アルツハイマー病治療薬としての新規低分子ペプチドPHDP5
取り組んでいる課題
アルツハイマー病は、記憶、認知機能、行動に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患であり、現在のところ有効な治療法はありません。既存の薬剤は症状を緩和することはできますが、依然として課題が残されています。その主な理由として、アルツハイマー病の発症原因が完全には解明されていないこと、また血液脳関門(BBB)が薬剤の脳内への移行を制限していることが挙げられます。さらに、晩期発症型アルツハイマー病患者の65%以上が女性であり、時間の経過とともに認知機能の顕著な低下を示すことが分かっています。女性の発症率が高い理由は、性ホルモンの違い、遺伝的要因、炎症反応の差異などが考えられますが、薬剤に対する反応にも性差が存在する可能性があります。そのため、女性を対象とした薬効評価がより重要となっています。
図1. PHDP5は、MT-ダイナミン相互作用を阻害し、エンドサイトーシス障害を顕著に回復させることから、アルツハイマー病の治療薬として期待される
私たちの解決策
私たちは、アルツハイマー病の治療薬候補として、非侵襲的に投与可能な低分子ペプチド(PHDP5)を開発しました。PHDP5は、異常なタウタンパク質に関連するダイナミンと微小管(MT)との相互作用を阻害します。PHDP5は分子量が小さく(3.5kDa)、生後6ヶ月の雄のタウオパチーモデルマウスに経鼻投与すると、BBBを通過して海馬に到達し、認知機能障害を改善することが確認されました。このことは、PHDP5ペプチドが、多くの治療薬が直面するBBB通過の問題を克服したことを示しています。今後の研究計画として、PHDP5の薬効における性差の調査、PHDP5と神経原線維変化との相関関係の解明、PHDP5の最適な投与量の決定に焦点を当てる予定です。
図2. PHDP5の経鼻投与により、タウオパチーモデ ルマウスの学習記憶障害が回復した