19名の修了生の門出を祝福 2022年 OIST学位記授与式

「新たな知を創造して人類に貢献することが最も重要である」との言葉を受けて巣立つ修了生たち

OIST celebrates 19 graduates in 2022 graduation ceremony

2022年5月20日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)設立10周年の祝賀行事の一環として、第4回学位記授与式が開催されました。今年は、合計19名の修了生を輩出しました。

式典は、琉球舞踊とOISTの三線同好会「ちんだみ」による演奏で幕を開けました。演奏には、在学中に同好会に所属していた修了生のアイバン・ンボゴ博士とポー シュン 「ボブ」チャン博士も加わりました。

開式の挨拶の中で、ピーター・グルース学長は、修了生たちのパイオニア精神を称えました。なぜなら彼らは、研究キャリアの第一歩を踏み出す場として、100年を越す歴史と実績を持つ大学を志望する方が安全な道であるにもかかわらず、歴史が浅く、異色の大学院であるOISTを選択するというリスクを伴う決断をしたからです。実際、今年の修了生の多くがOISTで学び始めた2016年時点では、OISTを修了した先輩はまだ1学年しかいませんでした。「皆さんは、『沖縄で科学、教育、イノベーションの分野において世界をリードする国際的な大学』というOISTのビジョンを信頼してくれました。」

Dr. Peter Gruss welcoming the graduates and OIST community to the 2022 graduation ceremony.
2022年学位記授与式にて挨拶を述べるピーター・グルース学長
2022年学位記授与式にて挨拶を述べるピーター・グルース学長

さらにグルース学長は、修了生たちがOIST在学中に、新型コロナウイルス感染症の拡大や、世界経済の変動、国際紛争など、通常とは異なる時期に直面したことに触れ、次のように述べました。「このように非常に困難な時期がありましたが、それにもかかわらず、皆さんはやるべきことをやり遂げました。粘り強く、前に向かって突き進んだのです。」

結びに、グルース学長は、日本政府と沖縄県の継続的な資金援助と支援に感謝の意を表しました。続いて、内閣府と沖縄県の代表より、修了生に祝辞が贈られました。

らに、OIST理事会副議長であるジェームス比嘉氏が祝辞を述べ、自身の半生について語り、修了生や聴衆に対して助言を述べました。沖縄出身の両親のもとに米国で生まれた比嘉氏は、沖縄と米国を何度も行き来し、スタンフォード大学で学士号を取得しました。

Mr. James Higa gave the commencement speech at the 2022 graduation ceremony.
2022年学位記授与式にて祝辞を述べるジェームス比嘉氏。
2022年学位記授与式にて祝辞を述べるジェームス比嘉氏。

「週末になると、このすぐ近くでシュノーケリングや海水浴をしていたことをよく思い出します。ここは私にとって、とても思い入れのある場所です。」

スタンフォード大学を卒業後、比嘉氏はアップル社に入社しました。そして、スティーブ・ジョブズの傍らで共に歩み、テクノロジー業界を根本から変えた約30年の道のりは、長く素晴らしいものであったと強調しました。

「iPhone、iPad、iPodと、『i』のつく製品には、すべて 『私』自身が少し関わっています。『シリコンバレー』が本当に意味するものは、場所でも地理でも、位置でもなく、人です。シリコンバレーは最も競争が激しい場所でしたが、私たちはさらにそれを高めました。皆さんも、何をするにも、メジャーリーグを目指すべきです。」

祝辞の中で、比嘉氏は自身の両親への感謝も述べました。比嘉氏の両親は、戦前に台湾に移住したり、山中や洞窟に身を潜めた後に米軍に投降するなどして、沖縄戦を生き延びたそうです。

「第二次世界大戦が終結した後、私の両親は、何をしたでしょうか。海外に留学し、敵国の中に飛び込んだのです。新しい人生を切り拓くために、一歩踏み出すことを選択したのです。破壊するより創造する方がいい、憎むより愛する方がいい。新たな知の創造は、私たちが人類のためにできる最も重要なことなのです。」

続いて、オーストリアの著名な量子物理学者であるアントン・ツァイリンガー博士への名誉学位授与が行われました。シーレ・ニコーマック教授が、自身の指導教員であった博士を紹介し、博士はビデオ通話を通して修了生へ次のように励ましの言葉をかけました。「自分の鼻に従ってください。興味のあることに取り組んで下さい。周りに『そんなことはもう分かりきっている』と言われても、気にしないでください」と述べました。

続いて、学位記授与が行われました。各指導教員が修了生を紹介し、それぞれの功績について短いスピーチを述べました。修了生一人ひとりに修了証書と沖縄の織物にOISTカラーである赤、白、黒をあしらったフードが贈られました。フードは、読谷山花織事業協同組合「読谷山花織」の我喜屋美小枝さんが地元の手染めの施された綿糸を使用して手織りで製作したものです。

2022年ピーター・グルース最優秀博士論文賞は、進化ゲノミクスユニットで研究したジギャーサ・アロラ博士に贈られました。アロラ博士の研究は、論文発表、助成金による評価、社会への貢献などにおいて優れた成果を挙げたことが評価されました。また、海洋生態物理学ユニットで研究したポー シュン 「ボブ」チャン博士と量子システム研究ユニットで研究したセイエデ・サハール・セイエド・ヘジャジ博士(2021年に卒業)の二人も特別賞を受賞しました。

修了生代表答辞は、生物多様性・生体複雑性ユニットで博士課程を修了した鈴木裕香博士が述べました。鈴木博士は、OISTが他の大学とは異なり刺激的に見えたため、その博士課程への進学を決心したと述べ、OISTでの研究生活と地域活動を通じて成長することができたと振り返りました。

Dr. Yuka Suzuki gave the graduating student speech where she thanked her friends, lab members, supervisor, family, and OIST staff for all the support.
答辞の中で、友人や研究室の仲間、指導教員、家族、OISTのスタッフの支援に対して感謝の意を述べる修了生代表の鈴木裕香博士。
答辞の中で、友人や研究室の仲間、指導教員、家族、OISTのスタッフの支援に対して感謝の意を述べる修了生代表の鈴木裕香博士。

そして、次のように続けました。「友人、研究室の仲間、指導教員、家族、そしてOISTのスタッフの皆さんに感謝したいと思います。特に、OISTの博士課程プログラム、指導教官、そして両親に対して、そのご指導と、自分の興味や直感にしたがって研究する自由を与えてくださったことに、感謝しています。また、人生の良い面と悪い面を友人と共有できる自由があったことにも感謝しています。」

19名の修了生の多くは、現在、沖縄を離れ、ヨーロッパ、北米、日本本土に移り、研究や産業界において活躍の場を得ています。OISTは、修了生のネットワークが広がり、彼らの今後の活躍を耳にすることを楽しみにしています。

学位記授与式のその他の写真は、フリッカーのアルバム「学位記授与式」にてご覧いただけます。

 

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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