沖縄全島をフィールドに、24時間365日の環境モニタリング
雨の日も、風の日も。沖縄本島の各地で、その場所の自然を24時間365日モニタリング。「OKEON美ら森プロジェクト」と名付けられたプロジェクトは、沖縄の生物多様性をリアルタイムで記録し、研究者へ貴重なデータを提供するとともに、地域や教育機関との連携にも力を注いでいます。
このポッドキャストでは、プロジェクトの現場を支える3名のスタッフが、沖縄県で活躍するDJのナガハマヒロキさんのインタビューに応え、プロジェクトと未来への思いを語ります。
地球温暖化や生物多様性の喪失といったグローバルな課題が、沖縄にどのような影響を与えているのでしょうか。
その答えを探るために、沖縄本島全域24地点に設置されたモニタリングサイト「OKEON美ら森プロジェクト」です。
このプロジェクトを進めているのは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)Core Facilities 環境科学・インフォマティクスセクション。
プロジェクトは2015年にスタートし、現在も継続してデータ収集を行っています。
同セクションのリサーチサポートスペシャリスト・小笠原昌子さんは、沖縄の生物多様性の高さについて次のように語ります。「日本国内で確認されているアリの種は約300種ですが、そのうちの150種、つまり半数が沖縄に生息しているんです。」
沖縄の自然は、国内外の研究者にとっても注目のフィールド。プロジェクトの目的は、こうしたデータを活用して世界水準の研究を進めると同時に、地域社会とも連携して地域に還元していくことにあります。
もう一人のリサーチサポートスペシャリスト・諏訪部真友子さんは、このプロジェクトの独自性を次のように説明します。「やんばるのような森林地域だけでなく、都市部や農地などさまざまな環境でモニタリングを行っているため、沖縄本島そのものが研究モデルとして活用できます。」
得られたデータは、気候変動などのグローバルな環境課題を地域スケールで捉えるための重要な手がかりにもなっています。
フィールドでのモニタリングを支えるのが、リサーチサポートテクニシャンの金城利寛さんです。収集しているデータの内容について、こう語ります。「テント型トラップで採集した昆虫、ボイスレコーダーで録音した自然音、設置カメラで記録された動画、気象データなど、多様な視点から自然環境をとらえています。」
これまでに蓄積されたデータは、さまざまな研究や社会的対応にも活用されてきました。たとえば、台風などの極端気象時に、自然音の変化から環境への影響を探る研究、ヒアリなど有害外来種への対策、野生イノシシの分布を動画記録から特定し、豚熱(CSF)対策などです。
また、地域社会との連携の一環として、タイの高校と沖縄県立球陽高等学校の生徒たちによる環境教育プログラムを積極的に支援しています。プロジェクトメンバーは高校生たちにアリの調査・研究手法を指導し、研究力の向上、そして国際理解教育の一助ともなっています。
小笠原さんは、「どんなに小さなことでも、このプロジェクトのネットワークを活用して成果を得てほしい」と語ります。
そして、沖縄県出身の金城さんは、次のように締めくくりました。「この美しい島の多様な自然を未来へ残していくためには、モニタリングを継続していくことが、問題に正しく対処していくために大切だと思っています。」
本インタビューは、2025年3月に収録されました。
OKEON美ら森プロジェクトが目指す、リアルタイムモニタリングによる環境資源の保全と活用の姿を、ぜひポッドキャストでお聞きください。
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このポッドキャストは、科学技術振興機構(JST)「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の支援を受けて実施しました。
OIST COI-NEXT グローバル・バイオコンバージェンスイノベーション拠点紹介のウェブサイト(英語のみ)
共創の場形成支援プログラム COI-NEXTについて(外部リンク)