沖縄科学技術大学院大学(OIST)ソニックラボは、2025年9月1日より、新たな展示・実験 「自然の共鳴、都市の残響 (Nature Resonance, Urban Echoes)」 を開催いたします。
本展は、私たちが日常的に触れている「音の風景(サウンドスケープ)」に着目し、都市と自然という対照的な音環境が、人間の心理や行動にどのような影響を与えるのかを探求する没入型の音響体験です。最先端の立体音響技術と視覚効果を組み合わせ、来場者一人ひとりが自身の感覚と身体を通して、音の奥深い世界を発見する機会を創出します。
研究の目的とコンセプト
普段、私たちは環境音を意識することは少ないかもしれません。しかし、その音は視覚情報と同じ、あるいはそれ以上に私たちの心と身体に影響を与えています。特に、豊かな自然音と人工的な都市音のコントラストが際立つ沖縄において、このテーマを探求することは大きな意味を持ちます。
本プロジェクトは、単に「自然の音は心地よく、都市の音は不快」といった単純な二元論に疑問を投げかけます。都市の喧騒の中にも活気や安心感を見出すことがあり、逆に雄大な自然音に畏怖や孤独を感じることもあります。
私たちは、音の物理的な特性だけでなく、個人の経験や文化的背景によって形作られる音の「意味性」と、それが引き起こす多様な心理的反応(安心、ストレス、高揚、静寂など)に焦点を当てます。本展では、この音と映像の「一貫性」を意図的に操作することで、情報が知覚に与える影響を深く探ります。
展示で感じてほしいこと:あなた自身の感覚で探る音の世界
この展示は、静かに鑑賞するだけのものではありません。来場者自身の感覚が主役となる、体験的な実験空間です。
- 全身で感じる、リアルなサウンドスケープ
マルチスピーカーによる最先端の3Dオーディオシステムが、まるでその場にいるかのような、リアルな都市と自然の空間音響を再現します。音に連動する没入型の映像と共に、音の世界に深くダイブしてください。 - 音が生み出す、無意識の行動変化
本展示は、公共空間を用いた実験でもあります。私たちはプライバシーに配慮した形でトンネルを通る人々の行動変化を記録・分析し、音と情景が我々の行動や認識にどのように影響を与えるかを検証します。この分析を通じて、より良い公共空間のための設計指針を見つけ出すことが目的です。 - 音と感情の、新たな発見
固定観念を一度リセットし、自分自身の「感覚」に耳を澄ませてみましょう。都市の音に意外な心地よさを感じたり、自然の音に新たな感情を発見したり。この体験は、音とあなたの感情の繋がりを再発見する、またとない機会となるはずです。
開催概要
- 展示・実験名: 自然の共鳴、都市の残響 (Nature Resonance, Urban Echoes)
- 期間: 2025年9月1日~9月28日 | 9:00 - 17:00
- 場所: 沖縄科学技術大学院大学(OIST) トンネルギャラリー
- 予約不要 入場無料
- 問い合わせ先: culture@oist.jp
クレジット
本プロジェクトは、サウンド、ビジュアル、認知科学、エンジニアリングなど、様々な分野の専門家によって推進されています。
- Shunichi Kasahara (OIST, SonyCSL): Research and Direction
- Nick Luscombe (OIST): Artistic Direction and Sound Design
- Santa Naruse (SonyCSL): Content direction, Visual and System
- Junichi Shimizu (Sony): Spatial Sound Design and System
- Yuta Kawamoto (UTokyo): Behavior Analysis
- Sotaro Taniguchi (Waseda Univ.): Cognitive science research
- Katsumi Watanabe (Waseda Univ.): Cognitive science research
この展示システムは、ソニーの立体音響技術と寺坂波操株式会社が開発したサウンドエンジンを組み合わせた音のXR体験によって動作しています