廃棄物を電気に変えるバクテリアを利用する

 沖縄の海の汚泥や下水汚物に戦略的に金属板を混ぜると何が作られると思いますか?生物システムユニットのラリッサ・キセレバ博士によれば、電気とクリーンな水を作ることができるそうです。


ラリッサ・キセレバ博士と微生物燃料電池


生物システムユニットの微生物燃料電池内に存在するバクテリアの画像

 沖縄の海の汚泥や下水汚物に戦略的に金属板を混ぜると何が作られると思いますか?生物システムユニットのラリッサ・キセレバ博士によれば、電気とクリーンな水を作ることができるそうです。

 生物システムユニットでは、微生物燃料電池の研究を行っています。微生物燃料電池はバクテリアが廃棄物を分解して発電するプロセスです。キセレバ博士によれば、「通常の燃料電池には高価な燃料とさらに高価な触媒が必要」とのことです。触媒は化学反応を引き起こす物質で、燃料電池の場合には、化学反応により電流が発生します。一方、微生物燃料電池の場合、触媒作用はバクテリアが受け持ち、そのバクテリアが必要とする燃料は通常の燃料ではなく、廃棄物です。

 1990年代の後半以降、微生物燃料電池の研究がさかんに行われるようになり、微生物燃料電池の発電量も大幅に向上してきていますが、それでも1つの電池が発電できる電力は0.3~0.5 Vといまだ小さく、これでは1個の電球さえ点灯させることができません。生物システムユニットでは、微生物燃料電池の発電能力を高める研究を進める以外にも、廃棄物の種類や、微生物と廃棄物の最適な組み合わせについても研究しています。

 研究の対象として最初に選んだ廃棄物は、沖縄県うるま市の海岸からとった汚泥でした。海の汚泥には燃料電池に必要な様々な種類の嫌気性バクテリアが含まれています。キセレバ博士はこの汚泥のサンプルを燃料電池に入れたままの状態で1~2ヵ月間観察し、何が生き残り、何が死滅したかを調ベた上で、その発電量を計測しました。今後のステップとしては、生存したバクテリアの種類を特定・分類して、バクテリアの種類別の発電能力を明らかにするとともに、アンモニアや硝酸カリ、重金属などのやっかいな廃棄物を含む様々な種類の燃料との組み合わせをテストする予定です。キセレバ博士はまた、これらの沖縄の海のバクテリアが何を消化できるかを調べたいと語っています。これにより、より効率的な廃棄物の中和方法と、より高い発電効率が得られることでしょう。

 先月には、沖縄の各産業分野から30の企業を集めて、生物システムユニットの代表をつとめるイゴール・ゴリアニン教授によるプレゼンテーションが行われました

ショーナ・ウィリアムズ

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