海洋科学へのいざない ― OISTのサンゴ礁研究をけん引する二人の研究者インタビュー

ラジオDJニック・ラスカムが海洋生物多様性に関する研究とサンゴ礁に迫る脅威について研究者に聞きました。

Header Podcast#2 Bioconvergence Center Satoh and Ravasi

沖縄科学技術大学院大学(OIST)ポッドキャスター・イン・レジデンス、DJニック・ラスカムが、グローバル・バイオコンバージェンスイノベーション拠点で行われている研究について掘り下げます。同拠点は「ワンワールド・ワンヘルス(One World-One Health)」をテーマに掲げ、「心の健康」、「体の健康」、「環境の健康」という3つのテーマに取り組んでいます。 

ポッドキャストシリーズ第2回目の本エピソードでは、「環境の健康」に関連して、サンゴとサンゴ礁に生息する生き物に関して、OISTのマリンゲノミックスユニットを率いる佐藤矩行教授と、海洋気候変動ユニットを率いるティモシー・ラバシ教授に話を聞きました。 

また、二人がそれぞれの分野で研究を進めるに至ったきっかけや、OISTでの毎日、沖縄がサンゴ礁研究にとって重要な場所である理由についても紹介しています。

DJニック・ラスカムとOISTのサンゴ礁研究について語るティモシー・ラバシ教授と佐藤矩行教授
DJニック・ラスカムとOISTのサンゴ礁研究について語るティモシー・ラバシ教授と佐藤矩行教授。 

研究における連携 

ラバシ教授は気候変動がサンゴ礁に住む魚類に与える影響を調べ、佐藤教授はサンゴのゲノム解読を行っている、という違いはありますが、両者の研究手法はよく似ており、同じサンプルを使用することもあります。両者が連携することによって、OISTではサンゴとサンゴ礁魚の両方に関する実りの多い共同研究が実現しています。 

ラバシ教授は、ボートに乗って現地調査を行い、水中に潜り、魚を採集することが多く、パラオやニューカレドニア、パプアニューギニアといった海域に頻繁に遠征しています。このほどパラオで行った調査についてはこちらをご覧ください。

ラバシ教授の研究活動は、ニッコー湾(パラオ共和国)のような場所を訪れることも含まれる。
ラバシ教授の研究活動は、絶景の広がるニッコー湾(パラオ共和国)のような場所を訪れ、サンゴ礁生態系に将来、何が起こるかを検証することも含まれる。写真提供:Nicolas Job 

佐藤教授チームの目覚ましい研究成果は、OISTの研究支援環境、特にゲノムシーケンシング機器に支えられてきました。佐藤教授は「過去10年間で、私の研究ユニットは12~13の海洋ゲノムを発表してきました」と説明します。 

両教授が研究を進めるにあたって、地元、沖縄の人々の専門知識、特に漁業関係者との関わりが重要になります。サンゴの植え付けや海藻の養殖に関する漁業者の詳細な記録や、多様な海洋活動に関する知識は、研究において貴重な資源となっています。逆に地元の漁業者たちが科学的知見から支援を必要とする時には、研究者に連絡をくれます。例えば、糸満漁協のマグロ漁師たちからは、漁獲したマグロに含まれるマイクロプラスチックの検出について、専門知識を求められました。「漁業者はこの問題や人為的要因による影響について高い関心を持っておられます。OISTは沖縄でよく知られており、私たちが漁業者の助けになる技術を持っていることをよく理解してくださっています」とラバシ教授は話します。 

海洋生物多様性の保全に貢献  

両教授は、気温上昇がサンゴ礁に与える影響について実証することで、環境保全への意識を高め、漁業や観光を制限する海洋保護区を設置するよう、社会に働きかけたいと考えています。 

ラバシ教授は、気候変動が世界的な問題である一方で、人々があまり考慮しないような地域的な問題も存在すると強調します。沖縄や日本のような場所では、乱獲や、インフラ・防潮堤建設のための埋め立てなど、沿岸開発が大きな問題となっています。もうひとつの問題は、農業による土壌流出です。これらの問題は今まさに起こっており、サンゴ礁の生態系にリスクをもたらすため、早急な対応が必要です。 

海洋の生物多様性については、陸上の生態系に比べて、特に人類が影響を及ぼす以前のことは十分に分かっていません。なぜなら、海洋における生物多様性の評価が陸上よりもはるかに難しいためです。このことは、生態系でフィールドリサーチを実施し、生物多様性を測定し新種記載することが重要であることを意味しています。人間活動の影響を正確に測定し、その影響による特定の種の絶滅を確認する前に、まずはどのような種が存在するのかを知る必要があるのです。 

今後の研究について  

サンゴ礁や海洋の生物多様性研究には、多くの期待が寄せられています。佐藤教授は「環境DNAバーコーディング」が今後の研究の進展にとって強力な手法になると考えています。この手法により、科学者はDNA断片を使って特定の環境に生息する種を特定することが可能になります。これは、生物多様性と生態系の理解に革命をもたらす可能性のある、わくわくするようなアプローチです。 

二人は、「tropical seascape(熱帯の海景)」という比較的新しい概念が、生物多様性と気候変動に関する研究において、次の重要な研究領域になると考えています。このアプローチは、陸や海の生態系を個々に研究するだけでなく、海景、つまりより大局的な視点で海を見つめ、陸と海の生息地間の相互作用を理解しようとするもので、海と生活を共にする人々の影響も含まれます。 

OISTのサンゴ礁研究について、もっと知りたい方は、こちらからポッドキャストの最新エピソードにアクセスしてください。(ポッドキャストは英語のみ)    

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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