環境変化に反応し進化を続ける鳥たち

鳥のくちばしのもつ様々な機能とその進化の関係性を示しました

  オオハシからハチドリまで、鳥が様々な形状やサイズのくちばしをもっているのは、鳥が進化していることを如実に物語っています。

   くちばしは、鳥にとって、餌を食べたり、体温を調節したり、さえずることを可能にしていますが、鳥が生存するために必要なこうした機能は、くちばしの長さや大きさを決定することに関わってきます。従来のほとんどの進化研究は、くちばしが複雑なものであるのにもかからず、複合的機能がくちばしの形にどのように影響するかよりも、体温調節のような単一の機能の部分にもっぱら焦点を当ててきました。

   この度、OIST生物多様性・複雑性研究ユニットの研究者らは、チェコ共和国の研究所との共同研究で、行動観察、形態学的測定、数学的分析を用い、くちばしの形は多くの機能との妥協の副産物であることを発見しました。すなわち、くちばしは、進化で起こっている微細な変化について貴重な洞察を提供してくれるのです。

   加えてくちばしの形態は、鳥の鳴き声に影響を与え、結果として交尾やコミュニケーションに影響を与えます。Proceedings of the Royal Society B 誌に掲載された本研究は、鳥類がどのように都市化の進行と気候変動に対応し、現在進行中で進化しているかを明らかにしてくれるでしょう。

環境への適応

    「生物学において、アレンの法則と呼ばれる理論が広く知られています。暑い地域では四肢が長く、寒い地域では四肢が短い動物がよく見られます。また大きなくちばしを持つ鳥は熱帯に、小さなくちばしを持つ鳥は寒冷地に生息する傾向があります。」と、生物多様性・生物複雑性ユニットのポスドク研究員、ニコラス・フリードマン博士は言います。

   アレンの法則が本当かどうかを確認するため、フリードマン博士らはオーストラリア産ミツスイの多様な種が耐えうる平均の冬の最低気温と夏の最高気温を測定しました。ミツスイはオーストラリア全土で形態的にも地理的にも多様であり、数も多いことから、ミツスイを研究することにしたのです。

   また、採餌行動との関連におけるくちばしの進化を研究しました。ここでは、エリオット・ミラー博士らによる、オーストラリア全土に分布する74種のオーストラリア・ミツスイの採餌行動の1万回に及ぶ野外観察の研究結果を用いました。 

   フリードマン博士はまた、ロンドンの自然史博物館で525羽の鳥の標本の写真を撮影し、くちばしの形態を詳細に研究するため、OISTに戻って画像をデジタル化しました。

      さらには、何百もの鳥の鳴き声を聞き、周波数と速度を測定しました。

ミミジロコバシミツスイのさえずりを示すスペクトログラム。

    データを利用して、くちばしの湾曲と深さなどのさまざまな機能に、食べた蜜や、夏と冬の気温などをマッピングしました。

進化についてのさらなる理解に向けて

    分析を進めると、採餌生態はくちばしの形が曲線か直線かという大きな影響を与え、気候もくちばしのサイズに多大な影響を与えることがわかりました。くちばしの形とサイズは、鳥のさえずり声にも影響します。大きなくちばしはゆったりとした、より深いさえずりにつながります。

   「本論文では、くちばしを介したさえずり行動の3つ、すなわち、温度調節、アレンの法則、採餌行動を関連づけました。そうすることにより、鳥のくちばしが交尾やコミュニケーション行動にどのように影響するかをさらに理解できるのです。」と、フリードマン博士は説明しています。

   本研究結果は、未来にも重要な意味を持つでしょう。博士は、人類が環境に多大な影響を及ぼしている近年において、動物が気候変動や都市化に呼応してどのように進化しているのか研究を進めたいと考えています。

 「騒音公害に反応して鳥の鳴き声が変化することをすでに観察しています。また、気候によって、くちばしのサイズや体の大きさが変化するのも認めてきました。鳥は気候変動に反応し、今も着実に進化しているのです。」と、フリードマン博士はコメントしています。

フィールドワークをしている生物多様性・生物複雑性ユニット研究員、ニコラス・フリードマン博士

ヘッダー写真: © Hayley Alexander, Macaulay Library

 

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