2020-05-12

COVID-19(新型コロナウイルス感染症) 分子地図

(共同プレスリリース)

慶應義塾大学理工学部生命情報学科の舟橋啓准教授、システム・バイオロジー研究機構(SBI)及び沖縄科学技術大学院大学(OIST)の北野宏明教授、ルクセンブルク大学のMarek Ostaszewski博士、Rudi Balling教授、Reinhard Schneider教授ら世界中の研究者が力を合わせて、現在世界中の脅威となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックと戦うことを目指し、ウイルスと宿主の相互作用の分子過程の全貌をコンピュータ上に構築しています。

世界29カ国81機関、163人から構成されるこのグループは、SARS-CoV-2ウイルスと宿主の相互作用メカニズムに関する網羅的かつ標準化された知見のリポジトリ※1としてCOVID-19 Disease Mapを発表しました。

COVID-19 Disease Map(以下、COVID-19分子地図)は、SARS-CoV-2ウイルスの侵入、複製、および宿主-病原体相互作用、ならびに免疫応答、宿主細胞の回復、修復メカニズムに関わる分子過程を視覚的に探索し、計算機的に解析するためのプラットフォームとなります。本研究成果は学術雑誌Nature Scientific Data誌ウエブサイトにて5月5日(英国時間)に公開されました。

 

1.本研究のポイント

  • 現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを研究者が総力を挙げて解決するための公開知見リポジトリとして、COVID-19 分子地図を構築した。
  • COVID-19 分子地図は、SARS-CoV-2の複製サイクル、宿主との相互作用、免疫系の反応、修復メカニズムに焦点を当てた網羅的な分子間相互作用情報を集約することを目標としている。
  • Scientific Dataに掲載された記事で本プロジェクトを発表し、世界中の研究コミュニティからの貢献を求めている。

 

2.研究背景

世界中の研究者が力を合わせて、現在進行中のパンデミックの原因と戦うことを目指して、SARS-CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス)と宿主の分子間相互作用の全貌を記述しようとしています。

既存の膨大な文献情報や、急速に増加しているSARS-CoV-2ウイルスに関する学術論文から得られるこれらの知見は、人間と計算機(コンピュータ)で読める両方の形式で厳密かつ効率的に記述されている必要があります。

本研究グループは、SARS-CoV-2ウイルスと宿主の相互作用メカニズムに関する包括的で標準化された知識のリポジトリとして、COVID-19分子地図を発表しました。

 

3.研究内容・成果

本研究プロジェクトは、世界29カ国81機関から163人の臨床研究者、生命科学者、科学文献キュレーター、計算生物学者、データ科学者によるオープンなコラボレーション・プロジェクトです。

このCOVID-19分子地図の根底にある基盤技術には、舟橋啓准教授、北野宏明教授が2000年初頭より開発に取り組んできた分子間相互作用機序に関する標準化技術であるSBML (Systems Biology Markup Language)、SBGN (Systems Biology Graphical Notation)が採択されました。

さらに、COVID-19分子地図を構築するツールとしては、舟橋准教授、北野教授が開発を進めてきた分子地図の描画・編集ソフトウェアであるCellDesignerが用いられています。COVID-19分子地図には現時点でウイルスの複製サイクルと転写メカニズムなど、13種の分子地図が含まれています。

これらのリソースはすべてhttps://fairdomhub.org/projects/190#modelsから参照できます。

4.今後の展開

今回提案したCOVID-19分子地図は、新型コロナウイルス感染症の多細胞・多臓器感染の性質と、その根底にある分子機構の複雑さを考慮し、個々の分子地図上の要素が相互に接続された階層構造として設計されています。

このような柔軟な構造、そしてオープンコミュニケーションによるプロジェクトであることから、疾患に関する新しい知見が明らかになるにつれてCOVID-19分子地図がさらに進化し、新型コロナウイルス感染症解明に貢献することが期待されます。

 

※この研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO(北野共生システムプロジェクト、河岡感染宿主応答ネットワークプロジェクト)、NEDO国際共同研究助成事業(遺伝子・タンパク質ネットワーク・グラフィカル表現の国際標準化)、文部科学省ゲノムネットワークプロジェクト(動的ネットワーク解析技術開発)、厚生労働省科学研究費補助金(化学物質リスク研究事業)、新学術領域(統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用)、科研費若手研究B(課題番号21700328)、沖縄県医療産業競争力強化事業(次世代型多階層創薬・薬理学シミュレーションプラットフォーム開発による創薬プロセスの効率化)の支援を受けて行われました。

 

<用語説明>

※1リポジトリ:データの貯蔵庫