ナノ粒子に搭載したsiRNAによる、効果的な治療法の開発
取り組んでいる課題
日本人が生涯において癌と診断される確率は男女ともほぼ50%です。さらに、日 本人が癌で亡くなる可能性は、男性で4人に1人、女性で6人に1人です。癌 の治療方法には外科手術等の多様な選択肢がありますが、中でも抗癌剤を使っ た化学療法は癌細胞を標的とする強力な方法で、癌患者さんの30%から100% が抗癌剤による治療を受けています。しかし、化学療法を受けた70%から80%の患者さんは多岐にわたる副作用に悩まされ、生活の質が損なわれています。そのた め、より低用量の抗癌剤で効果的に癌細胞を破壊する可能性を切り拓くことが必 要です。抗癌剤の用量を減らす方法の発見は、癌患者さんに大きな恩恵をもたら すでしょう。
図1 化学療法の副作用、Kelly in Medical News Today から引用
私たちの解決策
私たちの技術は、tob遺伝子を標的としたsiRNAを抗癌剤と併用して癌患者さ んを治療するという方法です。Tob蛋白には抗アポトーシス活性があります。私たち のアプローチでは、この抗アポトーシス活性をtob siRNAを用いることによって抑制 し、癌細胞の抗癌剤に対する感受性を高めます。生体内でのsiRNAが安定化す るよう、既に確立されているAESC (advanced enhanced stabilization chemistry) 法によりtob siRNAを化学的に修飾しました。このAESC tob siRNAを、東京大 学の長田健介(現・量子科学技術研究開発機構、本POCプログラムのメンバ ー)のグループが開発したuPICナノ粒子に封入しました。このuPICナノ粒子は非 常に小さく、固形腫瘍をとりまく新生血管へと入っていき、EPR (enhanced permeability and retention) 効果により、tob siRNA を効率よく腫瘍組織に到達 させます。
図2 tob siRNA 搭載uPIC ナノ粒子を用いた化学療法