オピオイドの鎮痛作用を増強し、耐性発現を抑制するペプチド医薬品
取り組んでいる課題
オピオイドは、特に末期がん患者やハイリスク患者に対する臨床的な疼痛管理において不可欠な要素です。しかし、長期にわたるオピオイド治療は、耐性、依存、そして致死的な過剰摂取のリスク増加と関連しており、個人および社会に深刻な影響を及ぼします。米国国立薬物乱用研究所(NIDA)が発表したデータによると、200万人以上のアメリカ人がオピオイドを乱用しており、1日あたり約90人のアメリカ人がオピオイドの過剰摂取により死亡しています。オピオイドローテーションや拮抗薬の使用など、治療の有効性を高め、望ましくない副作用を軽減するための様々な取り組みがなされてきましたが、オピオイドを用いたより優れた、より安全な長期疼痛管理のための信頼性の高い解決策は、いまだ確立されていません。
図 1. 可溶性ペプチド(DpepDM)は、中枢神経系におけるμ−およびδ−オピオイド受容体のヘテロ二量体化を調節することにより、マウスにおけるモルヒネの効力を増強し、長期耐性を抑制する
私たちの解決策
私たちは、鎮痛作用を増強し、長期にわたるオピオイド治療による耐性発現を抑制する一連のペプチド薬を開発しました。これらの短鎖で可溶のペプチドは、原理的にはオピオイド受容体の二量化を調節することで、副作用を抑え鎮痛作用を増強するためのバイアスシグナルを生成します。in vivo試験において、これらのペプチド薬は、モルヒネの短期的な効果を増強し、長期的な耐性の発現を抑制しました。一方で、細胞毒性は極めて低く、モルヒネとの競合結合は示しませんでした。最初は、埋め込み型ミニポンプによりペプチドを放出する概念実証試験を行いました。臨床使用を指向し、血液脳関門透過と分解防止のためにペプチドをさらに改良しました。既存の技術に比べ、私たちが見出したペプチド薬は可溶性で毒性が低く、静脈注射や鼻腔スプレーによる中枢神経系への送達が可能です。この技術は、モルヒネやその他オピオイド使用時の、より効果的で安全な疼痛管理への重要な一歩となると考えられます。
図2. 最適化されたペプチドDpepDM-TATは、静脈内または鼻腔スプレー投与でBBB透過性を示し、100uMの濃度で海馬ニューロンに対して極めて低い細胞毒性を示した