光るセンチネル植物の開発で害虫被害をリアルタイムに検知-食糧問題を見据えて

OISTの研究提案が、2024年度先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)日本-英国共同研究「エンジニアリングバイオロジー」領域に採択されました。

rice field

この度、OISTの進化・合成生物学ユニットを率いるヒョードル・コンドラショヴ教授が代表となって提案した研究課題「農業応用可能なセンチネル植物を作成するためのバイオエンジニアリングプラットフォーム」が、2024年度先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)日本-英国共同研究の、「エンジニアリングバイオロジー」領域に採択されました。OISTの研究課題がASPIREに採択されるのは、これが初めてとなります。

ASPIREは、科学技術振興機構(JST)が、政策上重要な科学技術分野において、日本の研究者による国際共同研究への参画を加速させることを目指すものです。ASPIRE日本-英国共同研究「エンジニアリングバイオロジー領域」では、英国研究技術革新機構(UKRI)傘下のバイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)との合意に基づき、エンジニアリングバイオロジーの基礎と横断的技術に焦点を当て、国際競争力のある日英の共同研究課題の支援を通じて国際的な研究者ネットワークを構築し、今後の活躍が期待される若手研究者の育成を支援するもので、2024年度から2027年度の3年で、最大1.8億円の研究費が支援されます。JSTの発表によると、今回の募集では30件の応募があり、そのうちの5件が採択されました。

コンドラショヴ教授の提案課題「農業応用可能なセンチネル植物を作成するためのバイオエンジニアリングプラットフォーム」は、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン 臨床科学研究所のカレン・サルキシャン名誉上級講師との国際共同研究体制によって実施するものです。OISTからは、植物エピジェネティクスユニットを率いる佐瀬英俊教授も参加します。日英の機械学習、分子エンジニアリング、植物科学といった補完的な専門知識を持つ科学者による学際的な研究チームは農業利用できるセンチネル植物の開発と農場利用を目指します。

世界で食糧不足が問題となる中、バイオエンジニアリング技術による既存の農業形態の改革が期待されていますが、中でも有望な技術の1つは、害虫被害をリアルタイム発光で簡易に検知できるセンチネル植物の利用です。本研究では、植物が害虫や病原体に応答して放出する植物ホルモンを検知する遺伝子(発光レポーター)を持つタバコ、シロイヌナズナに加え、実際の農場で作物被害をリアルタイムで検出可能なイネ、ダイズの開発を行う予定です。

コンドラショヴ教授は、「これらの開発により、植物発光をドローンで検出することで害虫被害をリアルタイムでモニター可能となることが期待されます。また、国内外の研究者を集めた国際会議の開催などにより、さらなる研究ネットワーク拡大を狙います」と研究に期待を込めています。

本プロジェクトに植物のエピジェネティクスの観点から関わる佐瀬教授は、「OISTで初のASPIRE研究に関われることを嬉しく思います。ASPIREの研究者ネットワークが最先端の技術で世界の食料問題に取り組むことにとても興奮しています」と話しています。

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