沖縄をイメージングの拠点に

最先端機器と知識をそろえ、共同研究に道を拓くイメージングセクション

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)のイメージングセクションは、電子顕微鏡、光学顕微鏡などのイメージング機器と施設を管理運営し、イメージングに関する研究の技術支援を行うセクションです。光子、電子、X線等を使った高性能なイメージング技術で、タンパク質の立体構造を原子レベルの解析から脊椎動物の器官形成に至るまで、様々な研究を支えています。

   国内外の多くの研究機関とは異なり、OISTでは光学顕微鏡と電子顕微鏡が同じ施設に設置されています。これにより、蛍光顕微鏡の特性と電子顕微鏡の極めて高い空間分解能を合わせ、試料準備から合成試料のイメージングまで、様々なテクノロジーの組み合わせが可能になります。

   数々の大学機関における勤務を経て、海外のワークショップでも定期的に講師を務めるブルーノ・ホンベル博士(イメージングセクション リサーチサポートリーダー)は、このように多種多様な最先端の研究機器が一堂に集まる施設は、OIST以外では見たことがないと言います。

リソースについて

   OISTのイメージング施設では、数々の最先端の機器を揃えており、ほとんどの光学顕微鏡法および電子顕微鏡法のアプリケーションに対応することができます。

  光学顕微鏡検査に関しては特に、PALMやSTED、STORMなど既存の技術を使用した、試料の蛍光光学分解能以下の撮像に適した顕微鏡システムがあります。生体試料の動的プロセスの撮像には、高速レーザー共焦点顕微鏡を利用することも可能です。非破壊検査を用いて大型試料を高分解能で撮像する場合は、X線マイクロCTスキャナを使用します。

   生体試料や材料試料の構造解析には、最高水準の空間分解能で撮像が可能な高性能顕微鏡(走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡)を用いることができ、さらには、クライオ電子顕微鏡の三つの異なる機種を利用可能です。その他イメージングセクションでは、集束イオンビーム及びシリアルブロックフェイス走査型電子顕微鏡、高分解能走査型電子顕微鏡、80ピコメートル(8×10-11メートルまたは0.08ナノメートル)の点分解能でプローブを補正できる分析走査型透過電子顕微鏡があります。

     機器の写真と説明はこちらを参照ください。

OISTが所持するクライオ電子顕微鏡の一つTitan Krios

    イメージングセクションでは、クライオ電子顕微鏡を用いた生体分子構造解析などの試料調製に必要な機器も取り揃えています。

   こうした豊富なイメージング機器以上に貴重なのが、スタッフの技術です。イメージングセクションに所属するスタッフは、全員が経験のある科学者であり、多様な分野の経歴と専門性を持ち合わせています。こうしたスタッフの経験や知識により、すべての科学分野にサービスを提供しうる体制を整えています。

   イメージングセクションは、研究機器の保守やユーザー・トレーニングだけでなく、実験のデザインから高度な実験の実施、プロジェクト計画立案、さらには競争的資金の申請支援まで、科学プロジェクトに関する様々な支援を行っています。

(左から)佐々木敏雄、望月俊昭、小泉好司、マルゴジャタ・ホール、菅野亮、渡嘉敷瑞貴、ブルーノ・ホンベル、ゲザ・フレイマン、パウロ・バルザキ、ミシェル・ジェノベッソ、石塚あかり、甲本真也

進行中の共同研究

 OISTイメージングセクションが所持するリソースは沖縄県内及び国内外の研究者たちが利用することができます。県内では、琉球大学の三学部との連携が開始されました。イメージングセクションはまた、OISTプロボストのメアリー・コリンズ博士が率いる新たな共同研究プログラムであるJumps Research Collaboration Program (JUMPS)の後援で、東京大学でのプロジェクトに参加しています。

 またホンベル博士は、学術界におけるOISTの認知度を上げるため、アウトリーチ活動も積極的に行っており、電子顕微鏡の生物応用の分野で、海外の研究機関との国際共同研究ネットワークの構築に重要な役割を果たしています。

 「沖縄は地理的に多くのアジア諸国に近い島です。私の夢はOIST、ひいては沖縄を、アジア・オセアニアの学術界の科学拠点にすることです。」とホンベル博士は語ります。

研修

 イメージングセクションでは積極的にワークショップやトレーニングを開催し、スタッフが持つ専門知識を共有しています。

 ABiS主催の「光学顕微鏡トレーニング研修会」など、顕微鏡法に関するコースを毎年開催しています。ABiSは、文部科学省および日本学術振興会が助成する科学研究費助成事業(科研費)で採択された研究課題を支援する先端バイオイメージング支援プラットフォームです。ABiSは2018年、国際的な顕微鏡法ネットワークであるGlobal BioImagingの正式メンバーとなりました。

 順天堂大学と共催した「徳安法(凍結超薄切片法)・蛍光免疫染色コース」には、本分野の著名な国際的な専門家らが講演者およびインストラクターとして参加し、OIST内部だけでなく、外部からも多数の参加者がありました。

 日本医療研究開発機構(AMED)によって資金提供され たBINDSの一環として「クライオ電子顕微鏡コース」も行なっています。複数の日本の大学や研究機関のBINDSメンバーと共同で行った「クライオ電子顕微鏡コース」。 経験豊富な研究者が、このノーベル賞を受賞した最新技術の概要を説明し、デモンストレーションや実地体験を共有しています。好奇心旺盛な若い科学者が、OISTのクライオ電子顕微鏡を使用して、サンプルの準備、イメージング、データ分析の世界を探索する機会を提供しました。 このプログラムはすでに4つの共同研究プロジェクトに参加する機会も生み出しており、2021年3月まで継続し、外部研究者を支援していきます。

(左から)研修生の石塚あかり、インストラクターのマルゴジャタ・ホール、IMGセクションリーダーのブルーノ・ホンベル、研修生のミシェル・ジェノベッソ、インストラクターの菅野亮、プログラムコーディネーターの渡嘉敷瑞貴

学術界を超えて

 今後は、純粋な科学的発見を目指すという枠を超え、より多くの協力体制を追求していく予定です。 OISTプロボストのメアリー・コリンズ博士は、この素晴らしいリソースを、より多くの業界とのコラボレーションに活用したいと考えており、民間企業、特に地元企業とのパートナーシップの促進に努めています。 現在イメージングセクションでは、地元沖縄の鉄鋼会社と協力し、専門知識と材料工学機器を利用して、多種多様な金属を分析しています。

 また天然素材の評価を目的とした、合成繊維を生産する日本企業とのプロジェクトにも取り組んでいます。

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