2017-09-20

海の力で持続可能な未来を

  沖縄科学技術大学大学院大学(OIST)の新竹積教授は、安価でクリーンなエネルギーによる持続可能な未来を目指しています。 もともと高エネルギー加速器科学を専門分野とする新竹教授は、2012年、新しいエネルギー源を探索しようと決意しました。その際、風力や太陽光発電は既によく研究されていたので、同教授は海のエネルギーに着目しました。

  同年、新竹教授率いる量子波光学顕微鏡ユニット は、台湾の東海岸から日本の南側を流れる黒潮からのエネルギーを活用することを目指し、「Sea Horse(タツノオトシゴ)」というプロジェクトを始動させました。 このプロジェクトでは、海底のアンカーにケーブルで係留された水中タービンを使用し、黒潮の持続的な自然の流れからくる運動エネルギーを使用可能な電力に変換し、ケーブルで陸上に供給します。プロジェクトは第一段階を成功裡に終え、ユニットは現在、産業界のパートナーを探しながら、次の段階に進もうとしています。 同時にOIST研究者らは、さらに安価で設置が容易な海洋エネルギー源を探索しました。

  そこで登場したのが、海岸に打ち寄せる波の力です。 「海岸を巡ると特に日本では、数多くのテトラポッドがありますよね」と新竹教授は語ります。 テトラポッドなどの消波ブロックとは、打ち寄せる波の力を弱め、海岸を侵食から守るため、しばしば海岸線に沿って設置されているピラミッド状のコンクリート構造物です。 また同様に、消波ブロックと同じ目的で海岸の手前に建てられたのが防波壁です。 「驚くべきことに、日本本土の海岸線の30%は、テトラポッドと防波壁で覆われています。」 新竹教授によれば、これらを特殊な消波ブロックと防波壁に置き換えれば、海岸を保護すると同時に、消波ブロックに設置した発電タービンで、エネルギーを産出することもできるのです。

  「本土の海岸線のわずか1%を利用するだけで、約10ギガワットの発電が可能で、これは原発10基分に相当します」と新竹教授は説明します。

  この方式に取り組むため、2013年にOIST研究者は、The Wave Energy Converter(WEC=波力発電機)プロジェクトを始動させました。消波ブロックやサンゴ礁など、海岸線近くの波の起きる場所に、発電タービンを設置します。 これらの場所では、発電タービンが理想的な波にさらされ、クリーンで再生可能なエネルギーを産出するのみならず、限られた資金やインフラしかなくても、侵食から海岸を保護することにも一役買うことができます。

発電機を設置する主な場所の1つは、海岸線に置かれたテトラポッドの海側前面。 発電タービンは、打ち寄せる波からのエネルギーを使用可能な電力に変換し、同時に波の威力を弱め海岸線を保護する。 既存の防波堤の整備道路から容易に発電タービンを保守することも可能で、さらに天候の穏やかな日には、海岸からの目視点検も可能である。

サンゴ礁は、強い波が発生するもうひとつの設置場所。 深い海から浅い岩礁に向かって流れてくる水は、速いジェット水流を作る。 並んだ小型の波力発電機は、砕け散る波から生じる渦の流れを利用して発電する。 細い棒状の柱の上に取り付けられた白いボディと黒い羽根のデザインは、視覚的にも美しく、鳥や花が集まっているようにも見える。

  発電タービン自体は、激しい波の威力のみならず台風のような極端な気象に耐え得るように設計されています。羽根のデザインと素材は、イルカのヒレからヒントを得ました。柔軟性があり、波の力を逃がすことができ、破損してしまうということはありません。 支柱の構造も「花のような」柔軟性があると、新竹教授は説明します。 花の茎が風に沿って後方に曲がるように、タービンも、アンカー軸に沿って曲がることができ、周囲の海洋生物にとって安全なように作られています。羽根は注意深く計算されたスピードで回転し、羽根の間に生物が巻き込まれても、逃げることができるように設計されています。

5枚のタービンの羽根は柔らかい素材でできており、波を受けて軸を中心に回転する。タービン直径は約0.7メートル。軸は永久磁石発電機に取り付けられており、波力エネルギーを使用可能な電力に変換するタービンの一部となっている。 セラミックスでできたメカニカルシールは、内部の電気部品を塩害から保護する。 タービン交換まで10年間機能する耐久性を持つべく設計を行なっている。

  現在、新竹教授と研究チームの研究者たちは、プロジェクトの第1段階を完了し、初の商業実験用として、実寸の半分のサイズの羽根を搭載した直径0.35mのタービンを設置する準備をしています。このプロジェクトでは、2つの波力発電機を設置し、LEDを点灯させる実証実験を行う予定です。

  新竹教授は希望をもって語ります。 「私は200年後の地球を想像しています。私たちが開発した波力発電機が、設置されているそれぞれの浜辺で、静かに、そしてしっかりと働いてくれることを願っています。」

(左から)曽我憲一郎、武部英樹技術員、藤田潤技術員、白澤克年博士、新竹積教授。武部技術員が手にもっているのが波力発電機のプロトタイプで、新竹教授の後ろにあるのが海流発電機のプロトタイプ。

(マックガバン・アン)

広報や取材に関して:media@oist.jp

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