取り組んでいる課題
一見すると、「透明な太陽電池」という概念は矛盾しているように思えます。従来の太陽電池は太陽光を吸収することで発電しますが、透明材料は光をほとんど吸収せずに透過させます。太陽電池が発電するためには光子を吸収する必要がありますが、吸収量が増えると透明性が低下し、用途が制限されます。そのため、可視光の透過性をほとんど損なうことなく、太陽エネルギーを利用することが課題となります。
この課題を克服できれば、透明太陽光発電技術にはさまざまな応用が期待できます。例えば、透明太陽電池モジュールを建物の天窓や車両のサンルーフに組み込むことで、自然光を取り込みながら発電することが可能になります。また、医療用途では、自己給電型の透明バイオセンサーとして、生体と一体化したウェアラブル電子機器によるワイヤレス健康モニタリングへの応用も期待されます。さらに、透明太陽電池パネルを温室の屋根に組み込むことで、作物の成長に必要な光を透過させながら発電することも可能です。
図1. 透明太陽光発電技術の応用例。(a) 建物の天窓、(b) 車両のサンルーフ、(c) 医療用途のバイオセンサーおよびウェアラブル電子機器、(d) 温室屋根を利用したアグリボルタイクス(農業用太陽光発電)。
私たちの解決策
透明太陽電池を設計する一つの方法は、人間の目には見えない紫外線(UV)や近赤外線(NIR)を選択的に吸収しながら、可視光の大部分を透過させることです。この選択的な光吸収は、ペロブスカイト半導体の組成設計によって実現できます。異なる陽イオンと陰イオンの比率を調整することで、ペロブスカイトの光学特性を制御することができます。
さらに、有機分子設計を活用した欠陥パッシベーション、界面エンジニアリング、封止技術を組み合わせることで、太陽電池の効率と安定性の向上を図ります。これにより、既存の建築物や輸送システム、透明電子デバイスの機能性や美観を損なうことなくエネルギーを生み出し、再生可能で持続可能な発電技術のさらなる発展につなげることを目指します。
図2. (a) ペロブスカイト吸収層の光学的透明性。(b) 人工太陽光照射下での光起電力応答の実証。