進化的アプローチで解き明かす微生物による PFAS 分解の可能性

取り組んでいる課題

PFAS(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物)は、多数の炭素 フッ素結合を有する大規模な化学物質群であり、この結合は有機化学で知られる 最も強固な結合の 1 つです。この特徴により、PFAS は産業上の重要な特性を持 ち、消防用泡や電子機器の製造など、広範な産業用途で利用されてきました。 しかし、産業上の大きな利点とは裏腹に、深刻な代償を伴っています。PFAS は肝 臓障害、発がんの可能性、さらには子どもの発達障害など、様々な健康被害との 関連が指摘されています。さらに、その強固な結合のために PFAS はほとんど分解さ れることがなく、環境中に広く残留し、世界的な健康危機を引き起こしています。 例えば、人間が未踏の南極地域でもPFASの痕跡が検出されています。 現在利用可能な物理的・化学的分解方法は、コストが高く大規模な適用が難し いため、代替的で汎用性の高い分解方法の確立が急務となっています。

POC project (78 - Laurino): Figure 1
図1. 世界的なPFAS危機 PFAS は産業界で広く使用されていますが、多くの健康リス クが指摘されています。私たちは、現状の適用可能な分解 方法の欠如を解決するため、生物分解法の開発を目指 しています。

私たちの解決策

これまで、PFAS の分解方法の中で生物学的アプローチが見過ごされてきたことに注 目し、私たちは以下の2つのアプローチで生物学的システムの開発を進めています: 1 つ目は、進化の力を活用するアプローチです。バクテリアをPFAS環境下で継続的 に培養することで、PFAS 耐性の獲得と分解能力の活性化を促します。2 つ目は、 最先端の代謝・遺伝子・タンパク質工学を駆使して、PFAS を分解可能な酵素の 開発を目指します。様々な環境や生物由来の酵素について PFAS 分解能力を検 証し、有望な酵素についてはさらなる改良を進めます。 さらに、微生物によるPFAS分解の基盤となるPFAS輸送の仕組みの解明にも取り 組んでいます。輸送体タンパク質と、炭素-フッ素結合を段階的に増やした分子と の結合を観察することで、重要な結合部位を特定し、微生物による PFAS 分解に おける重要なステップの理解を深めることを目指しています。

POC Project (78 - Laurino): Figure 2
図2. 微生物によるPFASの輸送 輸送タンパク質と炭素–フッ素結合を増加させた分子との 結合を観察し、フッ素が輸送に与える影響を解明します。