沖縄の子どもたちのより良い未来のために

小中学生向けのSTEM教育活動を支援する、仲宗根松郎・ツル子基金が設立

今年5月、ロバート・ナカソネ氏の寄付金により、OIST財団が「仲宗根松郎・ツル子基金」を設立しました。同基金は、主に小中学生を対象にした科学教育活動に活用される予定で、今後科学の道に進む若者を支援します。世界ウチナーンチュ・ビジネス・ネットワーク(WUB)の創設者であるロバート・ナカソネ氏と、弁護士でハワイ県人会元会長のエドワード・クバ氏が、基金設立の背景や、沖縄の子どもたちの将来について語りました。

基金設立の背景と想い

仲宗根松郎・ツル子基金の設立にあたり、ロバート・ナカソネ氏には両親から受けた教育や支援に特別な想いがあると話します。

「私の両親は1920年代に米国ハワイに移住しました。当初は非常に貧しく、畑や家畜の世話、レストランのキッチンなど様々な仕事をかけ持ちしていたそうです。その後両親は、当時教育環境が充実しているとの理由でホノルルに移り、レストランを開きました。子どもたちの教育のために環境を変えた両親の努力の甲斐あって、6人の子ども全員が大学を卒業し、そのうち私を含めて5人はSTEM(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学))関連の素晴らしい仕事に就くことができました。両親にしてもらったことを、今度は私が恩返しとして、沖縄の子どもたちの将来のために役立ちたいと思っています。」

また、ナカソネ氏は沖縄の子どもたちには、幼いうちからもっとSTEMに触れる体験をしてもらいたいと話します。特に小中学生時代、そして女子生徒を中心にSTEM教育の重要性を指摘します。「日本社会は、女性活躍の推進の面で未だ大きな課題を抱えています。一方で、ハワイでは女性の科学者も、女性のエンジニアも珍しい存在ではありません。STEMの領域では本来、男女の差はなく、その人が何を成し遂げたかで正当な評価を受けるのです。若いうちにSTEMに関わることで、より幅広い機会に恵まれることにつながります。今回の基金は子どもたちに科学体験を提供し、それが新たな機会につながるように活用して欲しいと思います。」

沖縄出身のハワイ移住者の功績を沖縄の将来のヒントに

沖縄県は長きに渡って高い貧困率や教育の格差など多くの課題を抱えています。OIST財団での評議員や、琉球大学およびハワイ大学でアドバイザーを務め、教育分野でも活動的なエドワード・クバ氏は、沖縄の子どもたちの将来をより良いものにするためには、ハワイに住む沖縄出身者がヒントになると語ります。

「2018年にハワイ州が発表した、ハワイ在住の特定の人種グループ別で見た統計調査によれば、沖縄出身者は世帯年収、持ち家率、教育水準(高等教育以上を卒業した人の率)、などの項目で、どのグループよりも高いトップクラスの数字を誇り、失業者率や貧困率の項目では最も低い数字であることがわかりました。これは、最初に沖縄からハワイに移り住んだ世代の人々が、自分の子どもや孫に対する教育を重要視し、その後2世、3世の世代が少しずつ成功をつかんでいった結果ではないかと思います。社会の教育の重要性への認識を高めることができれば、ハワイ在住のウチナーンチュが成し遂げたことを、同じように沖縄でもできると信じています。」

最後にロバート・ナカソネ氏は「将来の沖縄のためにOISTがあって欲しいと思います。また、沖縄の人とOISTがさらに交流を深め、将来のために共に邁進して欲しいです」と締めくくります。

※本記事は、今年6月に行われた琉球新報社とのインタビューを一部、抜粋してまとめたものです

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