2014-09-24

山本雅教授が日本癌学会学術賞を受賞

 この度、OISTの山本雅教授が、日本癌学会から「がん研究における優れた功績」を表彰され、吉田富三賞を受賞することに決まりました。がん研究において国内最大規模である同学会は、がん研究の分野ごとに毎年5種類の賞を授与しています。このうち、山本教授に授与されるのは基礎科学分野における賞であり、この賞は日本のがん研究者であった故吉田富三博士(1903-1973年)を記念して設けられました。OIST着任以前、山本教授は、東京大学で研究を行った他、東京大学医科学研究所で4年間所長を務めました。現在は、OISTで細胞シグナルユニットを率いています。授賞式は2014年9月25日~27日に開催の第73回日本癌学会学術総会で行われます。

 この度表彰された業績は、erbBファミリーがん遺伝子がつくる2つのタンパク質、ERBB1とERBB2についての研究です。山本教授は、まずこれらのタンパク質の遺伝子構造を決定し、さらに、これらのタンパク質の遺伝子発現を変化させた場合、腫瘍増殖やがん患者の生存率にどのような影響があるかについて解析しました。

 「当初、モデル生物としてニワトリを用いて研究が進められ、erbB発がん遺伝子が明らかにされました。その後に、関連するタンパク質、ERBB1とERBB2が、ヒトのがん発症にも関わっていることが分かりました」と山本教授は述べ、「そしてその後の多くの研究から、多くの種類のがん発症にERBB1とERBB2タンパク質が関与していることが分かりました。これは当初予想していなかったことです。」と話しています。

 ERBB1の機能は、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor: EGF)と呼ばれる細胞外のシグナル分子を受容することです。この分子は、細胞に対して分裂し増殖するよう合図する役割を持っています。ERBB2は、ERBB1との類似性が高いタンパク質ですが、EFGとは結合せず、受容するシグナル分子は知られていません。ERBB1タンパク質の過剰発現や変異、またERBB2タンパク質の過剰発現が起きると、細胞外からのシグナルを何も受け取っていない状態でも、細胞内の増殖シグナルが開始されます。これが制御不可能な細胞分裂へとつながった場合、最終的にはがんが形成されます。

 山本教授は現在OISTにおいて、受賞理由となった本研究をさらに進めています。この2つの受容体タンパク質ERBB1およびERBB2を含むERBBファミリータンパク質が、個々の細胞内でどのようにシグナルを伝達していくのかについて研究を行っています。ERBBファミリータンパク質の発現異常が原因となって、制御されない細胞分裂、つまり腫瘍増殖が引き起こされるメカニズムの全貌を解明していく上で、遺伝子発現制御複合体と、ERBBファミリータンパク質との相互作用を明らかにすることは重要な一歩となります。山本教授は細胞内がん化シグナルを解明するため、タンパク質受容体の研究から、細胞内でmRNAの分解を引き起こすCCR4-NOTタンパク質複合体へと研究を展開しています。

 最後に、山本教授は「創薬」と「基礎研究」の2つに分岐する道の絵を見せて、「…この年にもなると、進む道を選び極めていくべきだという心境になるものです。道の一つは、医薬品やその他の応用技術の開発研究、もう一つは、さらに知を深めていく道です。私の場合、知を深めていくことを選び、ここではまさにそれを行っています。」と、自身の研究について語りました。

 

(ショーン トゥ)

(ショーン トゥ)

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