iHAT:鉄触媒とH₂を用いた水素移動反応

取り組んでいる課題

水素原子は、生命や現代社会に不可欠なさまざまな化合物に含まれています。水(H₂O)のような単純な分子から、医薬品やタンパク質のような複雑な分子まで、いずれもその構造に水素原子を含んでいます。産業界では、これらの水素原子の多くは、安価で広く利用可能な水素分子(H₂)に由来しています。しかし、H₂から水素原子を生成する現在の手法では、パラジウムやロジウムなどの貴金属触媒が必要です(図1)。これらの貴金属は高価であるうえ、精製に多くのエネルギーを必要とし、さらにその供給は地政学的な影響を受けやすいという課題があります。

POC project (91 - Takebayashi) Figure 1
図1 既存の手法

私たちの解決策

この課題を解決するため、私たちは、安価で資源量が豊富であり、世界各地で入手可能な鉄を触媒として利用します。H₂から水素原子を制御して生成・移動させることで、H₂O₂(過酸化水素)から医薬品まで、さまざまな分子の合成を可能にする触媒システムを開発しました(図2)。貴金属を鉄に置き換えることで、水素を利用するさまざまな化学製造分野において、持続可能性とコスト面での優位性を高めるとともに、より安定したサプライチェーンの実現を目指します。

POC Project (91 - Takebayashi) Figure 2
図2 本プロジェクトのの手法