新たな臨海実験施設「OIST Sea neXus」が完成
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、沖縄県恩納村の瀬良垣漁港内に新たな海洋科学研究・交流拠点「OIST Sea neXus(シー・ネクサス)」を開設しました。本施設は、文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学による産学官連携・共同研究の施設整備事業」の支援を受けて整備されたもので、既存の臨海実験施設「マリン・サイエンス・ステーション」に隣接して建設されました。11月5日に行われた竣工式には、OIST関係者をはじめ、恩納村や地元漁業協同組合、連携機関の代表者などが出席し、新たな研究拠点の誕生を祝いました。
OIST Sea neXusは、海洋研究を核に、研究成果や知識を社会と共有するオープンサイエンス、そして産学官が連携して新たな価値を生み出すオープンイノベーションを推進する拠点として設立されました。科学の知を広く開き、社会とともに未来を創ることを目指しています。今後は、海洋および関連分野における地域・国内・国際的な研究機関、企業、公共機関との共同研究プログラムを段階的に受け入れていく予定です。また、学生やインターン、若手研究者が実践的に学ぶ場として、次世代の海洋科学人材育成にも寄与します。
新施設は、延べ床面積711平方メートルの地上1階建てで、海から直接海水を引き込み、使用することができます。既存のマリン・サイエンス・ステーションの機能を拡張し、より多様で精密な研究を可能にするために、10の独立した実験室があり、それぞれで水温などの環境条件を個別に調整できる設計になっています。これにより、研究者は、自然環境に近い条件下で高度な実験を行うことが可能です。大きな空間を複数の研究者で共有していた既存の施設と比べ、研究内容に応じてより柔軟かつ精密な実験を行うことが可能になりました。サンゴ、魚類、頭足類(イカやタコなど)、微生物生態系、養殖技術、海洋テクノロジーの開発など、幅広い研究テーマに同時に対応できるのが大きな特徴です。
また、地域や産学官の関係者が集い、対話をするためのスペースも併設されており、交流を通じて研究テーマの発展を促進する狙いがあります。このスペースはワークショップやアウトリーチ活動での利用も可能であり、Sea neXusの目的である連携強化の中心となることが期待されています。
OIST学長兼理事長のカリン・マルキデスは、竣工式で次のように述べました。「OIST Sea neXus は、OISTが掲げる『地域と世界、そして科学と社会をつなぐ』という理念を形にしたものです。“nexus”という言葉には『つながり』という意味があります。この施設はそのつながりを象徴しています。世界中の研究者と沖縄の海をつなぐ場所。科学的発見と社会貢献をつなぐ場所。そして現在と未来をつなぐ場所です。ここでは分野を越えて研究者たちが協力し、海への理解をさらに深めていくでしょう。その成果が、沖縄に、そして世界に、確かな恩恵をもたらすことを期待しています。」
施設の責任者である海洋科学セクション リサーチサポートリーダーのシャノン・マクマホン博士は、今後の展望について次のように語りました。「私たちの長期的なビジョンは、Sea neXusを単なる『施設』ではなく、人とアイデア、そして解決策をつなぐ拠点として、沖縄から世界へ広がる協働の中心に育てていくことです。新しい施設は、サンゴ礁の保全、持続可能な資源利用、地域の暮らしの未来など、沖縄にとって重要なテーマにより幅広く取り組む力を与えてくれます。ここから生まれる発見や出会い、そして新たな可能性を心から楽しみにしています。」
OIST Sea neXus ウェブサイト: https://www.oist.jp/ja/research/open-innovation-facilities/sea-nexus