NTT and OIST Expand Their Research Focus from Typhoons to Linear Rainbands, Launching Water Vapor Observations in the East China Sea

Capturing moisture inflow into Kyushu to improve forecast accuracy for linear rainbands

NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と沖縄科学技術大学院大学(沖縄県国頭郡恩納村、臨時学長兼理事長:ダニエル・ザイフマン、以下「OIST」)は、2025年5月に気象庁気象研究所(茨城県つくば市、以下「気象研究所」)と共同研究を締結しております。  NTT、OISTは、気象研究所と連携し、沖縄列島周辺海域において自律型海上観測機器やブイを用い、複数の台風に接近して大気海洋観測を実施しました。気圧や風速、海水温等の変化を確認できるデータを取得し、台風強度予測や海面水温データの精度向上の可能性を確認しました。2026年度は台風観測に加え、観測エリアを東シナ海へ拡大し、線状降水帯の発生・発達過程の解明に取り組みます。海の上で水蒸気の変化を捉えることで、線状降水帯の早期予測につなげます。

1.背景

2025年5月、極端気象の発生・発達過程における海洋の役割を明らかにし、線状降水帯や台風に伴う豪雨等の顕著現象の実態把握、メカニズム解明をするため、海洋における台風観測技術・実績を有するNTTとOISTは、極端気象の知見を有する気象研究所と共同研究契約を締結しました※1。現状の気象衛星によるリモートセンシングだけでは捉えることが難しい台風直下や線状降水帯の発生・発達に関わる海上気象や海洋表層のデータを直接収集し、大気海洋機構の解明に向けた観測研究をスタートしました。本共同研究は2年目を迎え※2、出水期※3における台風域の海上気象や海洋表層のデータ収集に向け、自律航行可能な無人海上観測器やブイを活用した現場観測をさらに拡大します。

2.2025年度の成果

2025年6~9月、沖縄列島周辺海域において、大気海洋観測を実施しました。自律型海上観測機器により台風第7号および第8号に接近して観測、ブイにより台風第12号および第23号のデータを取得しました。  海表面での観測データから、台風接近に伴う気圧の急速な低下、風速の上昇、風向の変化等を確認しました(図3)。特に、台風の発達や衰退に影響を与える、台風通過前後の海水温の変化を捉えました。  さらに、気象研究所では共同研究で取得した観測データを活用し、予測実験の環境整備を進め、予備的な実験を開始しました。台風の強度を予測する実験では、海洋観測データ等を活用した海洋予測システムによる海面水温や海洋内部に蓄えられた熱量の予測値を用いた実験を行い、台風通過に伴う海面水温低下等の影響を反映することで、台風の最大風速の予測精度が向上する事例を確認しました。  このように、観測データの活用により、海面水温データの精度向上や、台風強度予測の高度化につながる可能性を確認しました。今後も、海面を介した大気と海洋の相互作用の解明に向けて、観測データを活用した研究を進めていきます。

3.取り組みの内容

線状降水帯とは、発達した雨雲が帯状に連なり、同じ場所に長時間強い雨を降らせる現象です。線状降水帯を引き起こす大雨には、海から流れ込む大量の水蒸気が関係しています。特に九州で発生する線状降水帯では、東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込むことが知られています。そこで2026年度は、観測範囲を東シナ海まで広げ、海上の水蒸気を直接観測します。海上では水蒸気の詳細な観測データが少なく、線状降水帯の予測精度向上に向けた課題の一つとなっています。今回の観測は、こうしたデータ不足を補う新たな取り組みとして期待されています。そこで、2025年度の成果を踏まえ、2026年度は以下に取り組みます。 今回新たに、東シナ海で線状降水帯観測を行い、九州エリアへ流入する水蒸気量を解析し、線状降水帯の発生過程の解明や雨量予測精度の向上に取り組みます(図4)。 沖縄列島周辺海域での台風観測は継続して行い、台風周辺及び進路上の観測データを解析し、台風発生・発達過程の解明を進めることで、台風強度・進路の予測精度向上をめざします(図5)。

4.今後の展開

NTTとOISTは気象研究所との共同研究を通じ、線状降水帯や台風等の極端気象の発生・発達過程の解明に向けて、海域における海上気象や海洋表層のデータを直接収集します。これらのデータを活用し、大気海洋機構の解明に貢献します。また、線状降水帯の発生要因である水蒸気流入の空間構造(高解像分布)を把握することで、線状降水帯や台風の予測精度向上につなげます。これにより、自治体や住民が早めに避難や防災対応を行える社会への貢献が期待されます。 NTTは、気球と省電力無線通信(LPWA: Low Power Wide Area)を組み合わせた低コストな観測技術の実証も進めています(図6)。海の上空で気象データを取得できるようになれば、これまで観測が難しかった海上の大気の様子を詳しく把握できる可能性があります。

OISTでは、気象・海洋・数理科学・データ科学等多様な分野の専門家や研究者の力を結集し、それぞれの専門知識や最先端の研究知見を融合させることで、分野横断的な研究を推進し、海洋と大気の相互作用に関する科学的理解を深めていきます。 将来的には、海洋国家である日本に不可欠な海洋観測プラットフォームの実現をめざし、極端気象予測の精度向上に向けた研究開発を進めます。

【用語解説】

※1 2025年6月3日「NTTとOIST 線状降水帯・台風の発生メカニズム解明に向け気象研究所との共同研究を開始」 https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/06/03/250603a.html
※2 令和8年度 気象研究所報道発表資料 https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R08/080605/080605_press.html当該ページを別ウィンドウで開きます
※3 出水期とは、河川において降雨や融雪などの影響で水位が上昇しやすい時期

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