樹脂結合型環状1,3-ジオン誘導体

取り組んでいる課題 

化学試薬や医薬品などの有機化合物は、不純物として存在する酸や塩基によって分解や異性化を引き起こすことがしばしばあります。分解や異性化が起きた試料は、再精製するか廃棄が必要です。医薬品やその関連化合物の合成過程において、出発物質や合成中間体の望ましくない分解や異性化は、最終生成物の収率を低下させ、廃棄物の増加にもつながります。分解や異性化を防ぐため、医薬品や化学物質(出発物質、合成中間体、試薬など)は低温で保存されることが多いのですが、多くの場合これは実用的ではありません。 

POC project (75 - Tanaka): figure 1
図1. 環状1,3-ジオン誘導体とその酸および塩基による異性化抑制への応用

私たちの解決策 

私たちは最近、環状1,3-ジオン誘導体(1aや1b)および樹脂結合型誘導体(樹脂結合型1b)を化合物の有機溶媒溶液に添加することで、様々な塩基および酸に起因する分解や異性化を防ぐことができることを報告しました(Chem. Eur. J. 2020, 26, 222; WO/2021/075482)。目的の化合物の溶液(有機溶媒中)に樹脂結合型環状1,3-ジオン誘導体(樹脂結合型1bなど)を添加すると、その緩衝機能により、分解や異性化の原因が酸であっても塩基であっても、その両方について、分解や異性化を抑制できます。つまり、分解や異性化の原因が酸であるか塩基であるかを調べることなく、添加するだけで対応できます。この添加後は上澄み液をそのまま使用することができます。さらに、必要に応じ、この樹脂結合型環状1,3-ジオン誘導体は、簡単なろ過操作で除去することが可能です。 

POC project (75 - Tanaka): figure 2
図2. 2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジオンと酸(AH)および塩基(B)との推定される相互作用