2016-05-31

「お皿の上の科学」が開催されました

 食べ物は想像以上に奥が深いものです。夕食で口にする食材に含まれる栄養素について考えてみたことはありますか。健康長寿につながる食材にはどのようなものがあるでしょうか。このような疑問に対して、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らが興味深い答えを導き出しました。去る5月28日、「お皿の上の科学」と題されたイベントがOISTで開催され、同学の教授3名と研究員らが沖縄県立球陽高校(SCORE!の優勝校)の生徒さんたちを交えて食に関する科学的知見を発表しました。シンポジウムに加え、会場にはあおぞら市場と題して沖縄の食材や陶芸品が並べられ、地元販売店による特産品の展示・販売も行われました。

 シンポジウム冒頭では、OISTのジョナサン・ドーファン学長と、沖縄・北方担当大臣兼科学技術政策担当大臣の島尻安伊子氏から開会の挨拶がありました。「OISTでは世界最高水準の研究が行われています」と島尻大臣はOISTを紹介した上で、「OISTで行われているようなサイエンスの知見によって食の魅力が再発見・再認識されると期待しています」と激励しました。

 開会の言葉に続いてOISTのG0細胞ユニットを率いる柳田充弘教授が登壇し、最近論文が公表された加齢に特異的に関与するヒトの代謝物の研究について語りました。柳田教授はヒトの血液サンプルを分析し、抗酸化作用と筋力強化に係わる代謝物の量が高齢者の体内で減少していることを突き止めました。また、高齢者の体内では腎臓および肝臓機能の低下に関与している化合物の量が増加することも明らかになりました。

 「血液採取と代謝物の分析から老化のプロセスを測定することができます」と柳田教授は言います。「適度な運動を続け、抗酸化物を豊富に含んだヘルシーで美味しい食事を取ることが健康の鍵です」。

 続いて2015年のSCORE!で優勝した地元球陽高校の女子学生のグループが、沖縄で食される海藻の一種である海ぶどうの研究についての発表を行いました。研究チームは海ぶどうの効率的な養殖方法を調べ、水泡を増やし肥料として塩分などを加えると、美味しさを損なうことなく粒の大きな海ぶどうを育てることができる養殖法を紹介しました。

 高校生の発表に続いて、OISTマリンゲノミックスユニットの佐藤矩行教授と有本飛鳥研究員、西辻光希研究員が「海ぶどう」と「もずく」のゲノムについて説明し、これらの海産植物が健康的である秘密について語りました。

 西辻研究員は「もずくには抗酸化物質や、がんを予防する栄養成分が多く含まれています。多糖複合体であるフコイダンが豊富に含まれており、抗がん作用があることが分かっています」と述べ、もずくの栄養素とその効果を遺伝子研究の観点から説明しました。

 講演を締めくくったのはOIST植物エピジェネティクスユニットの佐瀬英俊准教授です。佐瀬准教授はブドウ糖に分解されにくいでんぷん質を含む新種米の開発について語りました。ブドウ糖を産出しにくい難消化米は、肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防につながると期待されています。

 「沖縄では肥満が深刻な問題となっています」と佐瀬准教授は指摘します。「沖縄に貢献できる新種米の開発を目指しています」。

 シンポジウムの前後には、あおぞら市場に多くの参加者がつめかけ、地元産ハチミツやもろみ酢、パッションフルーツ、海ぶどう、もずく入りサラダドレッシングなど様々な特産品を試食・購入していました。

 地元おんなの駅から参加した販売店の方は、「OISTから出店に声をかけてもらえてとても嬉しいです。沖縄にこのような素晴らしい場所があるなんて信じられません。お客さんも皆さんとてもよい方ばかりでした」と感想を語ってくれました。

 会場内には人目をひく沖縄の焼き物「やちむん」の展示もあり、読谷村北窯の陶工によって作られた器が並べられていました。北窯では伝統技法にこだわった本物の美しい焼き物を作っています。丹精込めて作られた湯飲みや皿、お椀など、美しい陶器でいただく料理は「食べる」という行為に特別な意味を与えることが展示を通じて伝えられました。

 「器に載せられた食材たちを北窯の器がすべて受け止め、それがさらに生活を本当に豊かにするのです」と、北窯の4名の親方のひとりである松田共司氏は語ります。「美しいものをみんなに毎日使ってほしい。そう願っています」。

 本イベントは、料理と器の裏側に隠された「科学」に迫るOISTならではの催しとなりました。

(ホフランド レベッカ)

広報や取材に関して:media@oist.jp

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