- ポリシーカテゴリ:人事
- 承認権限者:理事長/学長
- 指定役職員:副学長(人事担当)
- 担当部署:人事マネジメント セクション
- 関連文書:PRP 1.3.2 互いに尊重しあう職場の実現に向けた基本方針、22. 利益相反防止及び安全保障輸出管理、23. 不正行為の調査・認定及び内部通報者保護、38. 懲戒、42. 大学オンブズパーソン、PRP39章 正式な手続きに関するハンドブック、職員の懲戒等に関する規程
- 施行日:2025年10月17日
- 次回見直し期限:適宜
1. 目的
本学は、組織のあらゆるレベルにおいて信頼、尊重、相互支援に基づく良好な職場環境の醸成に努めます。本学は、いかなる形態のハラスメント、いじめ、性的暴力も容認しません。これらの行為に及んだ者に対しては、「互いに尊重しあう職場の実現に向けた基本方針」(PRP第1.3.2章)及び「職員の懲戒等に関する規程」に基づき厳正に対処します。
本章は、安全で、インクルーシブかつ互いに尊重しあう職場環境を確保するための包括的な枠組みを定めるものであり、懸念事項、対人関係上の対立、紛争に公正かつ円滑に対処し、ハラスメント及びいじめを防止することを目的としています。
本章は、対立の早期解決、代替的な紛争解決手段、必要に応じた正式な手続きの活用を重視しています。多くの問題は非公式な方法で解決されることが期待されており、非公式な解決が困難な場合に正式な手続きが取られます。
多様性に富み国際的な学術的職場環境においては、懸念事項や対立、紛争が生じることは自然なことです。これらは、可能な限り率直に話し合われ、解決されるべきです。
2. 適用範囲
本ポリシーは、業務に関連する懸念事項、対人関係上の対立、紛争、ハラスメント及びいじめに適用されます。本学の職員及び学生並びに本学のポリシーに服するすべての個人に対し、その雇用又は関与期間中が適用されます。
ただし、以下の事項には適用されません:
- 学術的、科学的又は研究上の不正行為や不遵守(PRP第23章「不正行為の調査・認定及び内部通報者保護」にて規定)
- 利益相反に関する問題(PRP第22章「利益相反防止及び安全保障輸出管理」にて規定)
研究科は、学生間の懸念事項、紛争、対人関係上の対立、ハラスメント及びいじめに関して、追加の規則を定めることができます。職員と学生の間で発生する問題については、本章が適用されます。これらの問題においては、副学長(人事担当)が研究科長や教員担当学監などの関係者と協議を行います。
3. 指定役職員
副学長(人事担当)は、本ポリシーの実施、管理及び執行を統括します。副学長(人事担当)は特定の業務を委任することができますが、最終的な責任は副学長(人事担当)が負います。
ただし、副学長(人事担当)は、以下の決定を委任することはできません:
- 調査委員会の設置の必要性に関する判断
- 苦情申立ての結果に関する決定
4. 定義
ハラスメント
人種、性別、性的指向、宗教、障がい、国籍又は地位などの保護対象とされる特性に基づいて、特定の個人に向けられた好ましくない言動やコミュニケーション。これらの行為が、個人の雇用、学術活動又は大学活動への参加を妨げ、威圧的、敵対的又は不快な環境を生み出すことが明らかである場合、ハラスメントと見なされます。些細に見える行為であっても、繰り返されることでハラスメントに該当する場合があります。
ハラスメントの種類(例示)
1. セクシュアル・ハラスメント
個人の尊厳を損なう、又は敵対的な環境を生み出す性的な性質の好ましくない言動。これには、望まない接触、性的な発言、不適切なコメント、性的な便宜の要求など身体的、言語的、非言語的な行為が含まれます。
2. 性的暴力
権限や、同意しない旨の意思表示が困難な状況を利用して、性的行為を強要又は強制する行為。
3. パワー・ハラスメント
個人を威圧し、又は傷つけるために権限を濫用(学術的環境における場合を含む)すること。多くの場合、反復的、威圧的又は不合理な言動によって特徴づけられます。パワーハラスメントは、管理職や監督者との関係に限定されず、同僚間において、又は部下による、必須知識や経験の不当な支配などの様々な手段を通じて行われる場合もあります。公正に行われる正当な管理・監督行為は、パワー・ハラスメントには該当しません。
4. アカデミック・ハラスメント
教員、職員又は学生が、学術・研究の場において、権力や権限を濫用し、個人の学業成績、研究の進捗、教育経験に悪影響を及ぼす行為。不公平な評価、学術機会からの排除、必要な支援の拒否、不当な批判などが含まれます。特にその行為が、反復的又は深刻な場合、敵対的、威圧的な学術環境を生じさせる可能性があります。パワー・ハラスメントと重なる場合もありますが、アカデミック・ハラスメントは、特に教育・研究活動に悪影響を及ぼす行為が対象です。公正に行われる正当な管理・監督上の行為は、アカデミック・ハラスメントには該当しません。
