2021-11-18

沖縄にとってOISTとは?その経済効果をまとめました

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、2021年11月に設立10周年を迎えました。この節目にあたり、学長のピーター・グルース博士が、経済・教育・環境・健康の4つのテーマにおけるOISTと沖縄社会とのつながりについて振り返ります。  

沖縄の人々は、古くから架け橋の役割を担ってきました。歴史的にみても、東アジアにおける拠点として、中国や朝鮮半島、日本などを行き来し、橋渡し役をつとめていました。

2017年にOISTの学長に就任したピーター・グルース博士は、この美しい亜熱帯の島と世界との間に、新しい橋を架けられるよう、沖縄の地元のみなさまと一緒に働きたいと考えています。今後10年間で、沖縄を、科学系スタートアップが起業をするために理想的な場所にして、国内外から起業家を惹きつける構想を描いています。科学技術によるイノベーションを促進することで、持続可能な沖縄経済を生み出したいと考えているのです。

グルース博士は、沖縄県の持続可能な経済創出のためには、科学技術とイノベーションによる起業拠点の形成が鍵となると述べ、次のように続けます。

「現在、沖縄の産業の大部分を占めているのは観光業ですが、今後は、まだ県内にない産業を導入する必要があるでしょう。理系の職種は、観光業や小売業と比べると給与が平均4倍近いと言われています。新たな科学的知見を利用して、科学系の新企業を生み出すことができます。米国では、設立5年未満のスタートアップ企業が、新規雇用の75%を創出しています。」

OIST発のスタートアップ成功例として、「EF ポリマー社」があります。持続可能な農業に関わる同社は、2019年にOISTが沖縄県から支援を受けて立ち上げたスタートアップ・アクセラレーター・プログラムに参加しました。このプログラムでは、参加チームがOISTの資源、人材、設備を活用して、ここ沖縄でベンチャー企業を立ち上げることができます。EF ポリマー社の主な目標は、有機廃棄物から作られたポリマーを水とを結合させて、乾燥した土地を植物の栽培に適した状態に改良することです。現在は沖縄県内の農家と協力し、このポリマーを使用してサトウキビの生産を向上させることができるかどうかを調査しています。2019年には、権威あるグリーンテクノロジーの大会であるクライメート・ローンチパッド(Climate Launchpad)の炭素技術部門で、チャンピオンに選ばれました

OISTでは既に28のスタートアップや企業が活動しており、現在は4つの起業家チームがスタートアップ・アクセラレーター・プログラムに参加しています。近い将来、この数を増やす計画があります。

OISTから生まれる技術を普及させたり、沖縄のスタートアップ企業への投資を拡大するために、OISTは国内外のベンチャーキャピタルや企業パートナーとネットワークを構築しています。その一環として、東京に拠点を置くベンチャーキャピタル兼インキュベーターの「Beyond Next Ventures(ビヨンドネクストベンチャーズ)」と提携を組みました。同社は、プログラムに採択されたスタートアップ企業にたいして、今後2年間で、5億円を目処に資金を提供する予定です。さらには、50億円のチャンチャーキャピタルの確保に向けて交渉を進めています。この規模のベンチャーキャピタルが確保できれば、50社を超えるスタートアップ企業への投資ができると見込まれます。こうしたスタートアップの誘致と支援により、沖縄に高付加価値産業を創出し、多くの雇用を生み大したいと考えています。

OISTと地元沖縄県とのつながりは、これらのスタートアップ企業に対する取り組みだけではありません。海ぶどうもずくクルマエビシークワサーなど、沖縄にとって経済的・文化的に重要な種のゲノム研究も進んでいます。このような取り組みによって、特定の病気に強かったり、生育が早かったり、高温の環境に適した種の系統の特定などにつながる道が開かれ、農業や養殖に役立つ可能性があります。

沖縄の気候に適したアミロモチ品種の米を開発し、地元の農家と協力して栽培している研究チームもいます。このお米には、肥満防止に役立つ特殊なデンプンが含まれています。他にも、OISTの研究者が設計し、実験を行っている排水処理施設があります。これは、沖縄に数多くある養豚場などの排水に関する課題を解決することにつながります。

こうした取り組みはすべて、広く影響をもたらしています。2019年に発表された経済への波及効果に関する調査によると、OISTに対して100円を投資するごとに日本国内で228円の経済効果がもたらされると推定されました。そして、その波及効果のほとんどは沖縄県にもたらされ、投資額100円ごとに163円を生み出すとされています。

グルース博士は最後にこう強調します。「沖縄に拠点を置くことは、OISTのアイデンティティに不可欠な要素であり、地域、日本全国、そして世界に利益をもたらすという責任を果たす意志を持っています。このことは、『沖縄科学技術大学院大学戦略計画要約 2020-2030』でも示されています。私たちは、沖縄でイノベーションを起こすためのパートナーとして選ばれて、触媒としての役割を果たすことによって、経済成長と持続可能な利益を促進し、沖縄から、日本と国際社会にとって重要な問題に対処していきたいと考えています。そのためには、地元沖縄との連携が不可欠で最重要です。」

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(ディッキー・ルシー)

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