OISTで起業を目指すグリーンテクノロジーのスタートアップ、アクセル全開!

OISTスタートアップ・アクセラレータプログラムは、沖縄でのベンチャー立ち上げを支援しています。

 OISTで起業を目指している、インド出身の起業家チーム、EF Polymer が、権威あるグリーンテクノロジーの大会であるクライメート・ローンチパッドの炭素技術部門で、チャンピオンに選ばれるという快挙を成し遂げました。

 OISTのメンターから指導を受けたEF Polymerは、地域・国レベルで、史上最多となる2,601人の起業家の中から勝ち抜き、世界グランドファイナルに進みました。11月14日から15日の2日間に渡ってオランダのアムステルダムで開催されたファイナルでは、世界中から選ばれた最も有望で革新的なスタートアップ16社が、それぞれの環境技術のアイデアを発表しました。EF Polymerは炭素技術のテーマで優勝し、5,000ユーロの賞金を獲得しました。

 「受賞は夢のようで現実とは思えませんでした。50カ国以上から多くのチームが参加し、どのチームも素晴らしいアイデアを持っていたので、信じられなかったのです。」と、EF Polymer のCEO兼創設者であるナラヤン・ガルジャールさんは受賞の喜びを語っています。

EF Polymerがクライメート・ローンチパッド・アワードのグランドファイナルで「炭素技術賞」を受賞
  

 クライメート・ローンチパッド大会は、気候変動に関連する問題を解決するグリーンで持続可能なソリューションの開発を目指すスタートアップ企業を支援するという大胆な目標を掲げています。

 本イベントでEF Polymerは、農業における水不足対策として「環境に優しい天然保水ポリマー」のアイデアのピッチを行いました。

 天然の有機材料でできたこのポリマーは、高い保水性を持っています。地中で数週間かけてゆっくりと水を放出するため、灌漑用水を大幅に節水することができます。チームは有機性廃棄物をゲルに混ぜることで、他の高吸収性ポリマーに比べて安価で、かつ無害、100%生分解可能なポリマーを開発することに成功しました。さらに、このポリマーは分解後、作物の肥料としての役割も果たします。

 「インドでは水不足が深刻な問題となっており、私たちの出身地であるラジャスタン州を含む11の州が干ばつの影響を受けています。このことがきっかけとなり、ナラヤンは水不足に効果的に対処できる製品の開発を目的としたスタートアップを立ち上げました。」と、共同創設者でCOOのプーラン・ラジャプットさんは話します。

環境に優しいポリマーは、地中で大量の水分を保持。これにより作物の灌漑用水を大幅に節水することが可能。
  

 EF Polymer はナラヤンさんの幼なじみと大学時代の友人5人からなるチームです。そのうちナラヤンさんとプーランさんは現在、OISTイノベーションスクエア(I2)スタートアップ・アクセラレーター・プログラムのメンバーとして活動しています。

 「スタートアップ・アクセラレーター・プログラムがなければ、この賞を獲得することはできなかったでしょう。OISTは私たちにピッチの経験を与えてくれ、全体的に指導や費用の支援などをしてくれました。心から感謝しています。」とナラヤンさんはコメントしています。

I2スタートアップ・アクセラレータプログラムでの経験

 OISTの I2スタートアップ・アクセラレーター・プログラムでは、2019年7月にインドのEF Polymerとロシアのレヴ・オヴチニコヴさんのプロジェクトが採択されました。両チームは一年間沖縄に居住し、OISTの技術開発イノベーションセンター(TDIC)で会社の設立を目指しています。

 プログラム期間中、レヴさんは人体内部の温度を、生体を傷つけることなく非侵襲的に測定できる装置のプロトタイプの開発とマーケティングに取り組んでいます。放射温度計と呼ばれるこの装置は、個人の体内組織から放射されるマイクロ波放射を検出することができ、皮下7cmまでの温度測定が可能です。この装置は、体内で腫瘍や脳卒中に関連する可能性がある体温のホットスポットを検知するなど、疾患の診断に応用可能です。

放射温度計(左図のプロトタイプ)は、マイクロ波を利用して乳房(右側のスキャン)など体の一部を走査し、体内の温度を測定する。
  

 「数年前にロシアの教授と共同でプロトタイプの開発を始めましたが、残念ながら開発は中断してしまいました。OISTに来ることで、研究を完了し本装置を開発する二度目のチャンスを与えてもらいました。」とレヴさんは話します。

 レジデンシー・プログラムの一環で、両プロジェクトチームは資金援助とメンターからの指導を受け、OISTの最先端の研究開発施設を利用することができます。

 「I2スタートアップ・アクセラレーター・プログラムは、重要なパートナーであり設立時のスポンサーでもある沖縄県のおかげで、起業家の方々に実に豊かでユニークな経験を提供することができています。研究資金だけでなく、スタートアップ立ち上げのための施設、設備、ネットワークなど、プロジェクト採択チームが必要とするすべてのリソースを提供することが可能なのです。」と、OIST の技術開発イノベーションセンター(TDIC)のローレン・ハ准副学長は説明します。

 「OISTは、関連する起業家や学術界の方々とのネットワーク作りを手助けしてくれました。またOISTのおかげで、沖縄県や全国の市場に参入することが可能になりました。」とレヴさんは語っています。

 ハ准副学長は「OISTのキャンパスは珊瑚礁の海に囲まれた亜熱帯雨林の中にあり、仕事をするには最高の場所です。」と付け加えます。

 これら二つのプロジェクトチームは、レジデンシー・プログラムが終了した後も沖縄での活動継続を希望しています。レヴさんは現在、県内の病院で臨床試験を実施する可能性を探っており、EF Polymerは沖縄で研究開発を続けるために国内の投資家とのネットワーク構築を進めています。

I2スタートアップ・アクセラレータプログラムへの申込み

 OISTは毎年、世界中からやる気と才能のある起業家をI2スタートアップ・アクセラレータプログラムとして採択し、リソースやネットワーク、設備を活用して、ここ沖縄でのベンチャー立ち上げを支援しています。OISTは科学技術を通じてイノベーションを推進することで、沖縄の持続可能な経済発展への貢献を目指します

 現在2020年のI2スタートアップ・アクセラレーター・プログラムへの申し込みを受付中です。

 

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