大進化ユニット(Macroevolution Unit

大進化ユニット(代表:Lauren Sallan)は、大進化(マクロ進化;macroevolution――個体群や種のレベルを超えて、系統の誕生・多様化・絶滅、生態系の形成、そして形態や多様性の長期的変化を扱う進化研究――の観点から、生物多様性が空間と時間を通じてどのように構造化されるのかを理論主導で解明する研究グループです。

本研究室では、多様性リセット枠組み(Diversity–Reset Framework)を中心に研究を進めています。これは、生態的飽和・絶滅によるターンオーバー・機能的制約をひとつの複雑系として統合した大進化モデルです。この枠組みでは、生態的相互作用・物理的制約・歴史的偶然性・新規形質の出現を、大規模な進化構造を生み出す共通要因として位置づけています。

進化を単なる革新の蓄積ではなく、生態的充填・撹乱・再構成が繰り返される過程として理解することで、異なる生態系と系統にわたり、数億年規模で繰り返される進化構造を説明します。

本研究室では、魚類を「対象」ではなく、一般性のある進化理論を検証するためのモデル系として位置づけています。水中では流体力学と生体力学が形態・運動性能・生態を密接に結びつけるため、魚類は個体レベルの設計と大進化パターンを結ぶ上で極めて有効です。

研究対象とアプローチ

本研究室におけるすべてのプロジェクトは、「Diversity-Reset Framework(多様性リセット枠組み)」の開発と検証に直接貢献しています。
本研究では、異なる時間スケールおよび生物階層にまたがってデータと理論を統合し、化石記録、系統解析、バイオメカニクス、集団ゲノミクス、理論モデリングを組み合わせることで、大進化パターンの機構的理解を目指しています。

沖縄に拠点を置くことにより、世界有数の生物多様性を誇る海域へのアクセスが可能となっています。本研究室ではこの地理的優位性を戦略的に活用し、分類体系の整理、系統樹の構築、ゲノムリソースの整備、生態的形質の記録を進めています。これにより、抽象的なモデルや不完全な世界的データセット、あるいは化石資料のみに依存するのではなく、実際の高密度データに基づいて大進化仮説を検証することを可能にしています。

そのため、野外調査、自然史研究、分類学的研究は、以下の包括的な理論的課題の一部として実施されています:
• 多様化の限界は何か
• 生態的・機能的空間の構造はどのようになっているか
• 群集構造は時間とともにどのように組み上がるのか
• 擾乱後に進化的構造がなぜ再び出現するのか

現在の主な研究テーマには以下が含まれます:
• 多様性依存的な多様化
• 系統樹および生態系における系統的不均衡
• 初期および現生脊椎動物における機能的・バイオメカニクス的制約
• 大量絶滅・生態要因・形質革新が魚類進化に及ぼす影響
• 表現型の新規性の出現と分岐を扱う理論モデル
• ニシン目魚類における分類学と種分化
• インド太平洋地域におけるゲノミクス由来の生物地理と群集形成



研究対象システム(Study Groups

魚類(Fishes

空間と時間をまたぐ一般仮説の検証モデル系。

初期脊椎動物(Early Vertebrates

新規形質の出現、機能空間の再編、絶滅後の生存戦略の理解に不可欠。

水圏生態系(Aquatic Ecosystems

地理・生態・歴史の相互作用から進化構造を解析対象とします。


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研究室メンバー募集

本ユニットでは、学生・ポスドク・インターンを募集しています。
生物学、物理学、工学、数学、情報科学、地学など、多様なバックグラウンドの方を歓迎します。

大進化を、生態・物理・歴史要因が相互に作用する複雑系として扱い、理論・個体・データを統合して研究します。

博士課程:概念的/個体的関心と科学的素養を重視。入学後は独立した博士研究テーマを主導。
ポスドク:1分野の専門性と独立した研究展開への意欲を重視。
インターン:既存プロジェクトに参加しつつ、指導のもと独自テーマに取り組めます。成果に応じて共著・筆頭著者可、修了後の継続も可能。

※ 本ユニットは、保全・モニタリング中心の研究室ではありません。調査・分類は理論検証のための基盤構築として実施します。



ロゴの説明(Logo

Lab Logo

大進化ユニットのロゴ(作:John Megahan)は、研究対象の時間スケールと進化的範囲を象徴する2種の魚を描いています。

左の Sacabambaspis は、骨(装甲)をもつ初期の無顎類で、約4億6千万年前に南半球の浅海に広く分布していました。
右の Caesio diagramma(グルクン/タカサゴ)は、沖縄県の県魚で、現在のサンゴ礁域に普通に見られる浮遊動物食魚です。

両者は約4億6千万年という時間差にもかかわらず、成魚サイズ(約25cm)や摂餌様式(吸引による動物プランクトン食)が類似しています。この対比は、系統が入れ替わっても、生態的役割や機能設計が繰り返し現れるという本ユニットの中心思想(制約・反復・リセット)を象徴しています。