2022-02-15

OIST起業家プロフィール:転倒を予測して防止/次世代のAIチャットボット

I2 accelerator program

イノベーションスクエア・スタートアップ・アクセラレータ―は、2022年度の採用チームを、2月20日まで募集中です。OISTを経て、世界を目指すスタートアップ企業を作りませんか。詳細はこちらをご覧ください: https://i2.oist.jp/ja/isquare-accelerator.

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、日本をはじめ世界中に市場を求める起業家の支援などを通じて、沖縄におけるイノベーションハブとして地域の発展に貢献しています。その取り組みの一部となるのが沖縄県が支援する「イノベーションスクエア・スタートアップ・アクセラレータ―」プログラムです。2020年度は、カナダのSage Sentinel(セージ・センティネル)、そしてロシアのKanjuBot(干珠ボット)の2チームがこのプログラムに採択されました。両チームは、日本を、自分たちの技術にとって最適な市場として捉えており、事業展開を加速させるためにこのプログラムに参加しています。

高齢者市場に焦点を当てたSage Sentinel(セージ・センティネル)

世界保健機関(WHO)は、「転倒」が、世界で2番目に多い致命的な怪我の原因であると発表しています。転倒事故のリスクは高齢者の場合非常に高くなります。たとえその転倒が致命的ではない場合でも、その影響は腰部骨折や頭部外傷といった、生活の質の低下を招く深刻な後遺症につながることも少なくありません。

転倒を「検知」して救助を求める技術は既に市場にも存在しますが、これらは身体機能の低下につながるような転倒事故を未然に防ぐものではありません。また、これらの幾つかには電波センサーが使用されており、長期的な使用によって健康への影響も懸念されます。

セージ・センティネルは、独自に開発した、転倒を「予測」して防止につなげるシステムを活用することでこの問題を解決するため設立されました。

“Sentinel(センティネル)”と呼ばれる小型のロボットデバイスは、赤外線センサーとAIソフトウェアによって高齢者の体の動きをリアルタイムで継続的に監視・分析することで、転倒が起きる3~5秒前にその可能性を予測します。このシステムは、視覚的、聴覚的、触覚的な警告を発信できるため、転倒の早期警告システムとして機能します。このほんの数秒間は、高齢者の寝たきりにつながるような転倒の防止において非常に重要かつ画期的です。

セージ・センティネルを創設した、キャシャヤー・ミサギャンさん、ジョスリン・フォベールさん、エドュワルド・ルーゴさんの三人は、自らの高齢の家族の転倒事故をきっかけに、社会において転倒事故によって生活の質が著しく変化した高齢者が多く存在するということに気づきました。

セージ・センティネルを創設した、キャシャヤー・ミサギャンさん、ジョスリン・フォベールさん、エドュワルド・ルーゴさん

チームは、モントリオール大学(カナダ)の精神物理・視覚認知の研究室において老化に関する研究を行っていた時に、このスタートアップのアイデアを着想しました。

OISTのアクセラレーター・プログラムへ参加したことで、事業開発に関するハンズオンサポートを受けたり、OISTがもつ専門家や企業、投資家の幅広いグローバルネットワークへアクセスすることなどを通じてセージ・センティネルは前進しました。彼らにとって新型コロナウイルスのパンデミックにより困難を極めた1年でしたが、OISTのサポートは非常に意義のあるものだったと言います。そして様々な検証を経た現在、実用最小限の製品(MVP)の開発にたどり着きました。

セージ・センティネルにとって日本は理想的な市場です。「日本は、今後世界が直面する高齢化社会の様々な問題を解決する玄関口です。なぜなら、日本は高齢者人口の割合が世界で最も高く、また介護施設は非常に革新的かつ進歩しているからです。日本国内の約9万もの高齢者関連施設が新しいテクノロジーを求めています。私たちは、社会課題の解決に際して非常に重要な市場に参入し、世界中の高齢者の生活の質を向上させる準備ができました。」とミサギャンさんは語ります。

チャットボット市場に着目するKanjuBot(干珠ボット)

他方、コンピュータと人間の相互作用における変革を目的として設立されたAIベンチャー、KanjuBotも日本市場での展開を目指しています。ロシア科学アカデミーで出会ったオレグ・ニキチンさん、オリビア・ルキャノヴァさん、アレックス・クニンさんの3人は、音声、テキスト、画像など複数の情報伝達手段に対応し、より自然な言語理解を実現する次世代型チャットボット用エンジンの構築に取り組んでいます。

KanjuBotを設立したオレグ・ニキチンさん、オリビア・ルキャノヴァさん、アレックス・クニンさん

この技術は、現在のチャットボットエンジンに使用されている統計的関連性より更に高度な新世代のAIモデルを使用しています。KanjuBotの技術のコアとなるのは、スパイキング・ニュートラルネットワークに基づく自己学習型ニューラルアーキテクチャ(神経網の構築)です。この技術により、ユーザーとの全体の会話の流れに加え、相手の感情も理解し状況に適した会話が可能となるため、チャットボットユーザーの利用体験の飛躍的な向上につながります。

KanjuBotのエンジンの応用は、特定の業界やアプリケーションに限定されるものではありません。現在は、通信業界および金融業界でのパイロットプログラムに向けて準備を進めています。

OISTとの連携を通じて、KanjuBotはこの分野の最先端の研究者とのつながりを構築しました。「OISTは計算神経科学分野をけん引する重要な学術機関のひとつであり、我々の製品はこの分野から発展しています。知識、サポート、事業資金などアクセラレーター・プログラムが提供するまたとない経験やアプローチを通じてOISTと連携できたことを嬉しく思います。アーリーステージのディープテック・ベンチャーにとって、このような素晴らしい場所で、その一員になれたことは非常に光栄です。」とニキチンさんは語ります。

現在、それぞれのチームは製品化に向けてパートナーを募集しています。ご興味のある方は、セージ・センティネル(https://sagesentinel.com/)、KanjuBot(https://kanju.tech/) またはOISTイノベーション・スクエア innovation@oist.jp までぜひご連絡ください。

広報や取材に関して:media@oist.jp