タンパク質をゲーム化 ~OISTのKinect-Xbox~

OIST細胞膜通過輸送研究ユニットのファデル・サマテ准教授は、マサチューセッツ州立大学アムハースト校(UMASS)の研究者らと協力して、分子プレイグランドをOISTに設置しました。

  「プロテイン」という言葉を聞いた時、ダイエット用のサプリメントを思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、プロテイン(protein)とは、本来、私たちの体のあらゆる細胞、筋肉、組織、臓器に存在するタンパク質のことで、肉眼で見ることはできません。このタンパク質の「眼に見えない」という問題が、OISTトンネルギャラリーに分子プレイグランドが設置されたことによって解決されました。

  OIST細胞膜通過輸送研究ユニットのファデル・サマテ准教授は、マサチューセッツ州立大学アムハースト校(UMASS)の研究者らと協力して、分子プレイグランドをOISTに設置しました。このプレイグラウンドは、ゲームソフトの機能をうまく活用した操作可能な大型ディスプレイとも言えるもので、大画面に映し出されたタンパク質の画像をKinect-Xboxを介して動かすことができます。OISTでは、オフィスや研究室に向かう職員や訪問者の皆様に見て頂こうと、あえてエレベーターの隣のスペースに、このプレイグラウンドを取りつけました。

  “Kinect”は、Xbox 360ビデオゲーム用としてマイクロソフトが開発した動作感知デバイスで、そのユニークなところは、簡単な体の動きの検知し、それにより人とやり取りを行えることです。プレイグランドの前を歩くと、画面とKinectの間のスペースが分子プレイグランドに変換されます。それによって画面上のタンパク質の画像に命が吹き込まれ、人が動く方向に動き始めます。

  プレイグランドではタンパク質の画像が人間の動きを真似て動きます。人間が太極拳のようなゆっくりとした動きをすると、それに合わせてタンパク質の画像が操作されます。タンパク質の画像を360度回しながら様々な角度から見ることができ、楽しみながらタンパク質を勉強することができます。人間が左から右に動くと、タンパク質の分子も左から右に動き、人間が前後に傾くと、タンパク質の分子も同様に前後に傾きます。

  OIST分子プレイグランドでは、タンパク質を含む約30種類の分子を表示できるようになっており、サイズ、形状、色がそれぞれ異なる様々な分子を操作しながら見ることができます。OISTの研究ユニットが提供した分子の他に、抗インフルエンザ薬のタミフル、アーモンドやサクランボ、イチゴ等の香りを作るアセトフェノン、そして、遺伝情報を司るDNA等も映し出されます。

  この対話型ソフトウェアは、UMASSで開発され、現在はUMASSアムハースト校総合科学棟、スプリングフィールド科学博物館、セントオラフ短大、そしてOISTトンネルギャラリーにのみに展示され、使用されています。サマテ准教授は、「科学者は本来限定された空間でしかこれらのタンパク質を見ることができませんが、この分子プレイグラントのようにタンパク質と遊び、やり取りできることは、極めて注目に値すると思います。みなさんに体験して欲しいことは、実際に遊ぶことだけです。」と述べています。

  分子プレイグランドはUMASS大学のクレーグ・マーチン教授と彼に師事した大学院生のアダム・ウィリアム氏によって設計されました。この度、分子プレイグランドをOISTトンネルギャラリーに展示することができたのは、同じくUMASSのエリック・マーツ教授とサマテ博士との長きにわたる協力関係があるからです。プロジェクトの詳細については、www.molecularplayground.orgをご覧下さい。

  分子プレイグランドの前では通り過ぎず、是非立ち止まって、操作して、驚いてください!

(ジュリエット・ムセウ)

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