知的クラスター形成に向けて実施される研究事業のテーマが発表されました

    21世紀の沖縄を県民を挙げて考えようと、沖縄県は「沖縄21世紀ビジョン」という、20年先のあるべき姿を描いた構想を掲げています。この構想では、自立的発展の実現に向けた具体的な戦略の一つとして、OISTを中心とした「知的・産業クラスター」の形成を進めることが盛り込まれています。

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    知的・産業クラスターは、大学をはじめとした研究機関が核となって、他の大学・研究機関や、企業などが集積し構成されるものです。クラスター内では高度な知識、設備、人材が共有され、関係機関との間に築かれたネットーワークの下で図られる緊密なコミュニケーションを通して、世界レベルの技術革新や、新たな地域産業の創造、地域経済の活性化が可能になります。

    今年7月、沖縄県は知的クラスター形成に向けて共同研究を支援する事業(知的クラスター形成に向けた研究拠点構築事業)について、本年度、新たに2つの研究を採択することとし、その概要を発表しました。これら2つの研究には、沖縄県から研究費が交付され、3年間に渡って実施されます。研究テーマは次のとおりです。

1. 「健康長寿改善の技術開発のための、有効成分の経皮吸収等の新手法を利用したメタボロミックな基盤的研究」
医療・健康の分野では、OISTの柳田充弘代表研究者がプロジェクトリーダーとなって、健康長寿に向けた研究が進められます。本研究には、琉球大学や京都大学なども参加し、メタボロームという最先端の解析技術に基づいて、健康疾病治療への有効成分を含む沖縄県の産物等の探索や、それらの成分を皮膚から体内へ取り込む方法の基盤的研究が行われます。また、DNA解析を行うことにより、沖縄県に長寿者が多い原因を解明するための基盤的研究も実施されます。

2. 「沖縄生物資源を活用したオンサイト環境浄化及びオイル等高付加価値産物の生産に関する研究開発」
環境・エネルギーの分野では、OISTの佐藤矩行代表研究者が主要研究員として参加します。本研究には、県内のベンチャー企業であるオーピーバイオファクトリーや琉球大学などが参加し、沖縄県産の微生物や微細藻類資源を用いて、環境へ排出されている様々なマイナス要因を軽減する方法の技術開発や、それらのマイナス要因を栄養塩としてオイル等の価値の高い成分を生産する微生物の株­の探索などが実施されます。

    これら2つの研究によって生まれた成果は、沖縄発の産業の創出を目指し、事業化が検討されます。この知的クラスター形成事業は、OISTが設立目的として掲げる「沖縄の自立的発展と世界の科学技術の向上に寄与すること」にもつながる、大変意義のあるプロジェクトです。本プロジェクトを通じて促進される、OISTと他大学や産業界とのコラボレーションに注目です。また、そうしたコラボレーションから生まれる新たな技術革新や、沖縄に根差した地域産業の更なる発展が期待されます。

    なお、OISTは、昨年10月に「沖縄における知的・産業クラスターの形成を目指して」と題する国際シンポジウム・ワークショップを開催しました。この公開シンポジウムには、内外の学会、産業界、公的機関等から170名を超える方々がご来場し、クラスター形成におけるOISTが果たすべき役割などが模索されました。また、シンポジウムに続いて開催されたワークショップでは、経済や研究開発に関係する分野から、国際色豊かな33名の専門家の参加を得て、様々な討論が行われました。 当シンポジウムについての詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

(我喜屋 久)

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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