(iPSC、 ESC、MSC、AFSC、VSEL、ADSC)におけるこれらの TRの使用に関して特許を出 願しました。 本プロジェクトでは、特により安全とされるセンダイウイルス(SeV)ベクターを用い て、ヒト線維芽細胞を用いた分化転換のデータを取得し、知財面での競争力を強 化することを目指しています。

(I右図: 市販の幹細胞分化キットとOIST新規因子を用いて生成した心 筋細胞におけるCa2+変動の比較。 培養 20 日目において、OIST プロトコルで分化させた心筋細胞 は組織化された構造を示し、約 1 Hz で同期した拍動を呈する 一方、市販キットによる細胞は無秩序で非同期的な収縮を示 している)

POC project (86-Taoufiq): Calcium transients in cardiomyocytes