ポリフルオロ化合物を効率的に分解する 微生物株の設計
取り組んでいる課題
ポリフルオロアルキル物質(PFAS)は、多数のフッ素原子と、有機化学で知られる中 で最も強固な結合である炭素-フッ素結合に特徴づけられる化学物質群です。これら の結合により、PFAS分子は工業製品として求められる特性を備え、界面活性剤、溶 剤、殺虫剤など、広範な用途で広く使用されています。 残念ながら、PFASの大規模な工業的導入には大きな代償が伴います。これらの強力 な結合によって化学物質は事実上分解されず、結果として世界的なPFAS汚染が生 じています。例えば、南極大陸の人跡未踏の地でも微量のPFASが検出されていま す。さらに、PFASは発がんリスクの増加や子供の発育障害を含む数多くの健康リスク と関連しています。現在の物理的・化学的分解法はコストが高く大規模には適用でき ないため、この世界的な健康危機を解決するためには、新しく汎用性の高い分解方法 が必要です。
図1.フルオロ酢酸デハロゲナーゼは様々な生物に存在 し、低分子からフッ素原子を除去する活性を示す
私たちの解決策
自然界にはフッ素原子を除去できる酵素(フルオロ酢酸デハロゲナーゼ)が存在し、 一部のフッ素化合物からフッ素原子を除去することができるにもかかわらず、適切な分 解方法の探索において生物学的分解という手段は注目されてきませんでした。このプロ ジェクトでは、PFASのフッ素を除去し、その炭素を成長に利用する分解微生物の設計 を目指しています。具体的には、最先端の遺伝子工学と代謝工学的アプローチを駆 使し、前述の酵素を発現させ、基本的なフッ素除去能力を獲得させます。次に、細胞 をPFAS存在下で継続的に成長させることで進化的圧力にさらします。最終的には、 細胞がフッ素原子をより効率的に除去できるような変異が生じます。これらの変異を特 定し、再導入し、また組み合わせることで、微生物のPFAS分解を理解するだけでな く、PFASを分解できる微生物を生み出すことができます。
図2.PFAS生分解微生物を設計するための工学的ア プローチ