鳥の声から生態系を考える

最新のポッドキャストエピソードでは、自然環境から得た膨大なデータを島の野生生物の研究にどう活用しているかを紹介します。

Podcast #3 Bioconvergence Center OKEON header image

沖縄科学技術大学院大学(OIST)のグローバル・バイオコンバージェンスイノベーション拠点は、「心の健康」、「体の健康」、「環境の健康」を増進し、持続可能な世界の実現を目指し取り組んでいます。同拠点の活動は、人々の健康が、動物や環境の健康に結びついているという考えに基づくアプローチ「ワンワールド・ワンヘルス(One World-One Health)」を実践するものです。この原則に基づき、科学者と一般市民が協力することで、今日の課題に対する持続可能な解決策を見つけようとするものです。 

グローバル・バイオコンバージェンス拠点を紹介するシリーズ第2弾となる今回のポッドキャストでは、DJニック・ラスカムさんが「OKEON美ら森プロジェクト」の研究者にインタビューしました。 OKEON美ら森プロジェクトでは、沖縄本島の生態学的特徴を測定し、この島の野生生物の構成を長期にわたって記録するという重要な課題に取り組んでいます。 

具体的には、沖縄本島の24箇所に、節足動物を捕獲するトラップ、気象観測機器、音声レコーダー、定点カメラなどを置いて、沖縄の生態系に関する詳細なデータをまとめています。これにより、気候変動や台風などで、動物がどのような影響を受けるのかを測定することができます。また、このデータは、長い時間をかけて初めて見えてくるような未知の環境パターンを発見するのにも役立ちます。 

琉球列島はこの研究をするのにぴったりの場所です。それぞれの島によって固有種と外来種の構成が異なり、沖縄本島内でも南の都市部から北の自然豊かな地域まで気温やその他の特性の変化が大きいため、生物多様性のプロセスや動態を研究するのに理想的な環境となっています。 

今回のエピソードでは、DJニックがOKEON美ら森プロジェクトに関わっている研究者3人に話を聞きました。 

  • 統合群集生態学ユニットのポストドクトラルスカラーで、生態系の回復力とサウンドスケープを研究しているサムエル・ロス博士 

DJニック・ラスカムさんが、沖縄の自然や野生生物に関する研究について、OISTのダン・ウォーレン博士(前列右)、カサンドラ・ジョージさん(後列左)、サムエル・ロス博士(前列左)に話を聞いた。
DJニック・ラスカムさんが、沖縄の自然や野生生物に関する研究について、OISTのダン・ウォーレン博士(前列右)、カサンドラ・ジョージさん(後列左)、サムエル・ロス博士(前列左)に話を聞いた。

ロス博士は生態学では観察の規模を変更すると、観察結果が変わることがよくあると説明し、「生態学は残念ながら一般法則があまりないことで有名です」と言います。OKEON美ら森プロジェクトの大規模な測定は、その大きな違いを埋めることに役立ちます。例えば、2018年9月に台風24号が沖縄を直撃したときには、音声測定により、台風の前、真っ只中、台風の後の鳥類群集の変化を追跡しました。それぞれの調査地点を単独で見ても目立った結果は得られませんでしたが、島全体のデータを見ると、興味深いパターンが見られたのです。 

このような大規模な環境パターンを研究するには、多くの調査地からの膨大なデータが必要となります。OKEON美ら森プロジェクトの沖縄本島にある24のフィールドサイトでは、10分ごとに1分間、周辺の音を詳細に録音する装置が設置されています。 

沖縄本島全域で動物の鳴き声などを録音している音感知センサー
沖縄本島全域で動物の鳴き声などを録音している音感知センサー。

このような大規模のプロジェクトを行うには、地域の方々や自治体からのご理解とご支援が重要です。OKEON美ら森プロジェクトにとって、地域とのつながりは必要不可欠です。「それは、私たちがなぜ存在するのか、どのように存在するのかという問いの一部なのです」とウォーレン博士は強調します。プロジェクトのデータは、しばしば自治体を支援するために共有され、外来種のマングースを監視するのに役立っているほか、科学学習の一環として、子どもたちに沖縄の多様な野生生物について理解を深めてもらうために活用されています。   

また、地元の方々の協力により、収集したデータの理解が深まることもあります。「現在、機械学習によって鳥の鳴き声を識別するプログラムの構築を試みていますが、そのためにはプログラムが学習するための基盤を作る必要があります」とカサンドラ・ジョージさんは話します。このデータベースを構築するために、現在はカサンドラさん自身が何千もの鳥の鳴き声の録音を聞き、鳥の種類を識別しています。これは時間がかかるだけでなく、非常に難しい作業です。未知の鳥の鳴き声に出くわしたときは、地元の専門家に相談して、謎が解けることも多いのです。 

グローバル・バイオコンバージェンスイノベーション拠点は、科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の助成を受けて活動しています。

記事執筆: ラヘル ・ルップリ

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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