5. 妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメント
妊娠、出産、育児、介護に関連する不適切な言動により、職場や学習環境に悪影響を及ぼす行為。
いじめ
個人の人格又は職業上の立場を傷つけるような否定的な言動を行い、継続的に権力を濫用すること。威圧、排除、誹謗などが含まれます。いじめは、管理職や監督者との関係に限定されず、上司、同僚、部下など、いずれの方向からも生じ得ます。建設的なフィードバックや適切に行われた正当な管理上の行為は、いじめには該当しません。
5. 直接的な対話と早期解決
本学の職員及び学生は、可能な限り早期に、関係者との直接的な対話を通じて問題の解決を図ることが奨励されています。対立の根底には誤解があることが多く、率直で協力的な対話によって解決できる場合があります。必要に応じて、中立的な第三者が対話を支援することも可能です。
直接的な対話が困難である、又は効果的でない場合、職員及び学生は、自身の上司又はラインマネージャーの支援を求めるものとします。その上司やラインマネージャーが懸念の対象である場合は、その次の管理職レベルに相談してください。
このような場合、管理職や監督者は、適切な場合は直接的な対話を支援・奨励し、また、代替的な紛争解決手段や正式な手続きに関する情報提供と指導を行うことが求められます。
大学の運営部門は、管理職及び監督者に対して必要な研修が提供されるよう責任を負います。
加えて、本学は、学内コミュニティ全体に対しても研修機会を提供することにより、オープンなコミュニケーションと紛争の早期解決の文化を推進します。
ハラスメントやいじめの可能性がある場合、当事者は可能であれば、加害者に対してその行為が容認できない旨を伝えるべきです。
行為が継続する場合や、加害者に直接伝えることが困難な場合は、上司、ラインマネージャー(又はそのラインマネージャーが懸念の対象である場合はその次の管理職レベル)、又は人事ディビジョンに報告してください。
6. 代替的な紛争解決
代替的な紛争解決(ADR)は、中立的な第三者の支援を受けて、対立を協力的に解決するための自主的で非公式かつ秘密保持された手続きです。ADRは正式な手続きを代替するものではありませんが、補完的な選択肢として、調停などの手法を提供します。
OISTオンブズオフィス(PRP第42章参照)は、ADRサービスを提供しており、助言や非公式な紛争解決の支援を行います。オンブズオフィスが実施する調停では、当事者は、いつでも手続きから離脱する選択肢を持ちつつ、解決に向けて協力して取り組むことができます。
7. 正式な苦情申立て手続き
7.1 一般事項
職員及び学生は、直接的な対話や非公式な解決が不調に終わった場合、又は問題の性質上正式な対応が必要と判断される場合には、正式な苦情申立てを行うことができます。正式な苦情は、個人のプライバシーを尊重しつつ、公正、中立的、かつ迅速に取り扱われなければなりません。
なお、非公式な手続きを経ていない場合であっても、職員及び学生はいつでも正式な苦情を申し立てる事が出来ます。
本学は、本章に基づき誠実に行動する申立人や関係者に対する報復行為を一切容認しません。
一方で、「職員の懲戒等に関する規程」に基づき、本学は、悪意をもって虚偽の申立てを行った申立人や関係者に対しては、懲戒等の措置が取られることがあります。
職員、学生及び本学のポリシーに拘束されるすべての者は、公平性を確保し、必要な情報を提供するため、副学長(人事担当)又は調査委員会と協力することが求められます。
正式な苦情申立ては、「PRP第39章正式な手続きに関するハンドブック」に従って行う必要があります。
7.2 苦情の提出
正式な苦情は、指定されたメールアドレス宛に、所定の様式で、関連する詳細情報及び証拠を添えて書面で提出してください。提出方法の詳細はハンドブックに記載されています。公平な手続きを確保するため、苦情は速やかに提出するものとします。
すべての関係者に対する透明性、説明責任及び公正性を確保するため、本章では匿名の苦情は受け付けません。ただし、個人間の対立に関連しない広範な懸念事項については、本学が提供する匿名の通報手段の利用が可能です。
7.3 苦情の審査及び評価
