2022-02-09

OISTを拠点にするバイオベンチャーが沖縄進出1年目で大きな成果

沖縄科学技術大学院大学(OIST)が支援しているスタートアップ企業、GenomeMiner社が、沖縄進出1年目にして、研究開発と資金確保の両面で順調に成果を出しています。

東京で設立されたGenomeMiner社は、昨年沖縄に移転し、OISTのスタートアップ支援プログラム「イノベーションスクエア・スタートアップアクセラレータープログラム」に参加しました。本プログラムは、主に沖縄県から資金提供を受け、県内で技術系企業の立ち上げを希望する科学者を支援することを目的としています。GenomeMiner社の目標は、微生物の遺伝子の中から、新薬等に活用可能な有用物質を生み出す原因遺伝子を特定するソフトウェアプラットフォームを開発することです。このプラットフォームで特定された遺伝子を利用して、微生物の遺伝子操作を行うことで、有用物質の生産量を増やしたり、新たな化合物を生成したりできる可能性があります。同社は、移転する前から、亜熱帯に位置する沖縄県で微生物試料を入手していたため、すでに沖縄と深いつながりを持っていました。

同社が沖縄に移転して最初に達成した大きな成果は、独自の遺伝子操作技術を開発したことです。共同創業者兼CEOであるイーライ・ライオンズさんは、「先日、新しいゲノム挿入技術の仮特許を申請したところです」と報告しています。既に確立された有名なシステムであるCRISPR-Cas9はDNA塩基対を削除するのに適していますが、反対に、標的とするDNAの挿入を可能にするシステムも強く望まれています。「今回、仮特許を申請したのは、私たちが開発したシステムが非常に良く機能しているからです。もちろん、実用化にはまだ課題が残っていますが、この研究は、治療医学や遺伝子工学へ応用できる可能性を秘めています。」

GenomeMiner社の共同創設者兼CEOであるイーライ・ライオンズさん。

この新技術に加えて、同社は微生物の新規化合物の特定も進めています。ライオンズさんは、特定作業においてOISTが提供するシーケンシング施設が、非常に役立っていると述べています。現在、抗生物質耐性をもつ黄色ブドウ球菌感染症に対する第一候補化合物を発見するため、OISTで25の微生物株の遺伝子解析を行っています。
 
ライオンズさんは、次のように説明しています。「黄色ブドウ球菌感染症は、皮膚に発生する感染症ですが、治療しないでいると重篤化し、死に至ることもあります。その原因菌である黄色ブドウ球菌には、抗生物質に耐性のある株もあります。そのため、病院でこの感染症の治療を受けるのが困難な場合があります。よって、簡単に言えば、細菌が耐性を持たない新しい抗生物質が必要とされています。私たちが入手した微生物株は、新規の抗生物質を生産する可能性を示しています。今後も我が社のバイオインフォマティクス・プラットフォームを使って配列を解析し、遺伝子や化合物を特定していく予定です。」
 
その他にも、ライオンズさんはインドネシアより追加のエンジェル投資を受ける契約を締結したところで、今年はより大きな投資ラウンドに向けてさらなる資金調達を行う予定です。これにより、GenomeMiner社は研究開発活動を拡大し、いくつかの生物農薬候補の商品化に着手することができます。さらに、同投資家から、強力なネットワークやインドネシア市場に関する知識を得ることも可能となります。ライオンズさんは、経済が発展しつつあるインドネシアは、GenomeMiner社の製品のいくつかを発売するのに適した市場となると期待を示しています。
 
ライオンズさんは、次のように締めくくっています。「GenomeMiner社は、大きな進歩を遂げました。沖縄、ひいてはアジア太平洋地域の両方に貢献するために、今後も拡大し続けていきたいと思います。」
 
(ディッキー・ルシー)

広報や取材に関して:media@oist.jp