第9回 OIST-慶應ショーケースシリーズ開催:クライオ電子顕微鏡の画期的進歩とタンパク質科学のイノベーションに焦点をあてる

OIST、慶應義塾大学、大阪大学の研究者たちが、クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)およびタンパク質構造科学における最先端の研究成果を紹介しました。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)と慶應義塾大学は、日本各地から研究者を迎え、第9 OIST–慶應Showcase Talk SeriesProteins in Focus: Cryo-EM and Structural Frontiers」を2026127日に開催しました本イベントでは、タンパク質科学、構造生物学、クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)の分野をリードする研究者が集まり、新たな技術が分子メカニズムの理解をどのように変革し、さらにバイオテクノロジー、医療、環境科学におけるイノベーションをどのように可能にしているのかについて議論しました。本イベントは J-PEAKS プログラムの一環として開催されました。

Amy Shen delivers welcome remarks
エイミー・シェン博士が、ショーケーストークシリーズ第9回の開幕にあたり歓迎の挨拶を述べた。
エイミー・シェン博士が、ショーケーストークシリーズ第9回の開幕にあたり歓迎の挨拶を述べた。

OIST と慶應義塾大学の継続的な共同研究の一環として、本シンポジウムには慶應義塾大学、OIST、そして大阪大学蛋白質研究所からの登壇者が参加しました。ショーケースシリーズの目的は、学際的な交流を促進し、長期的な研究パートナーシップを育むことにあります。シンポジウムは、OIST プロボストのエイミー・シェン博士と、慶應義塾大学 研究担当常任理事の斉木敏治教授による挨拶で開幕し、1 日を通して活発な科学的対話が展開される場が整えられました。

Opening remarks at the OIST-Keio Showcase Talk Series Vol. 9 event.
慶應義塾大学 研究担当常任理事の斉木敏治博士による開会の挨拶でセッションが幕を開けた。
慶應義塾大学 研究担当常任理事の斉木敏治博士による開会の挨拶でセッションが幕を開けた。

午前のセッションでは、分子スケールにおける基礎的な生物学的プロセスの理解に関する画期的な研究成果が紹介されました。大阪大学の栗栖源嗣教授は、珪藻ピレノイドにおける効率的な CO₂ 固定を可能にするタンパク質シェルの構造基盤について講演を行い、光合成装置の重要な構成要素に関する新たな洞察を示しました。

続いて、慶應義塾大学の横尾尚典博士が、血液脳関門を通過可能なナノボディと TfR1 の相互作用の構造基盤について発表しました。この研究は、特に神経疾患を標的とした治療的デリバリー戦略において大きな応用可能性を持っています。

OIST からは、ポスドク研究員の Prashant Jain 博士が登壇し、キナーゼの活性化ループの微妙な変化が細胞内シグナル伝達経路に大きな影響を与えることを説明しました。彼の研究は、構造生物学が薬剤開発に広範な影響をもつ精緻な分子挙動を明らかにできることを示しました。

午前セッションの最後には、大阪大学の加藤貴之教授が登壇し、タンパク質生合成の初期段階をクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)で可視化する際に直面する課題について解説しました。彼の講演は、試料調製、イメージング技術、計算解析の継続的な革新の必要性を強調するものでした。

午後のプログラムは、生物システムの可視化手法の拡大をテーマに進められました。慶應義塾大学の佐々木栄太博士は、細胞内の分子クラウディングを評価するために設計された新しい蛍光タンパク質色素ハイブリッドプローブを紹介し、細胞環境をモニタリングする強力な手法を示しました。

OIST Matthias Wolf 教授は、バクテリオファージ Bas63 ɸTE の構造と収縮変換を取り上げ、その構造ダイナミクスが微生物学やナノテクノロジーに寄与する点を説明しました。

さらに、慶應義塾大学の鈴木邦道博士は、Bio2Q センターに新設されたクライオ EM コア施設と解析パイプラインについて紹介しました。この施設は、最先端の cryoEM 技術を広く提供することで、多様な生物学・医学分野の発展を支えることが期待されています。

テクニカルセッションの締めくくりとして、OIST Oleg Sitsel 博士が、クライオ電子トモグラフィー(cryoET)の現状と今後の展望について総括しました。彼の講演は、細胞本来の環境下で三次元構造を可視化できる cryoET の能力が、分子可視化の限界をどのように塗り替えつつあるかを強調するものでした。

Attendees listening to a presentation at the Showcase Talk.
OIST・慶應ショーケース講演シリーズ第9回の会場で、参加者が講演に聴き入った。
OIST・慶應ショーケース講演シリーズ第9回の会場で、参加者が講演に聴き入った。

その後、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)の岡野恵子氏が、OIST–慶應による共同研究の機会について簡潔に述べ、両機関の継続的な連携の重要性を訴えました。

本シンポジウムは、1 28 日から 30 日に開催された 2026 年クライオ電子顕微鏡(CryoElectron Microscopy)コースの前哨となるイベントでもありました。このコースは、実践的なワークショップと専門家によるデモンストレーションを通じて、次世代の構造生物学者を育成することを目的としています。

cryo-EM をはじめとする構造解析技術が進化し続ける中、OIST–Keio Showcase Series Vol. 9 のようなイベントは、研究者を結びつけ、新たなアイデアを生み出し、分子フロンティアにおける発見を加速させる上で、引き続き重要な役割を果たすことでしょう。

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