医療から農業・水産養殖に至るまで、バクテリオファージは世界的なインパクトをもたらす可能性を秘めています。細菌細胞のみを標的とするウイルスであることから、拡大する抗生物質耐性問題を克服する代替手段として期待が高まっています。しかし、ファージのサイズや複雑な構造、さらに特異的な増殖条件が研究を難しくし、この分野の進展を妨げてきました。
マティアス・ウォルフ教授が率いる生体分子電子顕微鏡解析ユニットは、特定のバクテリオファージの完全な構造を分子レベルで解明することで、この研究分野の発展に寄与しています。研究チームが得た新たな構造的知見は、生物学的理解と組み合わせることで、合理的なファージ設計を可能にし、細菌性疾患の治療法を変革する可能性があります。
トンネルギャラリーの動画では、植物病原菌 Pectobacterium atrosepticum に感染することで知られるバクテリオファージ φTE の完全な原子モデルをご覧いただけます。クライオ電子顕微鏡法(cryo-EM)を用いることで、このバクテリオファージをこれまでにない高解像度で可視化することに成功し、その機能メカニズムに関する新たな知見が得られています。
Hodgkinson-Bean, J., Ayala, R., Jayawardena, N. et al. Global structural survey of the flagellotropic myophage φTE infecting agricultural pathogen Pectobacterium atrosepticum. Nat Commun 16, 3257 (2025). https://www.nature.com/articles/s41467-025-58514-x#Sec16