2019-03-10

Deep Techをディープに語る -日本でもっと革新的技術を産み育てていくために-

 2019年3月5日(火)に東京神田明神ホールで行われたOISTフォーラム2019のテーマは、「”Deep Tech”が進化させる社会」。200名を超える企業人、起業家、研究者や学生の方々と共に日本におけるディープテックを考え、推進していくきっかけとなるイベントでした。

 まずは来場者同士が自己紹介するアイスブレークにより会場の熱気が高まったところで、左藤章内閣府副大臣、そして日本経済団体連合会審議員会副議長/起業・中堅企業活性化委員長で、アサヒグループホールディングス株式会社代表取締役会長の泉谷直木氏にご挨拶をいただき、OIST首席副学長ロバート・バックマン博士がOISTの紹介をしました。

OISTの研究が、将来の人間生活の様々な面において貢献することを期待する」と締めくくった内閣府副大臣 左藤章氏。

「日本のベンチャー・エコシステムを育むには、大企業は各自のアセットの解放とM&Aで支援していくことが重要。大学には、学内に数多く眠っているディープサイエンス系のシーズを発掘し成長させること、企業が個別に持っている知識やデータの集約基盤としての役割を担うことに期待している」と産業界を代表し意見を述べた泉谷直木氏(日本経済団体連合会審議員会副議長/起業・中堅企業活性化委員長/アサヒグループホールディングス株式会社代表取締役会長)。

OISTの特徴を紹介し、OISTスタートアップ・アクセラレーター・プログラムや新しくできたインキュベーション施設など、OISTが進めるイノベーション・エコシステム構築の取り組みを紹介し、沖縄への注目を促したOIST首席副学長 ロバート・バックマン博士。

 基調講演で登壇したのは、OISTで独自の波力発電機を開発し、世界のエネルギー問題に挑もうとしている新竹積教授。開発プロジェクトを進めて来た中での苦労や、エンジェル投資家との出会い、そして現在モルディブで行なっている発電機の実証実験の状況などを語りました。

OIST量子波光学顕微鏡ユニットを率いる新竹積教授は、本来の専門は加速器物理学。子どもの頃から開発に励み、大学に入って論理を学んだことなどを紹介し、技術開発には、経験に基づく強い判断力、何が必要で何が不要かを見抜きスピードに乗って走るリズム感、そして情熱が必要だと、教授自身が考える技術開発の極意をシェアしました。

 続いて、日本ディープテック協会理事で、Mistletoe株式会社CIO(Chief Investment Officer)の中島徹氏による講演が行われました。ディープテックとはなんなのか、そしてどうしたらディープテックを使ってイノベーションを起こしていけるのかについて、会場の皆がディープテックについて改めて頭の整理ができるようなお話しをいただきました。

ディープテックとは、ディープな科学研究にもとづき、時間がかかり、投資額が巨額で、そして開発したものが当初想定されていなかった用途となり、さらに、世の中を深く変えるようなものである、と定義した中島徹氏。これまでの日本のディープテック分野での成功要因を振り返りつつ、これから日本のディープテックを育てるために、スタートアップと大企業と大学がうまくコラボレーションし、さらに海外の投資家を呼び込んでいくべき、との考えを示しました。中島氏はさらに、OISTのようにグローバルとつながることが大事とし、そのような活動に力を入れていくそうです。(日本ディープテック協会理事/Mistletoe株式会社 Chief Investment Officer)

 パネルディスカッションでは、株式会社ディープコア代表取締役社長の仁木勝雅氏、株式会社ジーンクエスト代表取締役の高橋祥子氏、そして株式会社ユーグレナ取締役副社長で、リアルテックファンドのファウンダーでもある永田暁彦氏が登壇。

 モデレーターを務めた株式会社ニューズピックスChief Content Officer の佐々木紀彦氏が、会場から寄せられた質問を混ぜながら、日本のディープテック起業で見られる課題をどのように解決していくのか、パネリストに問いかけました。

 パネリストからは、ディープテックのシーズを作っている研究者自身による起業を進める上で、異分野間での交流が重要であること、そのために現在の日本に必要なのは、ダブルメジャー(大学で複数の異なる分野を同時に専攻すること)を可能とすることや、副業を容認することではという提案がなされました。

 さらには、ディープテック系の起業の経験者が少ない現在の日本の状況を鑑みて、こうした起業を醸成するために、それぞれの立場の人がすべきことについて次のような具体的な意見が出されました。投資家は先行事例をどんどん作る努力をすること、スタートアップで成功した人は自身が大学で受け取ったものをお返ししたり、同じような成功者と繋がり、後輩の後押しをすること、また大企業は、それぞれの得意領域以外にも目を向けて、新たな視点で異分野の研究を評価すること、そして大学は、もっと海外から優秀な人材を取り入れる必要があること、などです。会場では、今後の日本のディープテックエコシステムを作っていこうという機運が高まりました。

ディープテックエコシステムを社会全体で盛り上げるために、「大学を魅力的にする必要がある。OISTのように、若くて優秀な外国人教員を採用し、文化的多様性を高めるたり、垣根のない学術分野の融合が大切。」と言う仁木勝雅氏。(株式会社ディープコア代表取締役社長)

「こんなにたくさんの多様な分野の方がディープテックに興味をもって集まった。皆さんがディープテックへの理解を深めて、今日からアクションを取っていただければ日本は変わる。」と述べた高橋祥子氏。(株式会社ジーンクエスト代表取締役)

投資家としての立場から、「研究者には、輝け、と伝えたい。視野の広い投資家は、コネクター(組織の垣根を越えてさまざまなキーパーソンを繋げる人)として、世界中の輝く研究を、ファイナンスやマーケティング、契約の得意な人たちと繋げている。」と述べた永田暁彦氏。(株式会社ユーグレナ取締役副社長/リアルテックファンドファウンダー)

「ディープテックがより社会と接続していくために、エンタメ業界などに見習い研究者を魅力的にするために、ディープテックに注目が集まるような映画やドラマを作ればいいのでは」とアイデアを出す佐々木紀彦氏(写真左)。(株式会社ニューズピックスChief Content Officer)

 イベントは最後に交流会に突入。交流会では、ディープテックで世界の変革を促そうとする研究チームや起業家がピッチをするステージが設けられました。イベントに参加した幅広い分野の人々が、それぞれ興味のある話に耳を傾けたり、会場で出会った人々と交流をもつ場面が見られました。企業で研究職をしているという参加者からは、「ディープテックについて興味深い考察を得られたばかりでなく、今日紹介された個別の研究に興味をもった。会社に帰って担当者にこの話をつなぎたい」という声が聞かれました。

OISTからは、微生物を使って排水を処理し、中小企業の課題や世界の水問題への解決策を提案する研究チーム、手のひらサイズのマイクロ流体デバイスで、簡単に血液や尿などの検査ができるよう器具の開発に励んでいる研究チーム、そして、粉状プロテインを固形にする技術を開発し、近く起業を目指しているチームがそれぞれピッチを行いました。

OISTフォーラム2019では、プラスチック製品の使用を極力避けることを目指しました。お皿には、石灰石から作る株式会社TDBのLIMEX製品が使用されました。

(大久保 知美)

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