2017-07-13

冬の気温がくちばしの大きさに影響

  チャールズ・ダーウィンは19世紀に生まれて研究を行いましたが、現代の進化生物学者らは、鳥類と進化に関する疑問を解くためのあらゆる研究をし尽くすまでには至りませんでした。例えば、1990年代には米国スミソニアン協会の鳥類学者ラス・グリーンバーグといった研究者らが、気候と鳥のくちばしの進化の関係について新しい疑問を投げかけました。この疑問は、寒冷地に住む恒温動物は温暖な地方に住む動物に比べ、四肢および付属肢が短いという、「アレンの規則」から生まれました。この規則の背景にある生物学的メカニズムは、体温調節です。体表面積が広ければ体温の熱をよりよく発散できる一方、その面積を小さくすることで体温を温存できるというものです。多くの血管が流れ、かつ、羽毛に覆われていない鳥のくちばしは、体温調節に大きな役割を果たします。研究者らは、温暖な気候が鳥のくちばしを大きくし、寒冷な気候が逆にそれを小さくするのかどうかに疑問を持ちました。確かに、これまでの研究では、気候がくちばしの大きさに影響を及ぼすことは示されていましたが、寒冷な気候と温暖な気候のどちらがより大きな影響を与えるのかは明らかになっていませんでした。

  このように過去の研究で明らかにされていない問題について、沖縄科学技術大学院大学(OIST)生物多様性・複雑性研究ユニット研究員のニコラス・ライアン・フリードマン博士は、こうコメントしています。「これらの機能のどちらに選択圧がかかっているのでしょうか。くちばしの小さな鳥が夏の間、暑くなりすぎて死んでしまうのでしょうか。それとも、くちばしの大きな鳥が冬の間、寒さで死んでしまうのでしょうか。」フリードマン博士は、チェコ共和国の研究者らと共同でこの問いへの探求に挑み、最終的に、夏ではなく冬の気候のほうがより影響を与えるという結果に達しました。この研究結果は進化学専門誌Evolutionで発表されました。

  フリードマン博士と研究チームは、オーストラリアにいるミツスイおよび近縁な鳥類のくちばしの大きさの違いを記録することで、この疑問の解明に取り組みました。このグループの鳥がなぜこの研究に適しているのかというと、この鳥の生息する地域が、ニューギニアの熱帯林、中央オーストラリアの乾燥砂漠地帯、そしてタスマニアの温帯な森林など、オーストラリア、ニューギニア、そして南太平洋まで、気候と気温において非常にバラエティのある場所に生息しているからです。これは、野生で異なる条件下に住む同じ種の個体同士の違いを比較することが可能だということです。

  研究者らがオーストラリア国立野生動物コレクションの標本の中から、158種のくちばしのサイズを測定し、気候に対してくちばしの大きさを比較したところ、夏の気温との相関が見られなかったという結果に対し、冬の気温との明らかな相関が見られました。

(上のグラフ)くちばしの大きさと冬の最低気温の関係。冬が寒い場所ではくちばしが小さい傾向がみられる。(下のグラフ)夏の最高気温とくちばしの大きさとの明らかな相関はみられない。

  フリードマン博士と研究チームが、くちばしの大きさに対するこの新しい環境圧(冬の気温)を発表する以前は、くちばしの進化において最も作用を及ぼす要因は採餌の習性だと考えられていました。例えば、1970年代より、ガラパゴス諸島に滞在し、リアルタイムで進化の過程を測定した有名なグラント夫妻(ピーターとローズマリー)は、エサとなる食料の入手状況によってくちばしの大きさが短期間でどのように変化するのかを研究しました。

  「これは興味深い結果です」。フリードマン博士は続けます。「しかしながら、グラント夫妻の研究結果からは、くちばしの進化を引き起こす要因として、採餌効率を向上させるための適応が、何百万年にもわたって、唯一、あるいは最も重要なものなのか、ということはまだ明確ではありません。」

  フリードマン博士らによる本研究でユニークな点は、長いタイムスケールでの進化を垣間見ることができたということです。数多くの鳥類の種を比較することで、とても遠い過去までを調査し、形態進化における冬期の気温の重要性を明らかにする事に成功しました。次なるステップとしては、鳥のくちばしの進化において、採餌効率と冬期の気温、これら2つの要因の関係性をさらに理解することとなります。

北オーストラリアとニューギニア諸島に生息するミツスイの仲間、トサカハゲミツスイ。 写真出典:Flickr、ジム・ベンドン。

ニューギニア山地林に生息するミツスイ 写真出典:Flickr、チャールズ・デイヴィーズ、写真原本からトリミング。

(マックガバン・アン)

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