2017-07-11

OISTダイビング事故:今後の歩みについて

 OIST職員のダイバーが行方不明になるという悲劇的なダイビング事故から8カ月近くが経ちました。事故当日以来、OIST研究担当ディーンであるメアリー・コリンズ博士が調整役となり、学内外の多くの関係者による、徹底した検証作業が行われてまいりました。検証作業の目的は、事故の背景を理解した上で、今後二度とこのような事故が起こらないようにするため、OISTがどのように安全衛生上の手順を踏むべきかを理解するためのものでした。

 今般、すべての検証作業が完了しました。

 この8カ月間に行われてき活動は以下の通りです。

 沖縄労働基準監督署による調査が2017年3月に完了し、OISTに対し、安全衛生手順の改善をするように勧告と指導項目が提示されました。OISTは、勧告と指導項目に対応する改善策を提出し、労働基準監督署の了承を得ました。

 2017年1月、OISTは潜水および安全衛生に関する専門家で構成された、完全に独立した外部調査委員会を発足しました。同委員会は、2017年5月、OIST学長に対して報告書を提出しました。

 OISTは、事故発生当初から鈴木氏のご家族と密に連絡を取り、ご家族のご意向を最優先に考えて活動して参りました。

 名護海上保安署による事故に関する検証作業も進められ、OIST側では外部調査委員会の提出した報告書の共有も行いました。

 OISTの人事ディビジョンでは、今回の事故に関連する不備があったことを踏まえ、事故に関連したOIST職員に対する人事上の手続きを完了しました。

 また、ご家族が行った手続きが完了し、鈴木祥平氏の死亡が認定されました。OISTでは来月、鈴木氏を偲ぶ会を執り行う予定です。

 OISTにおいては、この悲劇的な事故を教訓とし、これまで以上に効果的な安全に対する学内の文化を精力的に構築していくために、今後どのように前進していくかを真剣に考えねばなりません。

 6月にOISTのピーター・グルース学長から職員宛てに送信された外部調査委員会報告書のサマリーおよびOISTの対応を以下に示します。外部調査委員会の報告書全文はこちらから閲覧いただけます。

 この報告書は、沖縄科学技術大学院大学潜水事故対策外部検討委員会が、自ら収集した資料の分析・調査に基づき、自らの責任において評価・検討した上作成したものであって、必ずしもOISTとしての見解を表明するものではありません。


ダイビング事故に関する外部調査委員会報告書の概要

2017年6月5日

 私は、今般、2016年11月のダイビング事故に関する外部調査委員会の報告書を受け取りました。OISTは、2016年12月、事故原因となり得た全ての要因について、独立した立場から評価させる目的で、外部専門家による調査委員会を設置しました。詳細な報告書を完成して下さいました調査委員会のご献身とご尽力に感謝の意を表します。報告書は、OISTにおける安全手順の確立及び実施における組織的な問題を何点か指摘しています。

 正確な事故原因及び行方不明のダイバーが水面に浮上できなかった理由は、いまだ判明しておりません。しかし、OISTには、ダイビングの計画及び準備のほか、組織管理において、看過できない問題が数多くありました。

 今回のような事故は、そもそも決して起きてはならないはずのものであり、OISTにおいて再び起きてはならないものです。そのため、本学は、安全性への取組みを徹底的に見直すため、直ちに全学的な行動を起こす必要があります。

 今後、研究、教育及び管理のいずれの部門を問わず、OISTにおける全活動は、安全に行われなければなりません。OISTは、全職員が尊重し、支持する世界トップレベルの安全文化を確立することなしには、世界有数の研究大学を構築中であるとは到底いえません。

 安全性の確立は、今やOISTにおける最優先事項であり、職場における職員の安全を可能な限り確保するため、OISTは、日常的な活動における職員の姿勢及び諸手続きに、大幅な変更を加えます。

 以下に外部調査委員会による調査結果と勧告の概要を示すとともに、調査委員会が指摘した問題点及び勧告に対する本学の取組みを説明いたします。

調査結果

 調査委員会の調査結果によりますと、今回の高リスクのダイビング作業前に、詳細なダイビング計画は存在せず、また、リスク評価も実施されていませんでした。

 ダイビング機材は、当該作業に適しておらず、事故に関わったスタッフは、機材を使用するためのトレーニング基準を満たしていませんでした。行方不明のダイバーは、ダイビング作業前に実施されるべきであった健康診断を受けていませんでした。ダイビング作業当日、緊急時の計画はなく、予備機材もなく、監視員もバックアップのダイバーも現場におらず、「バディシステム」などの基本的なダイビング安全規則も守られていませんでした。行方不明のダイバーは、間もなくOISTから退職する予定であったため、作業完了に対するプレッシャーもありました。

