取り組んでいる課題
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、治療用遺伝子を患者の細胞に送達するため の主要な遺伝子治療ベクターとして注目されています。しかし、AAVベクターの製造プロ セスは複雑で高コストであるのが現状です。AAV製造における主な課題の一つは、生 産過程で生じる「空カプシド」、つまり遺伝子(DNA)を含まないウイルス殻の割合が 非常に高いことです(図1)。これらの空カプシドは、コストのかかる精製プロセスを必 要とするだけでなく、投与時の炎症リスクを高めます。そのため、空カプシドを最小限に 抑えながら、遺伝子を含むカプシドの収率を向上させる解決策は、AAV製造業者と患 者の双方にとって大きなメリットとなります。
図1. 完全なカプシドには、治療用遺伝子をコードする一 本鎖DNAが含まれています。一方、空カプシドにはDNA が含まれていません。
私たちの解決策
私たちは、「リボスイッチ」を用いてウイルスタンパク質の発現量とタイミングを制御するこ とにより、空カプシドの問題に取り組みます。リボスイッチとは、低分子化合物を添加す ることで培養細胞内でタンパク質発現を誘導できる遺伝子スイッチです。私たちのリボ スイッチ技術は、グループ内で発見された低分子化合物–RNAアプタマーのペア(図 2)に基づいており、優れたスイッチ特性を示しています。この技術を用いて、AAV生産 時に培養細胞内の複数のウイルス遺伝子の発現を制御することで、空カプシドを最小 限に抑えながら、効率的なベクター生産を実現できると考えています。
図2.遺伝子発現を制御するリボスイッチの構築に用いら れる低分子化合物(ASP2905)とRNAアプタマー (AC17-4)