J-PEAKSで実現するコアファシリティ強化とクライオ電顕研究の前進

J-PEAKS事業の支援を受け、最先端のクライオ電子顕微鏡2台を導入。タンパク質構造の原子レベル解析や細胞内の詳細観察が可能となり、酵素学・創薬研究にも新たな可能性を拓きます。

OISTは文部科学省のJ-PEAKS事業を通じて、5年間で55億円の支援を受けます。本事業の重点施策の一つはコアファシリティの強化であり、最先端の研究機器と専門的な技術支援を提供することで、OIST全体の研究活動を支えています。

J-PEAKSの助成金を活用して、コアファシリティではクライオ電子顕微鏡解析用に新たに顕微鏡2台を導入しました*。いずれも国内メーカーであるJEOL製で、最高水準の機器とされています。

導入されたのは「CRYO ARM 200 II」と「CRYO ARM 300 II」で、クライオ電子顕微鏡を用いて海洋生物を研究している海洋構造生物学ユニットのオレグ・シッツェル准教授は、この2基の特徴を以下のように説明しています。

  1. 冷陰極電界放出型電子銃:エネルギーのばらつきがほとんどなく、輝度の高い電子ビームを生成
  2. インカラム形エネルギーフィルター:取得画像の信号対雑音比を向上
  3. 上記画像取得のための最先端検出器
  4. CRYO ARM 300 II」は独自の高分解能ポールピースを搭載
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左から時計回りに:CRYO ARM 200 IIの組み立て作業/CRYO ARM操作室にて、分子クライオ電子顕微鏡ユニットのスタッフサイエンティスト、ラファエル・アヤラ博士/ほぼ完成したCRYO ARM 20
左から時計回りに:CRYO ARM 200 IIの組み立て作業/CRYO ARM操作室にて、分子クライオ電子顕微鏡ユニットのスタッフサイエンティスト、ラファエル・アヤラ博士/ほぼ完成したCRYO ARM 20

「これらの特徴により、タンパク質の構造をほぼ原子レベルの解像度で決定するための高品質な画像を取得することができます。高分解能のタンパク質構造は、これらの生体ナノマシンがどのように機能するかを解明する助けとなり、必要に応じて目的に合わせて改変する方法を示してくれます。また、細胞内でタンパク質やその他の構成要素がどのように配置されているかを観察することで、これまでにない詳細さで細胞の働きを理解することができます。」とシッツェル准教授は説明しました。

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タンパク質複合体アポフェリチンの3D再構築。水分子は黄色で表示。ウォルフ教授とCryoARM-300-II
タンパク質複合体アポフェリチンの3D再構築。水分子は黄色で表示。ウォルフ教授とCryoARM-300-II

生体分子電子顕微鏡解析ユニットを主宰するマティアス・ウォルフ教授も次のように述べています。「これは単粒子解析において世界最高水準のクライオ透過型電子顕微鏡と言えるかもしれません。我々はすでにクライオ電子顕微鏡での現行の解像度記録に到達していますが、この顕微鏡を使えば、その記録を破ることができるでしょう。水素原子を可視化できることを期待しており、実現すれば酵素学や医薬品設計に大きな影響を与えることになります。」

OISTは今後もJ-PEAKSの支援を活かし、コアファシリティに最先端機器を導入することで、研究者の挑戦を支える強固な基盤づくりを進めていきます。

*2基の顕微鏡は異なる財源を活用して導入されましたが、J-PEAKS事業の支援があったことで、同時導入という戦略的な交渉が可能となり、より高性能な機器の整備が実現しました。

OISTのコアファシリティについて詳しく知り、最先端研究を支える仕組みをご覧ください。
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