沖縄島北部及び西表島の世界自然遺産登録地における保全管理の連携協定にOISTが参画

OIST、沖縄県、環境省など7者が世界自然遺産登録地域の保全管理に向けた協定式を実施

連携協定

沖縄科学技術大学院大学(OIST)はこの度、沖縄県、国立大学法人琉球大学、国立研究開発法人国立環境研究所生物多様性領域、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所九州支所、林野庁九州森林管理局沖縄森林管理署及び環境省沖縄奄美自然環境事務所と共に、世界自然遺産登録区域及び緩衝地帯の保全管理を目的とした連携協定を締結しました。8月19日、連携協定を結んだ7者により、オンラインでの締結式が行われました。

締結式に参加した沖縄県知事の玉城デニー氏は「沖縄島北部及び西表島の普遍的な価値が認められ、世界自然遺産に登録されたことは大変喜ばしいことです。この協定により、各機関との連携をより深め、研究や人材育成などの取り組みを強化することができると期待しています。」と語ります。

7者は、世界自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」のうち、沖縄島北部及び西表島において長期的な調査研究を促進し、両島の自然環境・文化等に関する科学的・専門的知見を蓄積していきます。これにより、モニタリングや科学的な管理の基盤を整備し、世界自然遺産の保全管理に貢献するとともに、知見やフィールドを活用し、保全管理の担い手として若い世代や地域の人材の育成を図っていくことを目指します。

今回の連携協定に関して、OISTのピーター・グルース学長は「豊かな生物多様性を保全し、環境スチュワードシップを実現し、自然史の知見を未来の世代に伝えていくために、皆様との協力関係をさらに深め、協働できることを楽しみにしています。」と述べています。

2021年8月19日にオンラインで行われた連結協定の締結式にて、参加した7つの機関の代表者が協定書に署名を行った。

OKEON美ら森プロジェクトの取り組み

本連携協定において、OISTは「OKEON美ら森プロジェクト」の活動を通して世界自然遺産登録区域及び緩衝地帯の保全管理への貢献を目指します。OKEON美ら森プロジェクトは、OISTが中心となり、県内の地域社会、行政、教育機関、博物館などと一緒に2014年から進めている沖縄の陸域環境モニタリングプロジェクトです。活動では、沖縄島内24カ所を中心に設置された昆虫トラップや録音装置、定点カメラなどを利用した環境モニタリングを行い、ヒアリを始めとした外来種対策や、昆虫や鳥類、哺乳類、植物などの生態研究や様々な環境研究を実施しています。また、それらの研究成果を沖縄の自然環境の保全に役立てるために、地域の行政や教育分野との協働を進めています。

OKEON美ら森プロジェクトの最近の取り組みの一例として挙げられるのが、2020年8月にスタートした、特定外来生物ハヤトゲフシアリのモニタリングと防除です。この活動では琉球大学、那覇市役所、環境省などを中心に様々な機関と協力をしながら、ハヤトゲフシアリの根絶を目指して活動が進められています。

ハヤトゲフシアリの定着が確認された那覇市の国道沿いでは、OISTの研究者を含むプロジェクトメンバーが巣口の特定やマーキング、薬餌の設置、その効果測定などを定例的に行っています。最新の生態研究知見や、新しく開発した餌やその評価手法を積極的に取り入れながら、世界的にもまだわからないことが多いこのアリに対しての、最適な防除方法を模索しています。

OKEON美ら森プロジェクトのメインコーディネータである吉村正志博士は「これらの活動を続けるには、研究者がラボで研究や技術開発を行うだけでは進められません。行政、研究機関、また土地を管理する人など様々な関係者との協働により進めることが大切です」と話します。

OKEON美ら森プロジェクトによって確立されてきた科学的知見や、沖縄本島での網羅的なモニタリング調査のノウハウ、地域社会や関係機関との協働関係が、今後、世界自然遺産登録地域の保全管理に貢献することが期待されます。

動画:OKEON美ら森プロジェクト ハヤトゲフシアリのモニタリングと防除のプロジェクト

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