ボソンでもフェルミオンでもない粒子エニオンが1次元にも存在

1次元エニオンの理論的性質を初めて体系的に記述し、実験装置でそれらを観測するための“レシピ” を提示しました。

物理学者は長年にわたり、3次元宇宙に存在するあらゆる粒子を「ボソン」または「フェルミオン」のいずれかに分類してきました。ボソンには、光子のように力を媒介する粒子が主に含まれ、フェルミオンには電子や陽子、中性子など、私たちの身の回りの物質を形作る粒子が含まれます。

ところが、空間の次元が低くなると、この明確な分類は崩れ始めます。1970年代以来、ボソンとフェルミオンの中間的な性質をもつ第3の分類として、「エニオン(anyon)」と呼ばれる粒子の存在が理論的に予測されてきました。2020年には、超低温かつ強磁場下に置かれた原子一層分、すなわち2次元の半導体界面において、これらの粒子が実験的に観測されました。そして今回、科学誌『Physical Review A』に掲載された2本の共同論文において、沖縄科学技術大学院大学(OIST)とオクラホマ大学の研究チームは、エニオンが存在し得る1次元系を明らかにし、その理論的性質を詳しく探究しました。

近年、極低温原子系において単一粒子を精密に制御する実験技術が大きく進展しています。こうした技術的背景のもとで、本研究は、現実的な実験環境において制御可能なエニオンの基礎物理を探究するための土台を整えました。「宇宙に存在するあらゆる粒子は、厳密に二つのカテゴリー、すなわちボソンかフェルミオンのいずれかに分類されてきました。では、なぜそれ以外の存在がないのでしょうか?」と、OIST量子システム研究ユニットを率いるトーマス・ブッシュ教授は問い掛けます。「本研究によって、量子世界の根本的性質に対する理解を深める新たな道が開かれました。理論物理学と実験物理学の両面で、今後どのような展開が生まれるのか、非常に楽しみです。」

ボソン/フェルミオンの二項分類を打破する

この基本的な分類は、同一の二つの粒子が互いに入れ替わったときに、系がどのように振る舞うかに基づいています。実験的観測によれば、3次元空間では、この二項分類は厳密に成り立ちます。すなわち、入れ替わっても状態がまったく変わらないボソンの場合と、系の状態が反転するフェルミオンの場合のいずれかであり、それ以外の可能性は存在しないように見えます。

この二項分類は、量子物理学における「不可識別性」という核心原理から生じています。古典物理学では、同一の二つのビー玉を赤と青に塗れば、位置が入れ替わっても区別できます。しかし量子レベルでは、同一の粒子(例えば電子)を赤や青に塗ることはできません。量子特性が同一であれば、それらを区別することは原理的に不可能なのです。したがって位置が入れ替わっても、新たな配置は物理的に区別できません。そして物理状態は同一でなければならず、この二粒子からなる系の測定可能な性質は変化しません。OIST量子システム研究ユニットに所属する博士課程学生のラウル・イダルゴ・サコトさんは次のように説明します。「この交換は“何もしないこと”と等価であるため、交換を記述する量である交換因子(exchange factor)は、単純な規則に従います。すなわち、交換因子の2乗は1でなければなりません。この条件を満たす値は+1と−1のみです。したがって、すべての粒子は、交換因子が+1のボソン、もしくは−1のフェルミオンに分類されます。」

この分類は、粒子の物理的な振る舞いに明確な違いをもたらします。ボソンは、集団的に振る舞う傾向があります。例えばレーザーでは、同じ波長(色)をもつ光子が足並みをそろえて振る舞い、ボース・アインシュタイン凝縮体では、極低温に冷却された原子が同一の量子状態を取ります。一方、フェルミオンは非社交的で同一の量子状態を共有できません。電子や陽子、中性子といったフェルミオンは互いに同じ状態に存在できず、この性質が、原子の構造や元素周期表が多様な元素から成り立っている理由の一つとなっています。

3次元空間に2種類の粒子しか存在し得ないのであれば、なぜ低次元ではより多様な粒子が存在できるのでしょうか。その理由は、低次元では粒子が互いに回り込んで動く自由度が限られており、経路が交差するとき――つまり位置が入れ替わる際――その交換が時空間の中で絡み合うためです。粒子の経路はもはや解きほぐせなくなります。その結果、入れ替え後の状態は入れ替え前の状態と物理的に区別できるようになります。イダルゴ・サコトさんは続けます。「低次元では、この交換はもはや”何もしないこと”とトポロジー的に同値ではありません。不可識別性の原理を満たすためには、経路のねじれ方に応じて、連続的な値をとる交換因子が必要です。」

したがって、交換因子が+1や−1に限られない粒子を含む、新たな粒子の分類が存在し得ます。それがエニオン(any〔どんな〕+ -on〔粒子名に付く接尾辞〕)であり、ボソンでもフェルミオンでもない粒子の総称です。 

制御可能なエニオンの創出法

イダルゴ・サコトさんらは、今回発表した研究において、1次元空間においてもボソン/フェルミオンという二項分類が成り立たないこと、さらに交換因子を直接制御できるという興味深い結果を示しました。1次元では、粒子は互いを迂回して位置を入れ替えることができず、代わりに相手をすり抜ける必要があります。このため、交換因子は高次元の場合とは本質的に異なる性質を持ちます。実際、論文では、この交換因子が粒子間の短距離相互作用の強さと結び付いていることが示されています。実験的には、こうした特性により、交換統計を精密に制御することが可能となり、今後、多くの興味深い実験や新たな問いを生み出すことが期待されます。ブッシュ教授は次のように総括しています。「私たちは、1次元エニオンが存在し得ることを示しただけでなく、その交換統計をどのようにマッピング(写像)できるかを明らかにし、さらに運動量分布を通じてその性質を観測可能であることも示しました。これらの観測に必要な実験装置は、すでに研究室に整っています。この分野で今後どのような発見が生まれ、宇宙の基礎物理について何を教えてくれるのか、非常に楽しみです。」

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