2022-01-14

「社会性を持つゴキブリ」シロアリの進化について有力仮説覆す

本研究のポイント

  • シロアリは社会性を持つゴキブリで、約1億5千万年〜1億7千万年前に、姉妹群であるゴキブリから分岐したと考えられている。
  • これまでは、シロアリは分岐後から現在に至るまで徐々に小型化しているという未検証の説が有力であった。
  • 小型化した昆虫は、より複雑な社会を形成できると考えられているため、社会性昆虫であるシロアリが徐々に小型化しているという説は、理にかなっていた。
  • しかし研究チームは、1500以上のシロアリの現生種および化石種の総合解析を行い、この説が裏付けられないことを発見した。
  • 代わりに本研究で行った解析では、系統によって種間に非常に大きなばらつきや変動が見られるということが明らかになり、シロアリの社会性の進化を研究するための強固な基盤となった。

プレスリリース

この度、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、1500種以上のシロアリの頭幅の総合解析を完了し、シロアリが地質学的タイムスケールで徐々に小型化しているわけではないこと断定しました。

シロアリは、進化系統樹においてゴキブリの枝に属しており、約1億5千万〜1億7千万年前のジュラ紀の終わりに、姉妹群であるゴキブリから分岐しました。有力説では、シロアリは分岐後から現在に至るまで徐々に小型化し続けていると言われていました。しかし、この度英国王立協会紀要Proceedings of the Royal Society Bに掲載された研究では、シロアリは2,000万年の間に急速に小型化し、その後、大きさが安定したという結論に至りました。OISTの進化ゲノミクスユニットの研究チームは、化石種を研究対象に含めたことで従来説と異なる結果につながったと主張しています。

シロアリはゴキブリの一種で、約1億5,000万~1億7,000万年前に姉妹群のゴキブリから分岐したとされる。従来の研究では、シロアリは分岐後、徐々に小型化していったと考えられていたが、今回の研究では、この説は裏付けられなかった。

同ユニットのリサーチフェローである水元惟暁博士は、もともとシロアリの行動を研究するために沖縄に移りました。「世界中のさまざまな種類のシロアリの行動を比較したいと思い、いろいろな場所に行ってシロアリを採集するつもりでした。」

しかし、新型コロナウイルス感染症とそれに伴う渡航制限により、その計画は頓挫してしまいました。そのため水元博士は、沖縄県外に渡航せずにできる研究として、シロアリの体サイズの進化に目を向けました。

頭幅に代表されるシロアリの体サイズは、過去100年間、分類学者によって総合的に測定が行われてきました。これまでシロアリの個体をカタログ化する際には、体重とは異なり標本の保管方法に影響を受けずに測定値が安定している頭幅が測定されていました。

ゴキブリ目の現生種では、シロアリ以外の種がシロアリよりも大型であることから、シロアリは分岐後に小型化したという説がこれまで提唱されてきました。昆虫の体の大きさは、その社会の複雑性と相関していると考えられています。つまり、昆虫が小型であるほどより多くの個体が空間に収まることを意味します。個体数が多いほど役割分担が可能となり、働きアリや兵隊アリなどのさまざまな階級が生まれます。シロアリは社会性を持つゴキブリであるため、この説は理にかなっていましたが、これまでしっかりと検証されたことはありませんでした。

水元博士は、次のように説明しています。「この説は、現生種だけを研究対象とするとある程度裏付けられていましたが、化石種を含めると、崩れてしまいました。1億年前に生きていた化石種の中には、すでにかなり小型のものもありました。私たちが知る限り、これまでに存在した最小の種は、約5,000万年前に存在した化石種でした。」

水元博士は次のように続けます。「しかも、シロアリのすべての現生種の祖先の頭幅は約2ミリメートルと推定されました。この大きさはおよそ8割の現生種よりも大型であることは事実ですが、それでも現生種の範囲内に十分収まっています。」

シロアリは、全部で3000あまりが学術的に記載されています。本研究は、その半数近くを調査した確固としたものとなりました。今回調べた種のうち1562種は現生種で、76種は化石種であり、最古の種は約1億3,000万年前に生存していたものでした。頭幅は、最も小型のものでおよそ0.5ミリメートル、最も大型のものでおよそ5ミリメートルでした。

シロアリの大型種と小型種

水元博士は、「今回の解析で、種間で非常に大きなばらつきがあることがわかりました。これには大きな変動も含まれ、小型化している種もあれば、逆に大型化している種もあり、系統によって異なります。今回の研究は、このような比較を始め、シロアリの社会性の進化について学ぶための非常に良い基盤となります」と結論づけています。

研究チームは、社会性昆虫における社会性の進化に注目した研究は数多くあるものの、その多くはスズメバチ、アリ、ハチに焦点を当てたものであると指摘します。実際、それらの研究に対してシロアリに関する研究は少数です。

OIST進化ゲノミクスユニットを率い、論文の最終著者でもあるトマ・ブーギニョン准教授は、次のように説明しています。「シロアリを総合的に捉えることは非常に重要です。ほとんどのシロアリ研究は、害虫としてよく知られる数種にのみ焦点を当てたものです。今回の研究は、シロアリに対する理解を多角化するものです。」

発表論文詳細

(ディッキー・ルシー)

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