 調査委員会は、これらの問題の多くが、OISTにおける管理体制の欠陥に関連していることを指摘しました。調査委員会は、水中での野外作業に限らず、本学全体において、労働安全衛生の重要性が、かねて過小評価されてきたと結論付けました。OISTは、野外作業計画の監督や、健康診断の義務的実施など、積極的な安全管理を怠ってきました。調査委員会は、マリンサイエンスサポートセクションが、事故や「ニア・ミス」の記録さえも報告していないことを指摘しました。調査委員会は、現場作業の安全性評価を誰が行うべきかについて、スタッフ間で誤解が生じていたことを明らかにしました。

 また、調査委員会は、問題の原因として、OISTの研究担当ディーンが研究予算の監督だけでなく、労働安全衛生及びマリンサイエンスサポートセクションのスタッフを監督していた点を強調しました。すなわち、これらの責任は、他大学では通常、異なる部門に分かれています。したがって、当時のOISTにおいては、安全規則の遵守と行動規範における、部門間における多角的な検討の機会が阻まれていました。

 さらに、調査委員会は、マリンサイエンスサポートセクションが、スタッフ不足、スタッフの体調不良及びハラスメントの苦情といった問題を抱えていたにもかかわらず、OISTの管理職員がこれらの問題に適切に対応していなかったと判断しました。マリンサイエンスサポートセクションを監督するための十分に訓練されたリーダーを任命できなかったことで、作業負担が大幅に生じ、労働安全衛生上の義務が遂行されませんでした。調査委員会は、ダイビング作業に携わる全てのユニットにおいて、ダイビングの安全性について十分理解されていなかったことも明らかにしました。調査委員会は、今回の事故において、テクニカル・ダイビングにおける適切な姿勢に欠けていたと調査委員会が判断するダイバーが、監督なしにダイビング作業計画と安全確保の双方を担当していたと判断しました。

勧告

 調査委員会は、このような問題点とこれらについての改善方法を検討した上、OISTに対し、以下の勧告を行いました。

  • 研究ユニットにおいて安全文化を確立しなければならず、特に、主任研究者は、研究員の安全に責任がある。
  • 研究者は、研究活動に伴うリスクを認識した上、それに応じて訓練を受ける必要がある。
  • 「内部告発」が可能になるよう、管理職員と一般職員の間に組織的な「風通しのよさ」を確保する必要がある。
  • OISTは、プロジェクトの成功に必要な資源と、人員配置を考慮した徹底した計画を立案するため、大型プロジェクトを開始する際に、プロジェクト管理チームを立ち上げることが望ましい。

OISTの対応

 本学は、調査委員会が指摘した問題点及び勧告に対し、全面的に取り組むべく、直ちに行動を開始しています。

 本学は、多くの卓越した国際的な大学における安全衛生管理に関するベストプラクティスを学び、キャンパス内の安全衛生を最高水準に維持するため、強固な管理体制を構築していく所存です。そのような管理体制には、各ディーン及び幹部職員と共に働く、高度に熟練した経験豊富な安全衛生管理者が必要です。

 現在、ダイビング安全主任者の任命が進行中であり、このポジションが満たされるまでは、本学におけるダイビング作業は許可されておりません。また、外部専門家に適宜関与してもらうなど、野外活動計画を詳細に検討する目的で、野外活動安全委員会が新設されました。さらに、キャンパス全体の安全に関する監査も計画いたしました。

 OISTにおいて、包括的で徹底した安全文化を確立するため、研究担当ディーンは教員全員に向けて、各ユニットの職員が安全訓練と義務的な健康診断を受ける責任があるという、コンプライアンス遵守についての周知を行いました。安全衛生は、現在、毎週行われるエグゼクティブ・ミーティングの必須項目となっています。

 OISTの幹部職員は、OIST緊急時対応計画の策定を開始しました。緊急対応コーディネーターのポジション募集が現在なされており、さらに産業保健衛生・安全管理スタッフが2名募集される予定です。保健衛生及び安全に関する違反は、改善のためエグゼクティブ・ミーティングで報告されることになっております。

 OISTの組織としての「風通しのよさ」を向上させるため、OISTの方針や慣行に違反する不適切な行為や活動は報告できる体制にあることを、全ての職員に周知いたします。また、全OISTメンバーのコミュニケーション能力を向上させるためのワークショップやセミナー等の研修を実施する予定です。

 プロジェクト管理チームの立ち上げが望ましいという勧告を踏まえ、研究担当ディーンと管理部門のディーン・アシスタントは、OISTのマリンサイエンスを助ける適切な基盤を整備するためのチームを招集しました。スタッフ2名が既に沖縄マリンサイエンスサポートセクションに加わりましたが、更にセクション・マネジャーを1名とプロジェクト管理担当者1名を募集しています。

 最後に、今回の事故を忘れないよう、OISTの幹部職員により、毎年11月は、安全強化月間とします。

 今回の痛ましい事故により、成長途上の本学における重大な問題点が明らかにされ、迅速かつ効率的な対応が不可欠であることが明らかにされました。私がここで概要を説明した事項は、今後長期に及ぶOISTの安全に対する姿勢の変化の始まりにすぎないことをお伝えいたします。

広報や取材に関して:media@oist.jp

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