リボスイッチを用いたCAR-T細胞の化学的制御技術の開発
取り組んでいる課題
私たちは、血液腫瘍および固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法における、2つの重要な課題の解決を目指しています。
CAR-T細胞製造における課題:CAR-T細胞の製造工程では、CARが恒常的に発現することで、体外での拡大培養中にT細胞が過度に活性化され、早期に機能が低下(疲弊)してしまいます。さらに、T細胞同士が互いを攻撃するフラトリサイドによって細胞収率が低下し、高額な製造バッチの失敗につながります。自家CAR-T細胞では、製造バッチが1回失敗するごとに約40万米ドルの損失が発生し、採血から患者への投与までの期間も約1か月延長されます。
サイトカインアーマリングに伴う課題:CAR-T細胞にさまざまなサイトカインを分泌させるサイトカインアーマリングは、CAR-T細胞の持続性や抗腫瘍活性を高める有望な技術です。一方で、サイトカインを恒常的に発現させることで、サイトカイン放出症候群(CRS)をはじめとする重篤な副作用を引き起こすリスクが高まる可能性があります。
図1. CARによる認識を介して、腫瘍特異的抗原を提示する腫瘍細胞を攻撃するCAR-T細胞の模式図。CAR-T細胞はさらにサイトカインを分泌することもできる。
私たちの解決策
私たちは、合成リボスイッチを用いて、低分子化合物によってCAR-T細胞内の遺伝子発現を制御する技術の開発を目指しています。CAR-T細胞関連遺伝子の発現を必要なタイミングで制御することで、遺伝子の恒常的な発現による製造工程での課題や、臨床における副作用の軽減が期待されます。
合成リボスイッチは、低分子化合物の添加によって哺乳類細胞内の遺伝子発現をオンまたはオフに切り替えることができる遺伝子スイッチです。私たちの技術は、研究グループが新たに開発した低分子化合物-RNAアプタマー対(ペア)(図2)を基盤としており、ヒト細胞において優れた遺伝子発現制御性能を示しています。
図2. 遺伝子発現を制御するリボスイッチの構築に用いられる低分子化合物(ASP2905)とRNAアプタマー(AC17-4)