第2研究棟が始動

6月末に供用開始した第2研究棟には、早くも研究機器の移設が進み、複数の研究ユニットが着々と研究室や作業スペース、オフィスに移り、新しい建物に命が吹き込まれました。

 先月末に供用を開始した第2研究棟には、早くも研究機器の移設が進み、複数の研究ユニットが着々と研究室や作業スペース、オフィスに移り、新しい建物に命が吹き込まれました。

比較的最近発足した研究ユニットの中にはこれまで専用スペースがなかったユニットもありますが、それぞれのユニットの要望に合わせた研究スペースが第2研究棟に確保されたことで、研究活動が本格化します。例えば、ナノ粒子技術研究ユニットの研究は、第1研究棟に研究室を構えていたときには、ナノ粒子特性の解明に限定されていましたが、第2研究棟に新設されたナノ粒子局所堆積装置によって、粒子を独自に設計・構築することが可能になります。同ユニットのグループリーダー、カハル・キャッセディ博士は、「超高真空の堆積装置を設置する施設の条件は多岐に渡りかなり細かいものでした。」と説明します。「施設運用セクションの多大なサポートにより、機器の据え付けを開始してから24時間以内に、ナノ粒子の局所堆積が実施可能になりました。機器の据え付けには、外部の企業も複数関わっていましたが、皆さん一様に、OISTの施設運用に関するサポート体制が充実していることについて、羨望を込めた感想を口にしていました。」とキャッセディ博士は言います。ナノ粒子技術研究ユニットは、近々OISTの他の研究ユニットと連携し、ナノ粒子を活用した太陽電池の効率を高める研究や、イメージング技術を活用し、ナノ粒子をそのままの状態または細胞内にある状態で分析して、特性の理解を深める研究を進める予定です。

 太陽電池の研究でナノ粒子技術研究ユニットと連携して研究を行うエネルギー材料と表面科学ユニットも、この度第2研究棟に移転しました同ユニットでは、第2研究棟のクリーンルームにおいて光起電装置及び有機電子装置の組み立てを行っていて、これらの装置の性能は、小さな埃ひとつで台無しになることもあります。クリーンルームは清浄度の異なる2つの部屋に分かれていて、1つは空気中の塵埃粒子が1立方メートル当たり1000個未満に設定されており、もう一方の部屋は1立方メートル当たり100個未満に設定されています(通常の室内には1立方メートル当たり何百万と言う数の塵埃粒子が存在します)。同ユニットを率いるヤビン・チー准教授は、「第2研究棟のクリーンルームが完成するまでは、保有している有機電子装置が塵埃粒子が原因の問題に直面しました」と話した上で、「ところが、クリーンルームで試運転を行ったところ、以前より良い結果を得ることが出来ました」と語りました。また、第2研究棟への移転により、ユニットが保有している原子間力顕微鏡の性能も改善されたと言います。同顕微鏡は振動に非常に敏感な機器で、これまで顕微鏡が設置されていた第1研究棟3階の研究室では、近くには空気の再循環ファンがあったため、性能が充分に発揮されませんでした。しかし、研究室が第2研究棟1階の以前より静かな環境に移ってからは、顕微鏡に対するノイズの影響が軽減されたとチー准教授は説明します。

 さらに、クリーンルームから少し先には、量子ダイナミクスユニットの研究室があり、吹き抜けになった空間に新しい無冷媒希釈冷凍機が設置されています。デニス・コンスタンチノフ准教授とユニットのメンバーは、同機器のミリ波放射及び高磁場を使用し、絶対零度をわずか1度弱上回る環境下で、液体ヘリウム表面上の電子の動きを観察しています。このような環境下では、電子が全く新しい量子現象を起こします。第2研究棟への移転により、新しい機器の設置が可能になっただけではなく、ユニットの研究者がのびのびと研究を行うことができるようになったと語るコンスタンチノフ准教授は、「これまでは工作室の一部を使っていましたが、これでようやく自分達の研究スペースができました」と、嬉しそうに話してくれました。

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