リュードベリ原子と光ナノファイバーを用いた単一光子光源

取り組んでいる課題

単一光子光源(SPE)は、個々の光子を精密に生成・制御する必要がある量子センシング、量子通信、量子中継器、光量子回路などを実現するための基盤技術です。しかし、既存の単一光子光源の多くは、光子が確率的に生成されるため効率が低く、生成される光子の識別不能性が低いことや、スペクトル幅が広いことなどが課題となっています。また、極低温環境を必要とする場合も多く、大規模システムへの応用には適していません。

さらに、単一光子光源をより大規模なシステムに組み込むことも重要な課題です。多くの単一光子光源は、小型で拡張性のあるシステムを構築するうえで不可欠な光ファイバーやフォトニックチップに、効率よく結合することができません。そのため、量子技術の実用化に向けて、光を利用したシステムに容易に組み込むことができ、研究室レベルの実証から実用的な量子システムへの展開を可能にするオンデマンド単一光子光源が求められています。

TPF (81 - Vylegzhanin): figure 1. Schematic of the setup.
図1. 単一光子放出実験系の模式図

私たちの解決策

私たちは、冷却原子と光ナノファイバーを用いた、小型でファイバー一体型のオンデマンド単一光子光源を開発しています。この技術では、高純度で互いに区別できない光子を必要なタイミングで生成し、光ナノファイバーに直接かつ効率的に結合させ、さらに一般的な光ファイバーへと導きます。

冷却原子系に光ナノファイバーを組み込むことで、複雑な自由空間光学系の光軸調整が不要となり、操作性とシステムの拡張性が大幅に向上します。この構成は、既存の光ファイバーインフラやフォトニックチップと互換性があり、量子通信ネットワークや光量子回路への容易な集積を可能にします。また、極低温冷却を必要としないため、システムの導入・運用コストやサイズの削減にもつながります。

TPF (81 - Vylegzhanin): figure 2
図2. 光ナノファイバーに隣接する磁気光学トラップ(MOT)内の冷却原子雲