2021-04-14

OIST発スタートアップ「EFポリマー」がシードラウンド資金調達を完了

OISTのスタートアップ・アクセラレーター・プログラムから生まれた「EF Polymer株式会社(以下EFポリマー)」は、2021年3月末にMTG Ventures、Yosemite LLC、Beyond Next Ventures、エンジェル投資家の鈴木達哉氏(giftee代表取締役)からシードラウンドにおいて総額4000万円の資金調達を完了しました。2018年から始まったOISTスタートアップ・アクセラレーター・プログラムから生まれたスタートアップとしては初めての資金調達事例です。

EF ポリマーの創立者兼CEOのナラヤン・ガルジャール氏は「今回の資金調達は、当社の事業拡大と技術力の向上を実現するために重要な役割を担います。まずは生産能力の拡大やチームビルディング、そして販路の拡大に活用したいと考えます。EFポリマーはオーガニック農業とサーキュラーエコノミーの促進に取り組んでいますが、我々が持つ技術を今後より広く普及させることで、SDGsの目標達成にも大きく貢献できると考えています」と語ります。また、「OISTの技術開発イノベーションセンターは投資家とのマッチングや、契約締結に向けた支援などあらゆる段階でのサポートを実施頂きました。今回の資金調達において、なくてはならない存在でした」と述べています。

今回の投資に関して、株式会社MTG Ventures代表取締役社長の藤田豪氏は4者を代表し、「EFポリマーはインド出身の若くて優秀な経営チーム。干ばつが深刻なインド・ラジャスタン州農家の水不足の解消を目指して立ち上がり、100%天然由来の吸水ポリマーを開発。サーキュラーエコノミーの世界観の実現を目指す技術力と志の高いスタートアップとしてOISTとともに支援していきます。

また、MTG Venturesとしては、沖縄県での投資は琉球アスティーダに続く2社目。沖縄県におけるスタートアップ支援の活動を継続するとともに、今後もOIST発スタートアップに注目していきます。」とコメントしています。

EFポリマーについて

EFポリマーは2019年度にOISTのスタートアップ・アクセラレーター・プログラムを通じて、当時22歳のインド人起業家ナラヤン・ガルジャール氏により設立され、野菜や果物の不可食部分の残渣をアップサイクルした環境に優しい有機ポリマーの開発を行っています。同社のミッションは、生分解性廃棄物(生ゴミ)をアップサイクルし、水不足等の農業に関わるグローバルな環境問題を解決する、新興国でも利用しやすい低コストで持続可能な農業資材に変換することです。

今日、世界中で水不足や、増え続ける生ゴミ処分の問題が深刻化しています。EFポリマーは、この生ゴミに着目し、これを資源と見立てることにより、有機ポリマー製品を開発しました。このポリマーは、柑橘系の果物やバナナの皮、サトウキビのバガスなどの有機性廃棄物から開発されています。自重の80~100倍の水を保持することができ、土壌に投入すると、土壌の保水力と肥料保持力が高まり、結果、約40%の節水と約20%の肥料削減が期待できます。また、このポリマーは有機物100%のため、約6か月で土の中で完全生分解されます。

現在おむつ等に使われ一般的に流通しているポリマーは、アクリル系ポリマー等の化学合成されたものが多く、これらは生分解せず土壌を汚染することや、土壌成分と化学反応し吸水力を失うことから農業利用には適しておらず、同社の自然由来かつ安定した分子で構成されたポリマーは非常に優位となると考えられています。

現在、国内では沖縄県と兵庫県の淡路島にて農地でのパイロットテストを実施しています。また、インドではタタ・トラストとビル&ミリンダ・ゲイツ財団の支援を受けたソーシャルアルファ プロジェクトのサポートを受けながら、ウッタル・プラデーシュ州等5州の10地区200エーカー以上で500人以上の農家の協力の下、パイロットテストを実施しています。ポリマー製品は2020年10月からインド国内で販売を開始し、過去5ヶ月で1,700kgを販売しました。

EFポリマーの有機ポリマー

OISTによるスタートアップ支援に向けた取り組み

沖縄においてイノベーションを育み、経済成長を加速させることを目指すOISTでは、技術開発イノベーションセンターがインキュベーション施設の運営やスタートアップの支援を行っています。

スタートアップ・アクセラレーター・プログラムでは海外からの起業家を受け入れるケースが多く、ビジネス面でのメンタリングやアドバイス、産業や企業とのマッチングのみならず、海外起業家が日本で起業するにあたってハードルになりやすい、税務、知財手続きやビザ取得など多岐に渡ってサポートを行います。

OISTの技術開発イノベーションセンターでコーディネーターを務める吉川弘志氏は「今回の資金調達にあたっては、2019年にEFポリマーがプログラムに参加した当初から長い時間をかけて投資家や企業とのマッチングを進めてきました。プレゼンのブラッシュアップ、展示会での事業説明などへの参加支援などを行い、投資家に興味を示していただけるよう進めてきました。言語と文化の違いから、当初はなかなかEF Polymer社の魅力を伝えられず、相当な苦労がありました。ただ、EFポリマーのメンバーが、諦めずに前向きに事業内容を磨き上げながら、チャレンジし続けたことが今回の成果につながったと思っています」と語ります。

また、「日本はスタートアップの市場としてはまだ過渡期であり、残念ながら創業期の外国人起業家のスタートアップが、サポートなしですぐに単独で活躍できる土壌が整っていない状況です。言語の壁をはじめ、必要な行政手続きや資金調達の面でも、外国人起業家の方がスムーズに事業を展開できる環境の整備が必要です。こうした中、OISTでは沖縄県の行政関係者の方々とも密に連携をし、今後沖縄県があらゆる起業家にとって魅力的な環境となるよう、積極的に環境整備や支援体制の拡充を行っています。その先には、OISTを軸としたディープテック・スタートアップのクラスター形成を目指して活動を進めています」と述べています。

OISTのインキュベーション施設

MTG Venturesについて:

株式会社MTG(東証マザーズ)のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として2018年に設立、「VITAL LIFE」を実現するスタートアップへの投資を行なっている。https://www.mtg.gr.jp/company/group/mtg-ventures/

Yosemite LLCについて:

前株式会社インスパイア副社長の見満周宜氏により2019年に設立された投資会社で、主に社会的課題の解決をテーマとした事業を行う起業家への伴走を行うべく、ファンドではない形でシード・アーリー期のベンチャー企業への投資を行う。https://yosemite.co.jp/

Beyond Next Venturesについて:

主に日本やインドにおけるディープテックスタートアップ・大学発ベンチャーの創業支援、出資事業から始まり、アクセラレーションプログラムや起業家人材育成プログラムの運営、シェアラボの運営などを行う。https://beyondnextventures.com/jp/about/

エンジェル投資家 鈴木達哉氏について:
株式会社ギフティ(東証一部)代表取締役。2008年株式会社インスパイアにて大企業の新規事業支援やベンチャー支援業務に従事。2011年 株式会社waculの取締役に就任。2012年 ギフティ社の取締役に就任。2020年3月にギフティ社の代表取締役に就任。
https://giftee.co.jp/about/

 

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(中尾 享二)

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