人事マネジメントセクションは、提出された苦情がハンドブックに定められた要件を満たしているかを確認する責任を負います。苦情を受領した際には、人事マネジメントセクションは、受領確認を行うか、苦情の処理に必要な情報の不足や追加対応について申立人に通知します。その場合、申立人は、7.2項に従って追加情報を添えて苦情を再提出することができ、修正された苦情は、人事マネジメントセクションによって改めて審査されます。
副学長(人事担当)は、苦情の内容を審査して適切な対応方針を決定し、決定を行う前に学内の関係エグゼクティブと協議を行います。副学長(人事担当)による審査には以下が含まれます:
- 苦情の主たる問題が本章の適用範囲に該当するかどうかの判断
- 適切な場合には、非公式な対話や調停などの代替的な紛争解決手段の提案
- 教員担当学監との協議の上、調査委員会の設置が必要か、又は副学長(人事担当)による直接対応が可能かの判断
- 安全な職場環境を確保するための一時的措置の必要性の検討
本学のエグゼクティブに関する苦情については、副学長(人事担当)は、当該事案を学長に付託します。事務局長又は学長が関与している場合は、副学長(人事担当)は、当該事案を理事会の議長に付託し、理事会の議長は、外部調査委員会の設置を含む適切な対応方針を決定します。
本章及びハンドブックの規定は、中立性を確保し利害関係を回避するため、必要な修正を加えて適用されます。こうした事案の調査は、学内の混乱を最小限に抑え、組織の健全性維持する観点から、迅速に進められる場合があります。
7.4 苦情の解決又は副学長(人事担当)による決定
調査委員会の設置が不要な苦情の場合:
副学長(人事担当)は、決定を下す前に、(1)追加情報を収集し、(2) 関係当事者と面談を行い、(3) 関係する学内エグゼクティブと協議を行うことがあります。
副学長(人事担当)は、苦情の申立てが著しく遅延していた場合(例:その遅延により、調査を効果的に実施することが困難となった場合など)、その点を考慮することがあります。
調査委員会の設置が必要な苦情の場合:
副学長(人事担当)は、調査委員会の最終報告書を受領後、その内容を精査し、結論を受け入れるかどうかを判断します。その上で、必要な対応(懲戒手続き等)を実施します。
申立人には、手続きの結論及びその他関連情報が通知されます。被申立人には、調査結果及び、懲戒処分又は人事上の措置が課された場合にはその内容が通知されます。すべての通知は、公平性、機密性に配慮し、適用される個人情報保護規則に従って、速やかに行われます。
7.5 調査委員会
副学長(人事担当)が調査委員会の設置が必要と判断した場合は、関連する証拠及び事実の収集を支援させるため、調査委員会を設置します。調査委員会の職務と責任、委員長の役割及び運営手続き等については、ハンドブックに記載されています。
副学長(人事担当)は、苦情の性質やその他の要素(ジェンダーバランス、言語能力、専門的スキル、職位、潜在的又は想定される利益相反など)を考慮し、調査委員会の構成及び委員長を決定します。
人事ディビジョンは、調査委員会の委員が本章及び「PRP第39章正式な手続きに関するハンドブック」の内容を熟知し、自らの職務と責任を理解していることを確認します。
調査委員会は、関係当事者及び証人への聞き取り、証拠の収集を行い、副学長(人事担当)に対して調査報告書を提出します。
8. 不服申立て
申立人、被申立人、その他副学長(人事担当)(又は特定の状況下では、事務局長又は理事会の議長)による決定に直接的な影響を受ける者は、不服申立てを行うことができます。不服申立ては、手続き上の基本的な欠陥の有無を審査することに限定されます。
不服申立ての手続きでは、新たな申し立てや証拠の提出は認められません。ただし、当該証拠が当初の苦情に直接関連し、かつ以前に提出することが合理的に不可能であった場合を除きます。
不服申立ては、ハンドブックに従い、書面で事務局長に提出してください。不服申立ては、事務局長又は理事会の議長(該当する場合)によって審査・決定されます。不服申立てに対する事務局長(又は指名を受けた者)の決定は、学長の同意をもって最終決定となります。
9. 報告
副学長(人事担当)は、毎会計年度の開始時に、学長及び理事会の議長に年次報告書を提出します。年次報告書は、前会計年度の本章に基づく活動を概括し、少なくとも以下の情報を含まれなければなりません:
- 提出された苦情の件数
- 苦情の処理方法(調査委員会の設置、又は副学長(人事担当)による直接対応)
- 終結した苦情の件数
- 未解決の苦情の件数
- 苦情の処理に要した平均期間
- その他関連情報
10. 見直し及び改正
本章は、本学のポリシーに従い、定期的に見直し及び改正が行われる場合があります。「PRP第39章正式な手続きに関するハンドブック」は、人事マネジメントセクションによって見直され、学長の承認を得るものとします。