ロボットとメンタルヘルス セロトニン系が結びつける異なる二つの領域

最新のポッドキャストエピソードでは、人工知能の研究と、研究で得られた知見が神経科学にどのように応用できるかをご紹介します。

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OISTポッドキャストの最新エピソードでは、「ワンワールド・ワンヘルス」のコンセプトに基づき、「健康な心」、「健康な体」、「健康な環境」の促進に取り組むOISTのグローバル・バイオコンバージェンスイノベーション拠点の研究者を取り上げ、OISTポッドキャスター・イン・レジデンスのDJニックことニック・ラスカムさんが、神経計算ユニットを率いる銅谷賢治教授に話を聞きました。銅谷教授と研究チームは、人工知能と生物学的モデルを組み合わせることで、「健康な心」がどのように機能するかについて研究しています。

「『ロボット』と『人間の心』の間には大きな隔たりがあるように感じるかもしれませんが、ロボットに何かを学ばせようとすることで、私たちも多くのことを学べるのです」と銅谷教授は言います。銅谷教授は学部時代、ランダムな探索と報酬フィードバックを通して歩行を学習するロボットを開発しました。今では強化学習の原理として知られています。OISTでは、生物学的生命を模倣し、充電用のバッテリーパックを見つけて生き延びようとしたり、赤外線を介して「人工遺伝子」を交換して繁殖するロボットを開発しました。その目的は、ロボットが強化学習のための報酬関数を自ら見つけることができるかどうかを確認することであり、実際にロボットは見つけることができました。 

行動を起こす動機付けは、行動から報酬が得られるまでの時間に大きく依存します。もし行動した後に報酬がタイムリーに与えられなければ、被験者は諦めてしまうかもしれません。これは「時間割引」と呼ばれる概念です。この重要性が明らかになったのは、ロボットの設定が近い将来にのみに焦点を当てていた場合でした。あるロボットは、バッテリーパックにたどり着く必要があったのに、バッテリーパックが見えていても動こうとしません。研究チームがバッテリーを近くに移動させたときにだけ、このロボットはバッテリーのところに向かおうとしました。 

「ロボットが落ち込んでいるように見えたので、適切な時間割引が健全な行動にとって重要であることがわかりました」と銅谷教授は言います。この驚くべき発見は、「健全な心」の特徴でもある、目標を達成する意欲を維持するために必要なものは何かという新たな研究の出発点となりました。うつ病の治療に使われる一般的な薬は、セロトニン系に作用します。ロボットを使った研究に基づいて、研究チームは、神経伝達物質セロトニンが脳内の時間割引を制御している可能性があるという仮説を立てました。 

「セロトニンはおそらく、目先の結果に集中すべきか、それとも遠い未来のことを考えるべきかの判断を助けるのでしょう。緊急の状況であれば、今に集中すべきですが、時間と資源に余裕があれば、未来に焦点を移すことができます」と銅谷教授は説明します。ラットとマウスで行った一連の実験によって、セロトニンがこの集中のバランスを取るのに重要な役割を果たしているという仮説が裏付けられました。「動物が遅れてくる報酬を待っているとき、セロトニンの放出が多くなり、セロトニンニューロンは報酬が届くか、待つのをやめるまで発火し続けることがわかりました」と銅谷教授は言います。 

最近、マウスの光遺伝学的実験(青色光をセロトニンニューロンに照射することで、セロトニンニューロンを直接制御できる)によって、仮説が裏付けられました。脳内のセロトニンニューロンを活性化すると、マウスは報酬をより辛抱強く待つようになりました。通常、マウスは10秒くらいで待つのをやめてしまうのですが、刺激を与えると、エサを15秒以上待つようになったのです。かなり強い効果です!」と銅谷教授は強調します。 

執筆:ラヘル・コリヤーホア 

研究ユニット

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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